小説 神様日記(現代版陰陽師)2

どこ?
(夢だ)
あなたは誰?
(僕は僕。俺は俺。私は私。)
大丈夫?
(遠い過去。全ては過ぎ去りし時空)
あなたは誰?
(僕は僕。俺は俺。私は私。)
名前を聞きたい
(名前は忘れ去られた時空の彼方。どこにもない何か。自分が何者なのか。自分が何だったのかも思い出せない)
あなたは?
(神族の最初の人。「神」と呼ばれた最初で最後の存在。αでありΩである)
神様?
(「神」という名の人さ)

ガバッ!
「夢えええええええええええええ!」
「うるさいな。全く。一々口に出さなくても伝わるから。夢だね。ただし、僕の父親と何か繋がりのある夢」
「え?藤月さんのお父さんって神族ってだけじゃなくて、唯一神?」
「んん-、下界は色々誤解があるな。所謂最初の人。一番最初に世界を作った人じゃないかと言われてる」
「え?いや、それ神様」
「まあ、だからそれは地球での通り名だって」
「最初の人っていうのか」
「そそ、神族名乗ってると皆下界の言う所の神様じゃん。まあ、それを押して「神」って言われてるんだけどね。親父は。だからいろいろややこしいんだよ。それで、最初の人とも呼ばれてる。最初であり最後である。αでありΩである。聖書の黙示録で有名だね」
「うわ。さすが神様。黙示録って本当におこるんですか?」
「んん-終わってるよ?」
「え?」
「ああ、あの話は時空分裂期の話なんだよ。三次元体になった親父が、他の高次元体に隙をつかれ、たくさんの「コピー」が取られてしまった。その事によって複数の所謂「神」が生まれてしまうんだよ。そして、その内の多くが仲間として迎え入れられる。そして、最後まで反攻し続けたのが所謂「竜」なんだよ。他の時空が次元上昇したり助かったりしていくんだけど、そこの時空だけが取り残されるんだよ。それを叙事詩的に書くと「竜」が投げ落とされるって話になる。黙示録は随分叙事詩的だけどね」
「え?世界滅んじゃわないの?」
「ある意味滅びある意味助かった。助かった人達の方が多かった。この時空もその一つだよ」
「助かった時空なんだ」
「そ、ビルであの頃は何かに憑りつかれているようだった。って昔の人が言ってたって考えてたろ?その頃に起こった話さ。助かった下界の人達は気付かずに過ごしてるんだよ。まあ、下界でもそれなりに有名人ではあったみたいだけど。色々大変さな」
「んん-頭が混乱」
「だろうね。天界でも難解で緊張感のある譜面だったって話」
「譜面?」
「計画かな。親父が好んで使ってた言葉。ま、それはもう昔の話なんだ」
「そうなのか。世界は滅ばないのか。神様いたら「聖書」とか気になるでしょ」
「その年で日本人で聖書読んでる人は多くはないね。クリスチャン?」
「ううん。あれ?どうしてだろ。ホテルで読んだような」
「ああ、置いてあるところもあるね。いや、あ、これは」
「はい?」
「いや、なんでもない」
同じなのか?
……次元体の進化にまた高位体が関わってるって事ですか?
恐らくだな。親父の時と同じかもしれない。何者なんだこの子。確か、ビルの屋上でも「月」を眺めてたな。月神族と関りがある?いや、そんな筈は。月神族の大半は天界へ移った。過去の話の筈なんだ。親父も侵入してる。何かあるのか?
「どうしたの?黙り込んで」
「いや。まあ、親父の過去を話す機会があったんでね。感慨深くてね」
「嘘。誤魔化してる。私結構嘘に敏感なの」
「……」
勇麻さんは黙り込んだ。すかさず私は追い打ちを掛ける
「はい!ビンゴ!カマかけて正解」
やられた?いや、思考にそんな兆候は
……複数の条件検索を開始
「あれ?勇麻さん。冗談なのに。何本気顔してるのかな?」
「少し気になる事があってね。ちょっと調べてくるよ」
その声と共に勇麻は梓の目の前から消えた

