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「うごくダンボール」。

このお話は、長男が寝る前に「何かお話して」と言ってきた際、その場で思いついた創作です。
長男の体験をもとにしたストーリーなので、物語として不自然な点もありますが、あくまで【我が家の長男】を楽しませるためにつくったお話だということを、ご理解ください。

題名は、いつも長男が提案してくれます。


タロウくんが遊んでいると、後ろでガサリと音がしました。


振り返ると、積み重ねていた段ボール箱が、ひとりでに勝手に落ちていました。

なんでだろう?
タロウくんは、ふしぎに思いましたが、あまり気にせず、段ボール箱を元に戻しました。


しばらく遊んでいると、またガサリと音がしました。
振り返ると、また段ボール箱がずれています。


おかしい。
タロウくんは、目を細めて箱を見ました。
じっと見ていると、段ボールはタロウくんの目の前で、もういちどガサリと動きました。


あやしい!
タロウくんは、動いた段ボール箱をガシッと勢いよく掴みました。
足でも生えてる?いや、虫かな!?
タロウは、じろじろと段ボールをのぞきました。

すると、おや?
段ボール箱をつなぐガムテープの隙間に、小さいなにかが動いているではありませんか。

やっぱり虫か!?
タロウがよくよく見ると、それは知らない生き物でした。


段ボールのような茶色い帽子。
まあるい目がふたつ、見えています。
顔も茶色、服も茶色、ぜんぶ茶色。
段ボールみたいで、よく見えません。

それでもたしかに動いていて、パチリと目が合いました。


「きみは誰!?」
タロウくんはおもわず、叫びました。

「キミこそダレ!?」
高い声がしました。

「しゃ、しゃべれるの!?
なんだコレ、どうしよう!」

タロウくんは、その小さな生き物の発見にあたふたしました。
小さな生き物は言いました。


「ぼくは、ダンボールせいじん」

「段ボール星人???」
タロウくんが聞き返すと、段ボール星人はうなずきました。

「ぼくは、ダンボールがダイスキ。
ダンボールで暮らしていて、ダンボールを食べています。
ねえ、ダンボールをくれませんか?」


そう言うと、さっき動いていた段ボールを、むしゃりむしゃりと食べ始めました。


段ボールを食べる、段ボール星人?
タロウくんは、おどろきました。
でも、それ以上に、すぐ言わなければならないことがありました。

「段ボール星人さん、ちょっと待って。
 その段ボール箱は食べないで。
 それ、ぼくの宝箱なんだよ」

タロウくんは、段ボール箱を指さしました。
箱の中には、工作しかけの折り紙や、粘土、作りかけのレゴが入っています。
大きさがちょうどよくて、ずっと使ってる靴箱なのです。
タロウくんは、言いました。

「そっちの、下の方にある箱は、使ってないから食べてもいいよ」

タロウの言葉を聞いて、段ボール星人は顔をぱあっと明るくしました。

「ありがとう!いただきます!
 おおーい、食べてもいいってさ!」


かけ声に呼ばれて、ガムテープの隙間から、ほかの段ボール星人が出てきました。
3人、4人、のそのそ。
むしゃり、むしゃり。
段ボール箱は、すぐに小さくなりました。

「段ボールが足りません。
 もっと段ボールはありませんか?」


困ったタロウくんは、お母さんとお父さんにワケを話しました。
ふたりは、小さなその生き物にびっくりしましたが、すぐに切り替え、せっせと段ボールをかき集めました。

「いらない段ボールを食べてくれるなんて、助かるわあ」
とお母さんは喜びました。


しかし、段ボールが増えるたび、ウワサを聞きつけてからか、段ボール星人がどんどん増えている気がします。
10にん、30にん、100にん‥。
数えられないくらい、うじゃうじゃいます。

「段ボールが足りません。
 もっと段ボールはありせんか?」



タロウくんは、お母さんとお父さんと、こっそり集まって話し合いました。

「もう、家のなかには段ボールはないわよ」
お母さんが言いました。

「このままだと、他のものまで食べられそうだ」
お父さんが言いました。

タロウくんも、困りはてました。
これは、段ボール星人を、追い出すしかありません。
何か、いい方法はないかなあ。


タロウくんは、残った段ボールを見て考えました。
大きな段ボールは、あとひとつです。

タロウくんは、ひらめきました。
まず、大きな段ボールの箱のなかに、ちぎれた段ボールの破片を入れて、ふかふかにしました。
それを抱えて、段ボール星人のところへ行きました。
中を見せて、言いました。

「さあ、この中に段ボールがたくさんあるよ。みーんな入って、食べていいよ」


わあい、わあい。
200にんほどの段ボール星人は、勢いよく段ボール箱に流れ込みました。

タロウくんはそれを見て、すぐにフタをしめました。
そして、ガムテープでしっかりとふさぎました。


「このまま遠くへ、捨てに行こう!」

タロウくんは、お母さんお父さんといっしょに、すぐに車に乗り込みました。
近くだと、戻ってくるかもしれません。
タロウくんたちは、山を越え、高速道路も通って、遠くのゴミ捨て場まで運びました。

段ボール置き場に、箱を投げ入れると、いそいで車に乗りました。

なんとか、捨てられた!
タロウくんは、ほっと息をつきました。


「せっかく高速道路に乗って来たんだし、このままおばあちゃん家にでも寄ろうか」

お父さんがそう言って、おばあちゃん家に向かってくれました。
いつもなら夏休みにしか行かない、県外のおばあちゃんのおうち。

着くと、とても喜んでくれました。
おばあちゃんは、ふしぎそうな顔をしました。

「どうして、とつぜんやってきたんだい?」

その質問に、タロウくんは、すこし笑って答えました。

「ないしょ」




そのとき、おばあちゃんの家の中の段ボールが、ガサリと音を立てました。

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