見出し画像

2 「都道府県」という立場 ~実体のない幽霊のような存在とは?~②市町村の職員とは。

先頭のページに戻る。

 毎回、言いますが、これはフィクションです。

 前回は、国家公務員について、お話をしましたが、次に、市町村のお話をします。
 私自身は、市町村で働いたことはないです。七側県で仕事をしている中で、市町村の方ともお話したり、市町村の人のお仕事の仕方を見てきて、感じるところを書いていきます。

 (1) 住民に悲劇的に近い
 市町村のお仕事は、まさに、住民の皆様に直結するお仕事です。「公の仕事で知っているものは?」という問いの答えは、その9割が市町村の仕事だと思います。
 また、もし、公の仕事で何か不利益を受けたと思ったら、とりあえず相談するというか、文句を言うところは、間違いなく、市町村でしょう。
 一口に市町村といっても、神奈川県にある横浜市の人口は約370万人で、東京都の青ヶ島村の人口は約170人です。前にも言いましたが、市町村の仕事は、国が法律などで決めています。当然、横浜市は政令指定都市なので、普通の市町村よりは行う仕事は多いのですが、市町村として、ベーシックにする仕事は、基本的には、370万人の横浜市でも170人の青ヶ島村も、一緒です。
 これは、ある意味、とんでもないことだと思いませんか? 市役所・役場の人数を見てみましょう。青ヶ島村は、23人らしいです。横浜市は、44,111人らしいです。両方とも、総合計画、地域総合戦略、移住促進、地球温暖化防止、男女共同参画、ごみ処理、介護保険、国民健康保険、選挙、産業振興、観光、子育て支援、議会の運営、水道、下水道、住民票の管理、印鑑証明などの仕事をします。横浜市は、大所帯なので、どうにでもなるとして、青ヶ島の23人では、気の遠くなるほど大変なんだろうなって思います。回していくのに精一杯で、専門性もくそもないなぁと思います。
 このように規模が小さいければ小さいほど、一行政分野ごとの仕事の量は減りますが、一人当たりが受け持つ行政分野の数は増えます。広く薄く仕事をする。これは、本当に大変なことです。専門性なんて到底育たない。
 一方で、横浜市は一つの行政分野の仕事の量も多く、職員数も多いので、専門的に仕事に従事する職員を育てやすい。どっちがいいのかと思いますが、やはり規模は大きいに越したことはありません。青ヶ島は極端な例として、どこの市町村も無造作に職員数を増やせませんが、国が法律でどんどん市町村の仕事を作り出していくので、大変なことになっています。
 そして、小規模だともっと大変なことは、住民に大変近くなるということです。職員の方は、大体地元の方が多いので、職員の方が赤ちゃんで”おしめ”をしていたころから、住民の方は、その職員を知っているという構造になります。つまり、自分より、同じ空間で長い時間を過ごしてきた大先輩が、仕事の対象になるのです。これって、精神的につらいかもしれません。自分を育ててくれた学校の先生を、自分が大人になったので、今度は、生活指導していくようなものです。
 そして、外部からその市町村に就職する方は、そういった構造にある役所と住民の関係性の中に、何の武器もなく突撃していくということになります。住民の方は、役場の職員に大変親しそうに話す。そして、それは近所のおじさん、おばさんで、赤ちゃんの頃からその職員のことを見守ってきた方で、地域のこともその職員の方より、ずっとずっとして知っている。
 似たような例ですが、さすらいの地方公務員は、人口20万人程度の地方都市に住んでいるのですが、市役所は、中学、高校の同級生だらけです。下手に市役所の世話になろうものなら、同級生中に、自分の個人情報ばらまきまくるのも同じです。
 こうした関係性の中で、住民のプライバシーにも立ち入る仕事をしていくのは、大変だろうなと思います。これが、小規模な市町村に特徴的な悲劇です。
 また、だいぶ脱線しましたが、全体的なことに話を戻すと、公の仕事で、それが、県の仕事、国の仕事であろうが、まずは、市町村に苦情が寄せられるということです。そうした意味でも、住民に悲劇的に近いことから起こっている負担です。

(2)  現場なので、創意工夫の見せどころ
 国が制度設計、地方公共団体が実行という構造は度々お話をしていますが、都道府県ではなく、市町村が究極の実行の現場です。このため、現場で起きる様々なことを知恵と工夫で乗り越えていかなければなりません。いくら制度を設計しているからといって、全てが、がちがちに決まっているわけではありません。そこは現場ならではの工夫の余地があるものです。
 そうしたこから、知恵を一番使えるのが市町村だと思います。上流のことを考える国は「理屈」の世界、つまり理想的な世界観の中で、他の制度の整合などを気にして、本当にきれいに制度を設計してきます。
 しかし、国は、現場のこと、現実に国民の間で起こっていることは全くわかりません。そこで、現場では、そのまま適用できないような、へんてこな制度を設計してくることもあります。いくらへんてこだからと言って、法律や国の通知などを無視して、行政を行っていくわけにはいきません。そこで、現実との折り合いをつけていくのは、市町村の職員の方々の創意工夫です。
 市町村は、知恵の発揮どころ、そうした意味では、少しはやりがいのあるところかもしれません。

(3) まとめ
 
非常に抽象的な議論で、あまり参考にならないかもしれませんが、市町村の職員は、住民に悲劇的に近いから大変だけど、現場に近い分だけ知恵の絞りがいがあって、少しやりがいがあるということになります。
 次は、さすらいの甲無韻が奉職している都道府県のお話です。都道府県は、その構造から本当に悲劇的な状況になっています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?