……この子多分
親父と同じ進化?あり得ない。いやあり得るのか?
……可能性は複数のパターンがあります。マスターが想像した可能性も否定できません。本来、上位体の干渉は見える筈なんですよ。我々には
そうなんだよ。俺達の解析力は進化した。だから見える筈。その筈だ。聖書の件。記憶を読んだ限り一度きりだ。ホテルで読んではいる。だけど、覚えてるし情景が浮かんでる。直感映像記憶者?いや、偶然にしては嵌り過ぎる。半分冗談で半分本気。ああ、下界人の厄介なところだ
……「主」のパターンと同じですね。ですが、まだ早いですよ。結論を得るには。不確定要素が多いです。現状で推測できるパターンは多過ぎて絞り込めません。恐らく、マスターが進化の導き役である事は間違いないかと
はあ。めんどくさい事になったな。親父の関係者とかじゃないだろうな。これでまた親父の関係者ならいい加減呪ってやるからな
……物騒な
また日本語かよ。あれ厄介なんだよな
……ご心配なく。私がフォローしますから。ね、マスター
了解

街路樹の並び立つ道路の向こうで真昼の月が沈む
不穏な気配を感じとる
何?
歩いていた梓 弓は周りに違和感を感じて振り返る
藤月 勇麻の姿は見当たらない
霊感とでも言うのだろうか。それが冴えている
前から感受性は過敏なくらいで、少しは常人の見えない何かを感じる事はあった。だが、藤月と会い異質な空間を目の前にして、その感覚は前より遥かに冴えていた。まるでサナギから脱皮したての蝶のように。触れれば壊れるくらい感覚は鋭敏になっていた。その感覚が危険を感じとっている
(敵だ)
この声
(逃げて)
え?
(走って逃げて!)
 私は街路樹に囲まれた道路を周りを気にしながら走り出す。変だろうか。しかし、それを気にする余裕はない
(まだ…早い…)
何?
(逃げて。ダメだ。間に合わない)
梓の周りの空間が真っ黒になる。そこで光るように佇む誰か。梓は誰かに会った

