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小物の中の大物

今年の8月下旬、不図したきっかけで、ネット環境のすべてを失った。
こうなるとあがいてもどうにもならなかった。
とりあえず資金作りをしなければならなくなったにもかかわらず、気がめいって、何をする気にもならない。
気がめいっている間、1か月半ほどだが実家の周辺で釣り場を開拓して回っていた。
実家は関東の2大河川に挟まれた地域だ。用水路も多い。にもかかわらず、釣り場がほとんどない。
理由は、冬季の取水管理が厳格で、農閑期の用水路はほぼ空っぽになってしまうのだ。
冬越しのできない水路には、農繁期の通水時に見ることのできる魚の数も当然少ない。
こうした事情を鑑みれば、釣りに使える水路はおのずと限られてくる。
サイズもあまり期待できないと思った。
私が小学生のころに通った小物専用の用水路で竿を出す。
この水路は、かつてシーズンには、連日、5~10人ほどの釣り人が必ずいたものだが、今はいつ行っても誰もいないのだ。
水路には泥がかなりたまったせいで、水深が浅い。
グルテン練り餌や魚肉ソーセージを餌にする。数少ないえぐれを探して、当たりを取っていると、いやに好調で、すぐに、30、40と釣れてしまう。
数も多いがサイズもそろっている。
どうも釣りの衰退で漁獲圧が減ったのがプラスに働いているらしい。
多くはモロコだが、オイカワも交じって小気味よい手ごたえが味わえる。
魚のサイズも、モロコ、オイカワにしては大きい。
モロコで10.3cmだから迫力がある。
小物の中の大物だ。
調子に乗って、モロコの魚拓を取った。
綿布にとったのだが、モロコのうろこがくっきり浮き出たのがいい感じだ。
その時に釣れた魚を冷凍にして置いた。
いま、石油ストーブの上で、醬油煮にしている。
ふつふつという音と魚のうまそうなにおいをかいでいると、今年も年の瀬なのだなと思う。

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