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リチウムイオンバッテリーが生活を脅かす「リチウムイオンバッテリーによるごみ処理施設の火災」

皆様こんにちは!
今、もっともDXとサーキュラーエコノミーに熱い男、健一です!
私は産業廃棄物やリサイクルを中心とした事業会社出身で、この産業にDXをもたらすべく、廃棄物業界向けの配車システム「JOMYAKU」を手がける会社にジョインしました。

皆様の中で、今やリチウムイオンバッテリーを使用していない人の方が少数派ではないでしょうか?
スマートフォン、モバイルバッテリー、Bluetoothイヤホン、電動歯ブラシ、シェーバーなど上げればキリがないほど、多種多様な電化製品に使用されています。
便利なリチウムイオンバッテリーですが、廃棄物を処理する業界では非常に嫌な商品です。
今回は静脈産業を震撼させている、リチウムイオンバッテリーによる火災について書いていきます。

年間約1万件の火災件数 なぜ火災が増えているのか?

ごみ処理の現場では年間9700件もの火災が発生しています。
環境省によりますと、2019年度に全国のごみ処理施設やごみ収集車両などで発生した、ぼやを含む火災は9732件でした。
そのうち4500件以上で実際に火が出たことが確認されています。
これらの火災は「モバイルバッテリー」や「加熱式タバコ」などに使われている「リチウムイオン電池」が可燃ごみやプラスチックの回収にまぎれたことが原因とみられています。
環境省は検証を行い適切な分別の方法などを全国に周知していくとしています。

テレ朝ニュース

記事によれば年間で1万件もの火災がごみ処理場で起こされており、その多くはバッテリーによるものです。
これは私自身、非常に実感のある事項です。
10年前の火災の原因はライターやボンベが原因とするものが多い印象でしたが、最近ではリチウムイオンバッテリー起因という報告をよく聞くようになりました。
近年の小型電子機器機は
・バッテリータイプが増えたこと
・バッテリーが小さくなったこと(製品の小型化)
・埋め込み型で取り外しができないタイプが増えた(分別できない)
などの影響により、他の廃棄物と混じった状態で排出され火災に至ることが増えています。
また、バッテリーが適正に捨てられる場所が少なかったり、入っていることを意識せず捨てていまうことなどがあげられます。

なぜリチウムイオンバッテリーは火災の原因になるのか?

短絡の要因の中でも代表的なものは「外部衝撃」です。電池を落とす、何かが突き刺さる、形状が変わるほど押しつぶす、折り曲げるなど、電池の中の構造を破壊するような衝撃が加わることで、正極(プラス)と負極(マイナス)がつながり、短絡の状態が生じます。最近、ごみ収集車や集積場で発生する火災の多くも、一般ごみに混入したリチウムイオン電池が圧縮されることによるものだと考えられています。

リチウムイオン電池で発熱や発火が起きる要因を整理しよう

ごみを回収する際は、パッカー車と言われる圧縮をする車両が使われます。その圧縮をかけた際にリチウムイオンバッテリーが破損し、ショートを起こして火災に発展します。
また、中間処理場やリサイクル施設では、保管時のシュートや破砕機にかけられた際に破裂し、ベルトコンベアに乗った廃棄物に引火して火災になるケースも散見されます。

日本容器包装リサイクル協会参照

このまま火災が増えれば市民生活に影響が出る可能性も

火災による影響は甚大です。
金銭的な話で言えば、パッカー車1台の値段は約1,000万円もします。1台火災で稼働できなくなればそれだけ廃棄物を回収することができなくなります。
自治体も民間企業も余裕のある車両管理をしているわけではないので、ボヤであっても非常に頭の痛い問題です。
そして尚更大きな影響が出てしまうのが、中間処理工場の火災です。
埼玉県上尾市では、2021年一般廃棄物(粗大ごみ)を処理する西貝塚環境センターがリチウムイオンバッテリー火災により、稼働が停止する事態に追い込まれました。

この火災によって、粗大ごみの受け入れを一時停止にする事態となり、積み上がった粗大ごみは民間企業の処理施設で処理されることとなりました。
この復旧に約半年、施設の修繕費用は約4億8千万円にもなり、これは全て税金によって賄われています。
こういった事態は全国で多発しています。今年に入って、宇都宮市のごみ焼却施設「クリーンパーク茂原」で大規模な火災が発生し、ごみ処理能力の7割が消失するという非常事態が起きています。

もはや分別の徹底だけでは防げない

環境省や各自治体は分別方法の見直しや市民への呼びかけといった行動をしていますが、もはやこれだけでは防ぐことは万全ではないでしょう。
静脈産業にいる人間からすると、火災を引き起こすバッテリーを製造するメーカー全てに責任があると感じています。
メーカーは火災を引き起こす「危険な製品」を販売しているのと同義であり、火災が起こらないバッテリーや取り外しが容易な製品の開発を早急にすべきです。
また、環境省や経産省は静脈産業の設備メーカーに対して、バッテリーの検知システムと安全に処理できる設備に対して必要な研究費用を提供していく必要があります。
このまま火災が多発すれば、重要なインフラである廃棄物処理が行われなくなり、町中にごみが溢れる景色が訪れてしまうかもしれません。

とはいえ、現状ではリチウムイオンバッテリーなどが入った製品を捨てる際は、自治体への確認と量販店などで回収をしていないか確認をし、適切なルートに乗せることを心がけていただきたいと思います。

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