「えええええええええ!夢ええええええええ!」
 ガバリと梓は起き上がる。ベットの傍の木製の椅子に勇麻が腰かけている
「間に合った……。親父か…」
 勇麻がそう言った
 空間が再び、真っ黒に染まる。
「弓を守ってくれ。砕奈」
……了解です。マスター
サイナって言うんだ。この妖精。
「砕奈。頭に文字が浮かんだろ?」
「物騒な名前ですね」
……ま、通り名です。マスターの手助けをするならこれ位の通り名じゃないと
「無駄口はやめとけ。いつものと違うぞ」
……了解。詠唱を始めます
 よく分からない無数の文字が頭の中に流れ込み(古代のルーン文字に似てる?)、自分の周りを光の球体が包み込む。球体の周りを薄裏とした文字が駆け巡る。外の景色は見える。暗黒の地平に勇麻と誰かが向き合っていた。二人とも薄い白色に光っている。これまでの人?と違う
 悪寒、吐き気、殺意、狂気、何か真っ黒な物が自分の中を侵食していくようだ
……意識をしっかりと保って!
 砕奈がそう喋り掛け、私は正気を取り戻す
「何?」
 勇麻さんと相対する相手は平々凡々としたくたびれたおじさんのように見える。だけど……
「違う!」
 勇麻さんと私は同時に声を挙げた
……魔王クラスですね。ちょっと今のマスターには厳しいかな
「挨拶だけだよ」
 平々凡々としたおじさんはそう言った。
「『愛奈』を!」
 勇麻さんが叫んだ。
……敵、魔王クラス。魔滅刀『愛奈』使用許可申請。……承認
 砕奈の背後に白い光が満ち、その光は勇麻へと伸び、包んだ。そしてその光が消えると勇麻の右手には光り輝く日本刀が握られていた
「『愛奈』か。懐かしい。アイザックが破れた時空の産物か。君が持っていたとはな。確か前の持ち主はクリスティーナ・ブラウンではなかったかね」
 くたびれたおじさんはそう言った。淡々と。だが何だろう。彼が喋る度に音節の区切りが来る度に、背中を悪寒が走る。
「しかし、今時そんな骨董品が役に立つとは思わんがね」
 普通に喋っている。なのに。なんなのか。背後にある狂気が背後にある悪意が、伝わり、逃げ出したい衝動に駆られる
「安心しろ。ヴァージョンアップはされている。骨董品をそのまま支給する程、天界は落ちぶれていないぜ」
 勇麻の額を汗が伝う。
 あ、神様汗かくんだ。
「そこかよ!」
 勇麻が目線を動かさないままそう言った。
 私は少し安心した
……げんきんな子だわ
「確かにわしは追いやられた。しかしだねえ。本当にわしが間違えていたのかねえ。愛や友情や勇気が本当に役に立つのかね。やっぱり、私は「力」に追い払われたのだと思うのだよ。「金」「権力」そして「力」「快楽」という名の「幸福」。それこそが物事の本質であろう。「力」に支えられぬ者は儚い」
 おじさんは私を指さした。
「ほれ……このように……」
 おじさんの指から光が放たれる。そして私の周りを包んでいた光の球体と衝突する。球体は壊れ、「きゃ」と私は叫んで落下する。
 勇麻さんとおじさんのいる真っ黒な地平に。
……落下阻止。結界再構築。次元断層結界の使用許可を。…承認。
 私の体は地面に届く前に急停止し、再び光の球体に包まれた。さっきよりも、ルーンのような文字は素早く動いている
「御覧の通り。仲間が助けてくれる」
「もちろん手加減じゃよ」
 おじさんはそう言った。
「出来れば君に聞きたい。追い払われたわしは世界をもう一度捉え直したいのだよ。この世界の真理を」
「名乗らないな」
 おじさんはクックッと笑って続けた
「すまんな。有名人のつもりでおったよ。てっきりわしの事は知っておると思ってな。わしの通り名はサタン。古の蛇。あんたの甥になるのかな。長く生きておると色々呼び名があるて」
 ええええええええええ。サタンって。ええええええええ
「なるほど有名人だ。砕奈、換装を」
……了解です。マスター。使える最強装備に換装します
 勇麻さんの体が白く発光する。強い光。
 暫く経っても強く光っているだけ
 え?換装ってこれだけ?
……他高次元の換装です。三次元表記では光っているようにしか見えないですが、高次元体への接続と換装を行っています。どの神族が手が空いているか
「藤月 勇麻、参る!」
 勇麻さんがそう言うと勇麻さんの体が光り、物凄いエネルギーがプラズマのように駆け抜ける
 サタンは霞のように掻き消えた。
 終わった?あっさりと?
 ゾクリッ!
私は光の球越しに背後に気配を感じた
 後ろ?
 私は振り向く
「ほう。そういう事か。なるほどの」
 サタンは私を見てそう言った
そして、ゆっくりと勇麻さんの立っている暗闇の地平へと降り立った
「躱すか?あれを」
 勇麻は呟いた
「それだけじゃないて」
 勇麻の光が消える。薄裏とは光っている。だが、その光は風前の灯火のようだ。そして勇麻さんは糸の切れた操り人形のように崩れ落ちる
「君らのお得意の『接続』を切らしてもろうた」
 そう言ってサタンはゆっくりと倒れた勇麻さんに近付いた
「君の父上はそれ相応の拷問にも耐えたが、君はどうじゃろうか。さて、本当に「愛」や「勇気」や「友情」が人を助けるんじゃろうか」
 おじさんの体が変形していく。体自体から無数のナイフのような先のとがった紐が飛び出してくる。蠢く触手のように先の尖ったナイフが飛び出る。奇々怪々とした。そう表現するしかない何かおぞましい気配を感じさせる紐のナイフの触手。そして、その触手は勇麻さんを襲おうとする
「やめて!」
 私は叫んだ。砕奈がサタンの方へ向かっていく。
 サタンの触手のナイフが砕奈に向かう。その瞬間

