ヤマダHDは動脈と静脈の壁を薄くするのか
皆様こんにちは!
今、もっともDXとサーキュラーエコノミーに熱い男、健一です!
静脈産業のニュースを紹介しています。
今回はヤマダ電機が廃棄物事業者を買収し、さらにリユース家電の強化に乗り出すことについて、取り上げたいと思います。
ヤマダ電機が最初に静脈企業を買収したのは、2012年に東金属というリサイクラーを買収したところから始まりました。
東金属は、群馬県太田市に本社を構え、主に産業廃棄物や金属スクラップなどを扱うリサイクラーです。
保有設備としては、シュレッダー破砕機やギロチンなど金属スクラップ業者としては伝統的な設備を持つ会社です。
2011年5月期の売上高は81億円と静脈産業では中規模な事業者でした。
リーマンショックの影響などもあり、経営が悪化。民事再生手続の中、同じ地元群馬県のヤマダ電機がスポンサー契約後、完全子会社となりました。
この頃からヤマダ電機は、家電製品の販売から回収までの一貫した仕組み作りを始める形となりました。
東金属はヤマダHDの支援を受け、小型家電リサイクルなどの事業を強化し、沖縄県を除く全てのエリアの認定を受けています。
全国に販売店を構えるヤマダ電機から安定的に廃棄される小型家電を受けられるのは、ヤマダ電機ならではの戦略といえます。
今後、大型焼却発電プラントの建設も発表され、総合リサイクル企業へと発展しようとしています。
ヤマダHDの中期戦略とリユース事業
2021年11月にヤマダHDの中期戦略が公表され、「暮らしまるごと」戦略による各事業「デンキ」「住建」「金融」「環境」「その他」の5つの事業を強化する内容でした。
ヤマダ電機では、電化製品に限らず生活に関わるすべての事業を展開することを目標に掲げ、その中の「環境」事業では家電のリユース事業を特に強化すると発表しています。
これは若い世代を中心にメルカリ等のフリマアプリの浸透もあり、リユース品に対する抵抗感がなくなったことが強化する背景となっています。
ヤマダ電機では、顧客から中古家電の買い取りを実施し、洗濯機と冷蔵庫は約12年前までの製品、テレビは10年前まで、エアコンは7年前まで買い取りを可能としています。価格は使用状態によって異なりますが、最低100円で買い取りを実施しています。
本来であれば、上記の家電4品目は家電リサイクル法のもと、リサイクル券を顧客が支払ってリサイクルされるものですが、ヤマダ電機が買い取ることにより、また製品として生まれ変わる形になります。
顧客にとっても、経済的に優位性も出てくるためシェアを伸ばしています。
リユースといっても、ヤマダ電機は買い取った製品の洗浄や修理なども実施しており、この仕組みが非常に優れている点です。
通電チェックや水圧のチェックを行い、洗濯槽や冷蔵庫など汚れやすいものは専用の機械を使用して洗浄し、2年の保証をつけて全国約100店舗あるアウトレット店で販売しています。
現在、年間約18万台のリユース家電を生産し、山口や東北・北海道などでもリユース家電を製造できる工場を計画しています。
2025年には年間30万台のリユース家電の生産を目指すとしています。
まさにこの仕組みは、「売り手よし」「買い手よし」「環境によし」の「三方よし」が成り立っているビジネスモデルと言えるでしょう。
埋め立て処分場を保有するあいずダストセンターの買収
2023年1月にヤマダHDは、福島県会津若松市に本社を構える株式会社あいずダストセンターを買収すると発表しました。
あいずダストセンターは家電などの処分に強い会社ではありませんが、リユースやリサイクルの過程で出る廃棄物の処分やリフォーム事業などで出る廃棄物をグループ一貫体制で対応できるところが強みになってくると思われいます。
大手量販店の優位性を最大限に活かした動静脈の経営といえます。
面白くない"家電メーカー"
上記のように非常に優れたビジネスモデルを展開しているヤマダ電機ですが、このモデルに対して面白くないと思っている人達もいます。
それは家電メーカーです。
家電メーカーは優れた商品を世に出していますが、こういった修理された中古品が世に大きく広まっていくことは、自分らの新しい商品が売れにくくなることになり、非常に警戒感が上がっていると思われます。
特にヤマダ電機のリユース工場ではどのメーカーのどの機種のどの部分が壊れやすいか多くのデーターを保有しており、ヤマダ電機自体がそれらのノウハウを生かして自社製品ブランドの強化を図る可能性もあります。
また、家電リサイクルを行っている工場では、入荷量がヤマダ電機に取られてしまい、今までのように健全な運用ができなくなる可能性も出てきます。
しかし、家電メーカーはヤマダ電機に対して、強く言えない事情もあります。
家電メーカーにとって家電量販店は自社の商品をたくさん売ってくれるお客様であり、彼らの関係性は簡単には切っても切り離せません。
この緊張感の中、家電メーカーからヤマダ電機に対し、何かしらのアクションを起こしてくる可能性があると思われます。
いかがでしょうか。
動脈企業側がその豊富な資金と販売網、ノウハウを生かして、静脈側との垣根を薄くしているいい事例ではないでしょうか。
今後、高度循環型社会の高まりとサーキュラーエコノミーへのシフトが高まり、このような事例が多くなると筆者は想定します。
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