笑顔の強さを再確認、石川県七尾特別支援学校輪島分校
災害当日から訪問まで
1月1日から、定期的に七尾特別支援学校のホームページと、石川県災害対策本部員会議の会議資料(毎回かなり網羅されています)をチェックして、いまどんな状況なのかを追ってきたつもりでいました。
おかげで、それまで全くわからなかった石川県の市町村の名前や位置がなんとなくわかるようになりましたが、やはり実際に足を運んでみて、その距離感や被害の大きさやいびつさを実感しました。
たとえば、輪島市の令和5年4月1日現在の人口は23,575人です。1月1日の被災から4ヶ月以上が経っても、この表にあるようにまだ1000人以上の方が避難所にいらっしゃり、また二次避難されている方も相当数いらっしゃることからも、復興の遅れを知ることができます。住み慣れたわが家に戻りたいけども戻れないご家族もたくさんあり、子供たちが安心して学校に通える環境はどこなのか、それぞれが手探りです。
明日に向かって今日を生きる子供たち
大人がごちゃごちゃ言っている間にも、子供たちは成長していきます。この4月、輪島分校には小学部2名、中学部2名、高等部2名の計6名の児童生徒が入学されたそうです。小学部新1年生2人には、ちょうど下校時間で会うことができました。「せんせい~」と笑いながら担任の先生にくっつくその姿に、輪島で暮らしていきたいというご家族の思いの強さや、「いま」を生きる子供たちの強さを感じました。
とはいえ、輪島分校までの道のりは文字通り平たんではありません。スクールバスも再開していますが、輪島市内からのトンネルが崩落し、復旧がまだまだ見込めないため、以前よりも3倍くらいの時間をかけて迂回しています。途中の道が渋滞していたり、途中の道に面した建物が崩れたままだったり、道じたいが車に乗っているとボヨンボヨンと跳ねるくらいボコボコだったり、まだまだ以前のように「スクールバスに乗って学校で過ごして帰ってくる」というところまではたどりついていません。
輪島分校 入学式までの試行錯誤
しかし先生方はいつでも子供たちのために最善を探ってくださっているのだなと、その気持ちの温かさや笑顔の強さを輪島分校の教員室でも見ることができました。このNHKニュースに出てくる土佐智美教頭先生が、スライドを使ってこれまでを説明してくださいました。
このスライドのほかにも、めちゃくちゃになった校内を整える際に困ったこと、トイレのこと、先生方の通勤の問題、放課後等デイサービスの問題など、具体的にお話を伺うことができました。
4月23日に小松特別支援学校に伺ったときにお会いできた、七尾特別支援学校の校長先生からは、今回本当に放課後等デイサービスががんばってくれたおかげで、安心して休校にもできたし、再開もできたというお話をされていました。珠洲市はたしかに大きな被害がありましたが、放課後等デイサービスは比較的はやく「あけます」と連絡をくださったそうです。
そうした福祉や行政、そして地域とのつながりが、子供たちとそのご家族を支えてくださるようにと祈っています。
4ヶ月経ったとは思えない、車窓の景色
輪島にたどりつくまで、さまざまな景色に出会いました。昨年夏に全国大会で伺った、いしかわ特別支援学校の学区内でも、金沢市のすぐ隣の内灘町に入ると、所々電信柱が沈んだりななめになっていたり、住宅に「危険」の赤い紙が貼ってあったり、なんてことはない住宅が続くなかに工事用のトイレがところどころ並んでいたりします。
輪島までの道すがら思い出していたこと
個人的な話で恐縮ですが、実はわたしは約17年前に輪島を訪れたことがあります。小学5年生の頃に社会の授業で「輪島塗」を班発表したのがとても記憶に残っていて、大人になったらぜひ行きたい場所でした。当時は愛知県に住んでいたのですが、世界遺産の白川郷に寄り道してから、輪島まで北上したのでした。当時まだ箸をもてるのが長女だけだったので、彼女の名前を入れていただいた箸を購入しました。その後棚田も見に行って、子供たちと歩いたのもよい思い出です。
そんなわけで、今回輪島分校に伺うにあたり、輪島の朝市のまわりにも訪れることができたらと願ってはいましたが、道路状況のことも事前に調べていましたから、時間的にも難しいだろうと思っていました。しかし、さすが現地の強味、強行スケジュールではありましたが、輪島市内まで伺うことができました。個人的にも本当に感謝しています。
輪島・朝市通り周辺の火災で10人以上が亡くなり、住宅を含めて建物が一帯焼け、そのまま3ヶ月が経っていました。報道によると、火災は「電気火災」が原因とみられているそうです。私たちが今日からできることがここにもありました。
3ヶ月経ってやっと一方通行が開通したのと里山海道
輪島に北上する「のと里山海道」は途中木が倒れて寸断されたり、道じたいが崩落してなくなったり地盤が割れたりしていましたが、4月に伺った際には片側だけ通れるようになり、金沢方面から輪島に行くときだけ通れるようになっていました。各所のみなさんが日々協力し、工事を進めてくださっているなと思うと同時に、もう少し根本的に橋を作ったりう回路を検討したりできないものかとも思いました。
毎日のスクールバスの車窓から子供たちが見て頭にきざみつけていること
輪島分校は、輪島市のなかでも旧門前町というところです。地図で見ると少し内陸だなと思われるかもしれません。最初にも書いたように、輪島市内からのトンネル(中屋トンネル)が崩落したため、スクールバスに乗っている時間は以前よりずっと長くなりました。
「いま」を守り未来に負の記憶を残さないためにも
そのスクールバスの車窓から子供たちが毎日みているであろう外の風景に、ほんとうに1人の大人として、申し訳なくて申し訳なくて、今後人が減っていくだろうから復旧より移転だろうなどと議論している大人たちと同じ責任があると痛感しました。また、特に知的障害や発達障害のある子たちは、短期記憶に制限がある場合が多いのと同時に、フラッシュバックといって、突然過去の嫌な記憶を思い出して頭の中がいっぱいになり、その当時の心身状態に陥ってしまうことがありますから、その懸念も重要視しなければならないと感じました。
ひろゆき氏のことばに、わたしも胸に手をあてつつ同意します。このまま、石川県立七尾特別支援学校、そして輪島分校や珠洲分校に通う児童生徒の毎日のために、なにもできずにいるのか。毎日自らに問うています。全知P連会長として、こうして発信することが、なにかにつながればと願っています。
知的障害のある子を育てていると、生まれた時、病気の時、ふだん町を歩いている時、親族と過ごす時、いろんな局面で、泣き笑いの強さを体感として知っています。だからこそ、共有できる想いがあり、心を寄せることができると信じています。保護者も教職員も、そして行政・福祉・地域またアカデミア全体が、子供たちのために、というPTA連合会のシンプルな目的に、再度目を向けてくださることを願っています。
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全国特別支援学校知的障害教育校PTA連合会 2023年度活動内容、および知的障害に関する情報の発信用noteです。