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6 会社自体が社長を選べない ~経営方針の転換が過激?~②

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 何回も言って、恐縮ですが、これはフィクションです。

(2) 政策(経営方針?)って何なのか。

 地方公共団体の政策(と呼んでいるものがあれば)は、選挙で、首長が交代すると、これまでの首長が推進していた政策が、一瞬にして影をひそめて、新たなキーワードを持った政策に置き換わる。そんなことが起きます。
 何度も言いますが、実際は、地方公共団体のやっていることは、誰が首長になっても、ほぼ変わらないので、実質的な影響はありません
 ですが、行政に詳しくない方が、立候補され当選する時に、とてもできないようなこと、あるいはすでにやっていることを、公約に掲げてくる。前回お話しましたが、目立つことが最優先です。実現可能性などはあまり考えません
 選挙公約は、目立つもの勝ちと言う方向で形成されていくのですが、その中で、訴求力のあるキーワードが必要となってきます。場合によっては、人柄を表す言葉がキーワードかもしれませんし、政策を表す言葉がそれに当たるのかもしれません。こうして、キーワードが候補者を体現する言葉として、重要な意味を持つ言葉になります。
 例えば、七側県では、それまでの大命題、メインのキーワードが、地方分権でした。ちょうど三位一体改革という、権限移譲、国家補助負担金の廃止、地方交付税改革の三つを一緒にやって、地方自治を強化しようという動きが盛んな頃で、道州制も話題に登っていました。全国知事会が国へのお願い団体から、表面上は、国と戦う団体になろうとしていた時です。ちなみに、全国知事会は、地方自治法にも位置付けられた団体で、この他、全国市長会、全国町村会と、都道府県、市、町村、それぞれの全国議長会と合わせて、地方六団体といい、これらの団体は、地方自治法により、国が新しい制度を作る際に意見徴収したり、建議をしたりできます。
 話は少し脱線しましたが、三位一体改革は、前にもお話しした通り、結局、制度を作っている国には勝てず(当たり前の話ですが、)、国庫補助負担金を潰した分、一般財源化という名目で、交付税措置に切り替わって、総務省が焼け太りしただけに終わりました。
 そんな時代では、七側県では、地方分権を所管する課が花形でした。(ここでも繰り返しておきますが、)それ以外の98%ぐらいの事務は、誰がなっても変わらないので、粛々と淡々と処理をされていました。
 ところが、ある日突然、その知事が辞めてしまいます。これを受けて、担ぎ出されたのが、”桃色”知事です。”桃色”知事は、地熱エネルギーの普及とか、交通安全対策を掲げて登場します。交通安全対策では、事故が起きそうな状態を「未事故」と定義しました。この「未事故」の状態の時に、どんどん交通安全対策をしましょうと、「未事故の改善」というスローガンを掲げて、当選しました。
 それまで、地方分権で国と戦うモードはどこへやら。今度は、一躍、地熱エネルギーと「未事故の改善」を担っている部署が脚光を浴びるようになりました。さらには、新しい交通安全対策を生み出して日本を、そして世界をリードしていくために、「トラフィックセイフティー・ニューフロンティア」という概念も登場し、そのための部署も新設され、国際的に交通事故に対応するため、IPOと協力して、国際会議を開催したり、新たに職員を雇って、その職員をIPOに派遣したりしました。笑える後日談としては、IPOに派遣された職員は、県からの派遣期間が終わったら、県をやめてIPOに就職してしまいました。(一体何のために派遣してたの?)
 またまた話はもとに戻りますが、人間とは面白いもので、同じところにはあまり目が行かないで、違いに気がつくと、違いばかりに目がいくものです。間違い探しのクイズで、例えば、5箇所間違えを見つけましょうというものがあります。当然違うところがあるのですが、その余の95%以上は、同じものです。一旦、AがBになっていると気がつくと、不思議と違いが目立って、違うものに見えてきます。
 首長の公約とは、そういったもので、住民の方にとっては、ほんの数パーセントの違いの部分で差別化を図っている。ドラスティックに変わるように見える政策も、実は、比べてみるとそんなには変わらないというのが実態です。
 そして、違いが強調されればされるほど、実際の政策の実施の中でも、その違いを際立たせようとします
 例えば、七側県の例では、「交通安全対策の推進」を、「未事故の改善」と言い換えるようになります。なぜなら、”桃色”知事の公約だからです。七側県では、最も重要なキーワードとして、マストなワードになります。”桃色”知事は、一部の政党を除きほぼ全ての政党から推薦を受け、オール与党大勢で当選しました。そうした経緯を考えると、”桃色”知事の公約、お考えは絶対です。
 以前、国の官僚になりたいという学生が減ってきたのは、内閣官房が人事にも関与して、与党的に望ましい人間しか、各省庁の局長以上にしないということになり、結局、官僚が政治家や政党の小間使になって、それまで日本を背負ってきた誇りと気概が崩壊したためだと思うと書きました。
 同じことが、都道府県の人事にも現れてきます。政治主導の人事になるのです。特に、オール与党体制で生まれた知事は、絶大な権力を手にします。
 このため、流石に「交通安全対策基本法」を、「未事故の改善基本法」と言おうとまではなりませんが、「ある県交通安全対策協議会」を「ある県未事故の改善協議会」に変えようと言った意見も出てきます。これまでは何をする協議会かすぐに想像がついたのに、変わった後の名称では何をする協議会なのか、さっぱりわからない。こんなバカバカしいこと、しますか?
 それが、するんですよ。それこそ、中身は全く変わらないのに、看板掛け替えて、如何にも「未事故の改善」をやってますというような、”桃色”知事にアピールしていくような、本当にどうしょうもないことが起きる。逆に変えないで、いつまでも「交通安全対策」などと言っていると、知事の覚えがめでたくなくなり、その人は、飛ばされてしまいます。
 つまり、何の意味もないから、そのまま使っておこうという人がいても、結局、知事に排除されるので、知事を忖度する人が「未事故の改善」と変えてしまいます。
 こうしたことが起こる結果、どんなに意味のない、馬鹿なことだと思っても、結局、知事のことを忖度して、知事に盲従していくしかない。というより、盲従していく人が、幹部に残っていく。
 こんな体制で、きちんと仕事が回っていくのか、ということについては、大変、心配ですが、これも地方公共団体の最大のメリットであり、個人的には、最大のデメリットだと思っているのですが、潰れない、倒産しない、ということが、効いてきます
 これについては、次回、詳しくお話しします。

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