第46話 サンタ・ネネと死神の再会 ３
砂浜でオレンジと話し込んでいた月のルーナは、頭の上でくつろいでいる白いハトをつかむと、大空へと放しました。
「ドールの街で悪霊退治はやるけど、どうやってネネちゃんと知り合いになるかの方が問題なんだよな」
「あれ？さっき自信満々で、私に不可能なんてな～い！とか言ってたよね」
「そんなこと言った覚えはない」
「え？」
ルーナは続けて、オレンジに話しかけます。
「オレンジが描く絵本あったじゃん。呪いのキノコとか出してたやつ」
「それが何？」
「新しい絵本で、私とネネちゃんが出会ってお友達になる話を書いてよ」
「いや、あの娘すぐに絵本の存在を見破ってくるから、ダメだと思う」
「そういえば、燃やされてたっけ」
「うん」
「思うんだけどさ、絵本に認識阻害か不可視の呪文を追記できないのか？」
「あーーーー！それだ！！」
ネネにオレンジの絵本が見つからないようにするには、そもそも絵本そのものを見えなくすればいいということでした。
さっそく道化師のオレンジは白紙の絵本を取り出すと、ペンで何やら描き始めます。
しかしその時、全く予期していなかったことが目の前で起こったのです。
オレンジは驚きすぎて、描きかけの絵本を破いてしまいました。
それは近くにある森の中から、突然現れました。
現れたというよりも、いきなり目の前に吹っ飛んできたのです。
それは見覚えのある昔馴染みの神の姿でした。
「死神じゃねーか！こんなところで何やってんだよ」
死神は肩に着いた砂を手で掃いながら、挨拶してきます。
「これはこれはお嬢様方。今ちょっと立て込んでおりますので、また後程」
死神は軽く会釈だけすると、シルクハットを片手で押さえながら後方へ大きくジャンプして遠ざかりました。
そして次に目の前をすごいスピードで走り抜けていったのは、サンタ・ネネだったのです。
ネネは砂浜をスライディングして、死神の足を狙います。
しかし、ひょいっと避けられてしまいました。
間髪入れずに裏拳を叩き込み、連続でパンチを放ちました。
しかし死神の手で、ほとんどが防がれてしまっています。
「もしかして、死神とネネちゃん戦ってんのか」
「そうみたいだけど、いったいなんで？」
「それこっちが聞きたいわ。しかし、あの死神と互角とはすごいな」
「ネネちゃんの放出してるエネルギー見えてる？強いと思ったら急に弱くなったりで、とにかくムラがすごいね」
「強いエネルギーを乗せたパンチの時は、死神に当たってるよな」
「何か、両者ともに殺意は見えないなぁ」
「これってもしかして、模擬戦じゃないのか？」
「そうかも。丁度いいんじゃない？ ネネちゃんの実力が見れるよ」
原初神の月のルーナと道化師のオレンジは、死神とネネよりも強い力を持っています。
もしこれが模擬戦ではなく実戦で、最悪の事態になりそうなら割って入ればいいだけの話でした。
しかしここでルーナとオレンジは、大事なことを忘れています。
果たしてネネは、この原初神より弱いのでしょうか？
オレンジは絵本を燃やされ、ルーナは遠隔視でぶっ飛ばされてるのですが。
さて、ネネと死神の手合わせは続いています。
一進一退の攻防戦が続いていたものの、死神はネネが砂に足を取られてよろけた瞬間を見逃さず、彼女の腕をつかんで投げ飛ばしました。
ルーナとオレンジの目の前で、砂の中に頭から突っ込んだネネは、起き上がってから口に入った砂をペッペッと吐きだしています。
そして、いきなり２神の方を向いて声をかけてきました。
「えっと、お姉ちゃん達、ここ危ないから遠くに逃げたほうがいいよ～」
何とも気の抜けたセリフを残して、ネネは死神の方へ走っていきました。
しかし何を思ったのか、また戻ってきます。
「えっと、よく考えたらすぐに逃げれるわけないよね。このお守りあげるから、しっかり抱っこしておいてね～」
それだけ言うと、また死神の方へ走って行きました。
「うわっ、オレンジ！これだよ、これ。これが私がすごく欲しかったネネちゃんのプレゼント」
「よかったね。でもいいのかなぁ、私までもらっちゃったんだけど」
「いらないなら、くれ」
「嫌だよ、ルーナ姉ちゃんも同じものをもらってるじゃない」
月のルーナは本当にうれしそうで、しっかりぬいぐるみを両手で抱きかかえて、頬でスリスリしていました。
オレンジも同じように抱きかかえていましたが、ぬいぐるみからは不思議なバニラの香りがしたそうです。
つづく
【あとがき】
この小説の題名は「赤と黒のサンタ」です
サンタ・ネネのプレゼント「しろくまのヌイグルミ」は、悪夢を退け、魔を祓う結界を張ってくれる神具です
ちなみにネネはこの時会ったのが、道化師のオレンジだと気づかなかったのですが、それは前に会った時に彼女は派手な「ピエロの化粧」をしていて、さらに「ピエロの衣装」を着ていたからでした
化粧を落とした今のオレンジは、ほとんど別人に見えます
全てAI生成画像です。「leonardo.Ai」さんを利用させて頂いてます
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