見出し画像

インドネシアの首都移転に関して

2019年8月、インドネシアのジョコ大統領は首都をジャカルタからカリマンタン(ボルネオ島)のヌサンタラに移すと発表した。目的はジャカルタとの経済格差解消、ジャカルタの人口一極集中緩和、大気汚染問題、渋滞を始めとする交通課題、それに地盤沈下対策である。インドネシアの歴史を読むと、過去何度か首都移転が試みられた様だが頓挫している。今回もさまざま議論がある様だが、2022年1月には首都移転に関する法案が制定された。段階的に移転が進められ、2045年に完成を予定している。
 
 
2023年2月28日(東京)にはインドネシアの国会副議長や運輸大臣が来日し、経済団体と首都移転関する懇談会が開かれた様である。


私見になるが、事はそううまく進まないのではと想像する。多くの企業(外資系を含む)がジャカルタやその近郊にオフィスや工業を構え操業している。それらを簡単に移動させられる訳ではない。もちろん、ジャカルタには長期間改善されない問題があり、特に地盤沈下は深刻で、1970年以降から現在で4メートルも沈下しているとの報告があり、2050年にはジャカルタ北部が海に浸かるという予想もある。しかしそれらの問題があっても、メガシティ・ジャカルタの魅力は強いと感じる。渡航規制が緩和された2022年夏頃から数度に渡り、ジャカルタを訪問しているが、2019年頃に比べても更に高層ビルが増え、既に大阪を超える規模になっている。東京のビル群ともそう変わらない印象を持った。それだけジャカルタにマネーが集まっている証拠である。
 
 
それらの点に加え、インドネシアの政治は為政者の交代で方向転換する事が多々ある。
現大統領のジョコ氏の任期は残り僅かであり、現法では3期目は許されない。来年早々(2024年2月)には大統領選挙が行われる予定である。次大統領候補の一人と見られるアニス氏(前ジャカルタ特別州知事)はこの移転計画に疑問を呈している。これらの動きから見てもうまく進むのか不透明感がある。また依然として外国からの投資が厳しい現状も変わりなく、移転費用の多くを海外投資で賄おうと計画する事への見通しも良い状況になっていないと聞く。
 
 
新首都となるインドネシアのカリマンタン 「ヌサンタラ」 はどの様な街になるのか。。。
東カリマンタンのバリクパパンという街が玄関口になる様だが、この街に足を運んだ事のある人は非常に少ないのではないだろうか。書いている私も訪ねたことはない。年配の方で太平洋戦争を経験また知る方なら、日本軍が多く駐屯した地域として知る方もいるだろうが、それ以外でカリマンタン島と言えば、オラウータンの生息地というイメージくらいだろう。
 
 
そこにインドネシアの新首都を作るという、近年どの国からも聞かれない計画・事業を行おうとしている。反対派の反対意見はさまざまあるが、環境破壊が大きな理由の一つだ。カリマンタンの自然豊かな土地を切り開き、そこをスマートシティにするという理想は良い部分もあるのだろうが、そこで壊される自然環境、また新たに建物を建てる事等で出される二酸化炭素等、悪影響の部分も十分に考慮されなければならない。また現住民の十分な理解と保証も非常に注視されるべき点である。
 
 
それらの課題を考えると、新首都及び近辺への事務所移転や投資等は、来年行われる大統領選挙の結果を待つ必要があるだろう。日本の首都 東京を見ても感じるが、やはり人が集まれば仕事が生まれ、経済の好循環からさらにマネーが集まるのである。役所機能だけが新首都で行われ、結局企業の多くはジャカルタに残るという事も大いに想像される。
 
 
2045年はインドネシアにとって大きな節目の年になる。オランダから独立してちょうど100年目、またインドネシアは2045年に先進国への仲間入りを目標に掲げている。それらの国威発揚的な部分もこの首都移転を後押しする要因だろうが、そこには多くの国民の同意という民主的プロセス、環境への十分過ぎる程の配慮が欠かせない。その点をもう一度立ち止まって考えても、インドネシアのこの先の発展が妨げられる事も変わる事もはないと思うのである。
 
 
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?