見出し画像

3 七側県の特殊な事情 ~政令指定都市と県の関係~ ①権限と税源

先頭の記事に戻る。

しつこいようで恐縮ですが、これは、フィクションです。

(1) 都道府県と政令指定都市をめぐる課題
①政令指定都市たらしめているもの
 政令指定都市を、政令指定都市たらしめているのは、主に「事務配分の特例」です。
 「事務配分の特例」とは、規模が大きな市は、都道府県がやっている広域的な仕事、すなわち、広域のエリア出ないと一定の行政需要が生まれない仕事を、都道府県に代わって特別にやっていいですよ、という制度です。
 これは、地方自治法で「大都市制度」と呼ばれている制度のひとつで、これ以外に「中核市」という政令指定都市と、市の中間の制度もあります。
 平成12年に地方自治法が改正されて「国と地方は対等」という概念が導入されましたが、この改正の際に、「中核市」と「市」の中間の制度として、「特例市」という制度も創設されました。しかし、事務処理の配分の特例として特例市が行う都道府県の事務があまりに少なかったため、その後、制度は廃止されました。当時、特例市に移行した市は、いまでも「施行時特例市」という呼ばれ方をします。
 ちなみに、市と町村では、行う仕事が若干異なり、その中で大きなものは、福祉事務所の事務です。福祉事務所のわかりやすい仕事と言えば生活保護の仕事です。生活保護関係の仕事は、市では市が、町村では「県」が行っています。
 さて、政令指定都市の事務がどの程度巨大かというと、政令指定都市域で都道府県が行っている仕事は、「警察」、「県立高校」、「治水」、「急傾斜地の保護」、一部の「農業振興」ぐらいです(ほかにもあったらすみません)。つまり、実質的に都道府県とほぼ同格の仕事をしています。実は、政令指定都市域に通っている「県道」は、政令指定都市が管理しています。「県道」なのに、「都道府県」が管理しているわけではありません。
 また「県立高校」についても、「市立高校」を持っている政令指定都市もあります。当たり前ですが、これに加えて、市町村の仕事をしているので、実は、都道府県よりも、多種多様な仕事をしています。
 このように、都道府県は、政令指定都市域では、一部の行政分野しか行っていない不完全な存在で、政令指定都市にとっては、都道府県という存在が、あまり意味がなく、また、必要がないのです。都道府県、市町村を通じて地方公共団体が行うべき仕事のほぼすべてを政令指定都市は行っています。
 こうしたことから、「特別市」制度という発想が出てきます。特別市制度とは、政令指定都市に、都道府県が行っている事務をすべて移して、政令指定都市域では、政令指定都市が全て行うという制度です。中途半端な仕事しかしない邪魔な都道府県を排除して、政令指定都市は政令指定都市の好きなように仕事をしたいということです。

 少し、脱線しますが、こうした制度は、地方分権の立場では、結構似たような発想が過去にも出ていて、「道州制」もその一つです。道州とは、いくつかの都道府県の範囲を、一つの道州にして、国の地方支分局(関東地方整備局とか、関東経済産業局とか)が行っている事務を道州に移すという構想です。
 しかし、こうした統治機構の間の権限争いは、住民から見ると、全く興味をそそらないのです。「誰が何をやろうが、一番効率的に一番いいサービスを提供してくれればいい。」ということに尽きるのです。そんな統治機構間の争いは勝手にやってもらって、とにかく一番いいやり方にしてもらえればいいというのが実感ではないでしょうか。ですから、こうした議論は、業界人にしか受けをとれません。

②政令指定都市がドル箱という現実
 さて、話をもとに戻しますが、「特別市」制度については、もう一つの大きな、というか、これが”全て”といっていいくらいの争いがあります。それが、税源問題です。政令指定都市が、都道府県の事務を全部行うということは、都道府県は政令指定都市のエリアで仕事をしなくなるわけです。ですので、それに見合う税収も都道府県には必要ないはず!その税収を政令指定都市がもらうべきというのが、政令指定都市側の議論です。
 神奈川県の試算では、神奈川県の税収のうち約6割が政令指定都市からの税収なので、特別市制度ができると、この税収が神奈川県からなくなります。逆に、政令指定都市は、この税収を手に入れて、都道府県の変な関与を受けずに、自由にやっていかれるということです。
詳しくは、以下のページをご覧ください。

 こうした税収構造があるため、政令指定都市を抱える都道府県では、大変な事態が起こっている。つまり、”ひも”状態になっているということです。
 その内容を次の項目で見ていきましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?