パリーン

何かが割れる音がした。
暗闇の空間が払われ、街路樹の街並みになる。
あれ?夢の場所?
サタンはくたびれたおじさんに戻っていた
「その辺にしておけ。サタン」
 空から轟くような声が響いた。落ち着いた壮健さを感じさせる声。私達以外には聞こえていない声が。
「天帝か……。また「力」じゃて。わしのやっとる事もお前らのやっとる事も本質は同じじゃろうに。まあ、挨拶止まりではあるし。帰るかの」
 サタンはそう言うと消えた。
……マスター!
 倒れ伏した勇麻さんに砕奈が駆け寄る。駆け寄ると言っても飛んでだが。私も後に続いた
……救急搬送。存在力枯渇。緊急治療を要請します。…承認
 砕奈の背後に光の渦が出来、それは勇麻さんに向かって伸び勇麻さんを包み込むと光は勇麻さんごと消えた
……ふう。これで一安心だけど。弓さんの警護があるから私はいけないか
「私の事はいいから」
私がそう言うと砕奈はこちらを向いた
……そうはいかないのが天界の事情です

「やあ」
私が部屋に戻ると勇麻さんが机の上に腰掛けていた
「はやああああああああああ。さっき緊急治療って」
「下界とは時間の流れが違うし治療速度が違うからね。それに存在力…ここで言うと所謂エネルギー不足が起こっただけだから補填すれば意外とすぐだよ」
「御飯食べたって事?」
「点滴受けたって事だね」
「意外と神様の世界も親近感湧く。大丈夫?」
「完全復調とはいかないかな。まあ、でも少しすれば治るよ。しかし、あれで負けるかね」
「ショックなんだ」
「君の警護もあるしめそめそはしてられない」
……天帝さんが助けてくれました
「おじきか。やっぱり強いなあ」
「おじさんなの?」
「そう親戚のおじさんだね。武術としては天帝覇王拳の使い手。強いよ。僕じゃ相手にならない」
「うわ。名前すご」
「僕は覇王真王拳が源流。同じ武術が源流なんだけど。使い手で名前が変わってる。所謂流派だね。大元は中国の武術の八極拳さな」
「八極拳って中国の?」
「そそ中国の。親父が下界で最初に学んだ武術が八極拳さ。そこから進化してリンデワンリングで全ての武術の源流となった。親父が開眼したのが覇王真王拳だね」
「神様すご。リンデワンリングって?」
「説明すると長いな。簡単に言うと最初と最後が繋がってる譜面の事。親父はある意味発明家だから、覇王真王ダンスとかリラックスとか色々開発してるな」
「ダンスもやるのか。うはあ。なんか遠い存在だな」
「んん-でも人らしい側面もいっぱいもってるよ。そして……人らしくない側面もね」
 勇麻さんは少し悲しそうな顔をした
「神様って中国人だったの?」
「いや、日本人だったよ。その話はやめよう」
どうして?そう思ったが勇麻さんの顔を見ると口には出せなかった。そして思考を読んでる筈の勇麻さんは答えなかった
「サタンがまた来るとなると、修行が必要だな。どうすべきかな」
……今回のケース簡単じゃないかもしれません。サタンは3次元体での肉体も持っています
 砕奈が言った
「三次元肉体保持者か。厄介かも知れないな。あまりに親父の時と似てる事が多いと思うが」
……そうですね。類似点は多いです。弓さんに協力してもらうのはどうでしょうか?
「『降ろし』をやるのか。下界人の女性はあまり戦闘が得意じゃないと聞いてるけど」
「『降ろし』ってなんですか?」
 私は聞いた
「簡単に言えば君の肉体に僕が入り、君の肉体のポテンシャルも借りる事だよ。下界では『憑依』ともいうね。色々問題のある技術なんであまり使いたくはない」
「問題?」
「君の3次元でのエネルギーを借りることになる。それと君の脳を借りることになるので下手をすると、君の人格が不安定になる。『降ろし』をする前と後では君はある意味別人となるかも知れない。進化の歩みをする時に必要な場合も多いけれど、それがいい事か悪い事かは難しいね」
「そうなのか……」
「利点としては君と君に繋がっている『力』も借りる事が出来る。察するに、君はただ霊能力者というだけではないようだから、ひょっとすると途方もない『力』と繋がってるかも知れない。ただ、僕には少し難しい」
「難しい?」
「技術的な問題は少ないけど倫理的に迷うって事だよ」
「そうなんだ」
「うん」
……でもこの際だから弓さんにも力をつけて貰ったらどうですか?『降ろし』をやるかどうかは別として
「弓さん次第かな。確かにある程度自分の身は守れるようになった方がいいとは思う」
「やりますよ。私。何やるのかは分かりませんけど」
「なら、僕のトレーニングと共に弓さんもトレーニングやるかな?」
……了解です
「了解です」
 私はシュタッと敬礼した

