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オンラインリハのエビデンスを調べてみた

急速に進む医療のデジタル化に伴い、オンラインを活用した遠隔リハビリテーションの普及も進んでいます。医療従事者にとっても、自身の働き方としてオンライン活用に関心を持つ方は増えているのではないでしょうか。

バックテックが提供する「ポケットセラピスト」も、オンラインを活用した産業保健・健康経営プラットフォームです。現在400名を超えるセラピストの方々に参画いただいていますが、新しく参画いただくセラピストの多くが「オンラインで本当に効果出るの?」という疑問を持っています。

この疑問に対してバックテックでは、まずは論文やエビデンスレベルでオンラインリハの現状を学びます。それを知った上で実際に働くことで、オンラインリハの価値を実感していただけるよう様々な取り組みを行っています。

そこで今回の記事では、ポケットセラピストで一緒に学んでいるエビデンスや研究論文による「慢性腰痛に対するオンライン・遠隔リハビリテーションの効果」について解説していきたいと思います。



慢性腰痛に対するエビデンス・推奨レベル

慢性疼痛診療ガイドラインはMUSTで学びたい

慢性疼痛に対するリハビリテーション介入の効果について、『慢性疼痛診療ガイドライン』を参照すると、それぞれの介入における推奨度とエビデンスレベルが示されています。

  • 運動療法:推奨度「1(強い推奨)」、エビデンスレベル「中(B)」慢性疼痛の管理において運動療法が科学的根拠に基づいて効果的であることを示されています。

  • 認知行動療法と患者教育を組み合わせた運動療法:推奨度「1(強い推奨)」、エビデンスレベル「中(B)」
    この組み合わせは、慢性疼痛の治療効果を高める可能性があることが示されています。

  • 徒手療法:推奨度「推奨なし」、エビデンスレベルは「低い(C)」
    徒手療法が慢性疼痛治療において十分な科学的根拠に基づいていない、または効果が限定的であることを示しています。

Lancet誌による治療選択の優先順位がわかりやすい

また、Lancet誌による慢性腰痛に対するそれぞれの治療方法の推奨を示した研究によると、運動療法、教育、認知行動療法は「第一選択肢」に該当し、マッサージ、マニュピレーション、NSAIDsは「第二選択もしくは補助的選択」に該当する。

このように、慢性疼痛、慢性腰痛へのリハビリテーション介入において、オンラインでも提供が可能な運動療法患者教育認知行動療法のエビデンスが高いことがわかります。

つまり、慢性腰痛に対するリハビリテーションにおいて、対象者を触ることができないオンライン介入であっても、一定の効果が見込めると考えられます。


レビュー論文から学ぶオンラインの効果とは?

1. 非特異的腰痛に対するオンラインプログラムの効果

非特異的腰痛(Non-specific low back pain)に対するオンラインプログラムの介入効果を”従来のケア”と比較した研究を集めたシステマティックレビューについて紹介します。

Effectiveness of telehealth-based interventions in the management of non-specific low back pain: a systematic review with meta-analysis. Spine J. 2017 Sep;17(9):1342-1351.

この論文によると、オンライン単独介入は、従来のケアと比較して、痛みや機能障害において、有意な改善効果を認めないというネガティブな結果でした。一方で、生活の質(QOL)の有意な向上には関連するという結果となりました。

ここで考慮していくべきこととして、分析対象となった研究のオンライン介入の"方法"はどうなっているのか?ということです。

この論文で抽出された論文を詳しく見ていくと、e-mailサポート、腰痛に関する動画、歩数計データなどを活用したセルフモニタリング、自己管理型サポートを中心にオンライン上で提供していました。

これらは、患者のアクションに対してリアルタイムでサポートする同期型(Synchronous)サポートではなく、予め用意したコンテンツによる非同期型(Asynchronous)サポートもしくは遠隔モニタリングと呼ばれるサポート方法です。

つまり、このシステマティックレビューから言えることとして、非特異的腰痛に対する非同期型サポートや遠隔モニタリング、自己管理型のオンラインプログラムは、従来のケアと比較して有意な改善効果を認めない(同等の効果)可能性があるということです。


2. リアルタイムでのサポート(同期型:Synchronous)の効果は?

一口に、オンラインリハビリテーションといっても、その介入方法が【一方向性か双方向性】【リアルタイム介入かどうか】によって全く異なる介入方法であると言えます。

そこでここからは、リアルタイムでのサポート(同期型:Synchronous)の効果を検証したシステマティックレビュー論文を紹介します。

Real-time telerehabilitation for the treatment of musculoskeletal conditions is effective and comparable to standard practice: a systematic review and meta-analysis. Clin Rehabil. 2017;31(5):625-638.

この論文は、さまざまな筋骨格系障害による慢性疼痛者を対象に、遠隔リハビリテーションと対面介入(もしくは従来ケア)を比較した13件の研究、1520名をもとに検証されものです。

その結果、遠隔リハビリテーションは身体機能の改善に効果的であり、コントロール群(対面介入・従来のケア)と比較してもわずかに良い結果でした。

またサブ解析の結果では、対面介入・従来ケアに遠隔リハビリテーションを組み合わせた群は、対面介入・従来ケア単独と比較して有意に良い結果であった 。加えて、遠隔リハビリテーション単独と対面介入の比較において、身体機能、疼痛の改善効果は同等程度の効果が認められました

この論文から言えることとして、リアルタイム(同期型:Synchronous)によるオンライン介入は、さまざまな筋骨格系障害において、従来の医療提供と同程度の効果がある可能性があり、またその組み合わせが効果を促進する可能性が高いと考えられます。


ポケットセラピストの効果検証

最後に、バックテックのポケットセラピストによる介入効果をみていきたいと思います。

Yu Odake, Naoto Fukutani, et al. Factors for reducing monetary loss due to presenteeism using a tailored healthcare web-application among office workers with chronic neck pain: a single-arm pre-post comparison study. Environ Occup Health Prac. 2021
https://www.jstage.jst.go.jp/article/eohp/advpub/0/advpub_2020-0024-OA/_pdf/-char/ja

ポケットセラピストの効果を検証した論文

この研究は、3ヶ月以上続く慢性的な首の痛みを有する勤労者を対象に、12週間以上の期間ポケットセラピストを使用した130名の前後の状態を分析しました。

ポケットセラピストでのサポート内容は、①エクササイズとストレッチの指導、②認知行動的アプローチ、③職場環境の調整などです。

その結果、痛みに関する各種指標、うつリスク、プレゼンティーズムによる金銭的損失額のそれぞれ有意に減少しました。また、回帰分析の結果、プレゼンティーズムによる金銭的損失額の減少には、首の痛みの痛みの強度の減少とウェブアプリの使用頻度が有意に関連するという結果となり、その有効性が示唆される結果となりました。


今後もバックテックでは、常時蓄積される自社のビッグデータを解析することで、オンラインリハ・デジタルヘルスの更なる効果検証していくとともに、さまざまな形で社会への発信を続けていきます。


ポケットセラピストにご興味を持たれた方へ

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