「勇麻さんはサタンさんの問い掛けをどう思うのかな?やっぱり『力』がなければ色々守れないんじゃないかとも思うよ」
「簡単だよ。正義無き力は無力なり。力無き正義もまた無力なり。3次元の言葉だろ?これは。本質は力じゃないさ。力だけを追う進化は行き詰る。だからと言って「力」を無視しても何事も出来ないさ。正義の味方は両方やらなきゃいけないから大変さ」
「正義の味方なんだ」
「そ、あくまで正義の味方。サタンはその事から逃げたんだよ。でも強い。力を追い求め続けてきたから。僕らの難敵ではあるさ」
「なんか分かったよ。正義の味方……か。子供っぽいと思ったけれどもそうじゃないんだね」
「単純に心と力両方必要ってだけだよ。『力』だけを求める進化は進化の過程の亜種だ。基本的には進化の過程でよくおこる勘違い。そもそも『正義』が存在しないならいい事悪い事も感じなくなる。それは退化だ。サタンは取り残された存在なんだよ」
「分かってるんだ」
「分かってて説得できない。親父も行方不明だし」
「じゃあ、天界では何が重要なの?」
「重要な事はいっぱいあるさ。よく生きる。その事のテーマはたくさんある。次元数が進めば進むほどね。より複雑になるから。でも強いて言えば「愛」「勇気」「思いやり」そして「力」もさ。下界の何かの歌にもあったように「愛」と「勇気」と「思いやり」と「力」。下界で子供の頃に口ずさむような歌にたくさん大切な事が籠ってるものなんだ。バカな奴は思想性の多さに誤魔化されすぐに「力」へと走る。いつの時代にもある下らないテーマさ。思想性の多さに誤魔化された時に「力」は不変に見えるだろ?下らないテーマだからこそサタンは消えないのさ。「力」に走りそうな時は基本に戻れ。と親父は言ってたよ。受け売りだよ」
「なるほどねえ。お父さん凄い人だね」
「まあ、変人だよ。でも親父を褒められて悪い気はしない。ありがとう」
「うん」
「だけどね。それでも「力」の事を考えるさ。いつだってそうしたくてそうできないのは「力」が足りないせいだから。でもね。逃げたら駄目なんだよ。「力」に憑りつかれた進化は結局はサタンにしかならないのさ。「金」「権力」単純な「力」いつだってサタンは口を開けて待っている。『堕ちたら駄目だ。』親父はそう言ってた」
「難しいね」
(難しいからこそ、進化していける。そしていつしか人は僕を越えていくんだ。それを待っているんだ。僕はね)
え?
「親父!見てるのか?」
(僕はずっと見ている。そういう存在だから)
「戻ってこい。親父!」
「神様なの?教えて」
 声は聞こえない。待ってるのか。人が越えていく事を?人が全知全能の神を越えれるという事があるのだろうか。
全ての者を見る事が出来るのなら、決して越えられないのじゃないのだろうか。それを待ってる?何故。どうして
「聡い子だな」
……確かに
(違うよ)
あ、返事きた。これって預言者ってやつ?
(げんきんだな。いずれ会おう。僕の愛しい人)
「またお前の関係者かあああああああああ」
 勇麻さんが叫んだ
(またね)
暫くの空白。そして勇麻が喋り出す
「ああ、もう取り敢えず分かったよ。君は親父の関係者の三次元体だ。あーめんどくさい。自分でやれよな。はあ」
……ご存じの通り変人ですから
「まあ、どうせなんかあるんだろうけど。親父の関係者なら少々の事は大丈夫と思う。もちろん、ステップは踏むよ。状況次第じゃ『降ろし』もありだな」
扱いが雑になってるような
「いや、まあ、大変なんだよ。だから同情したいぐらいだ。親父は要求難度高い事要求する事多いから、親父が下界で直接喋り掛けるとかよっぽどだよ。次にサタンが来た時の為に特訓だね。僕も弓さんも。それでいいかな?」
 勇麻さんが少し不安そうに私の方を見る
「分かりました」
 私は、そう言って頷いた

第二話了
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