千都譲司

千都譲司

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シェアハウス・ロック2405初旬投稿分

明六社、『明六雑誌』0501  明六社、『明六雑誌』は、近代日本語の成立に大きく寄与している。もちろん、近代日本そのものの成立にも、大きな役割を果たしている。  アメリカから帰国した森有礼が、明治6年7月(1873年)に、欧米で見聞した「学会」を日本で創立しようと考え、まず「帝都下の名家」を召集するために西村茂樹に相談し、呼びかけを開始した。  福沢諭吉を会長に推すが福澤は固辞、森が初代会長に就任した。最初の定員は10名。西周、津田真道、中村正直、加藤弘之、箕作秋坪、杉亨二

    • シェアハウス・ロック0520

      うなる話  うなる話といっても、聞いたり読んだりして、聞き手/読み手がうなる話ではない。つまり、今回は、それほどの話ではない。ただ単に、演奏中うなる音楽家の話である。  それじゃ、都はるみのことだろうかとお思いかもしれないが、あの人はうなるのも歌のうちだから、違う。うなる必要もないのに、なぜかうなってしまうミュージシャンの話である。  うなるミュージシャンはけっこういる。代表例は、キース・ジャレットだ。この人はけっこううるさい。しかも、ヘンな声でうなる。ジャズ系では、他に有

      • シェアハウス・ロック0519

        映画『キャデラック・レコード』 『キャデラック・レコード』は2008年公開のアメリカ映画である。チェス・レコードの興亡を描いた作品で、主人公はエタ・ジェームスだ。脇役としてマディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフが出てくる。チャック・ベリーはチョイ役である。ああ、これは私の目からは、ということね。  冒頭に、ジョン&アラン・ロマックス父子が、南部の農場に来て、ブルースだか、労働歌だかをテープを回して録音するシーンが出てくる。これだけで、もう私は完全にいかれてしまった。ああ、も

        • シェアハウス・ロック0518

          突然、電話で。  まだ母親の家にいたころの話だ。  電話が鳴った。出ると、 「もしもし、千都さんですか?」 「そうですが」 「浅川マキです」  なんだ、なんだ。ビックリして受話器を落とすところだった。浅川マキは『夜が明けたら』でデビューし、それが爆発的に売れ、アングラの女王などと呼ばれるようになっていた。つまり、「女王」から直々に電話をいただいたのである。これでビックリしなかったら、ビックリするところなどどこにもないだろう。 「千都さん、サム・クックがビリー・ホリディの曲ば

        シェアハウス・ロック2405初旬投稿分

          シェアハウス・ロック0517

          5枚目以降はグチャグチャ  買ったレコードのうち3枚目、4枚目まではかなり細かなところまで憶えているが、そこから先はグチャグチャである。グチャグチャの原因はいくつかある。一番大きな原因は、お小遣いが値上げされたことである(たぶん)。よって、買える枚数が急に増えた。  もうひとつは、友だち連中で洋楽を聴くやつらがボチボチ現れ始め、それからはレコードを借りたり、貸したりが始まったことによる。買って聴いたのか、借りて聴いたのかがわからなくなったのである。  さらに、テープレコーダ

          シェアハウス・ロック0517

          シェアハウス・ロック0516

          ティン・パン・アレー  ティン・パン・アレー(Tin Pan Alley)は、ニューヨーク市マンハッタンの28丁目とブロードウェイ6番街に挟まれた一角の呼称。この場所に蝟集する音楽関係会社(音楽出版社や楽譜出版社、演奏者のエージェント等々)を指すが、そこで扱われる商業主義的な音楽そのものを指すこともある。  ブロードウェイは、ミュージカルの代名詞でもあった。1970年代には、大手に対抗するオフ・ブロードウェイ、オフオフ・ブロードウェイまで生まれ、この状況は日本の小劇場運動と

          シェアハウス・ロック0516

          シェアハウス・ロック0515

          【Live】佃煮2種  久々の料理ネタ。  かぶの葉っぱは大根のそれと比べて、だいぶやわらかい。我がシェアハウスでは、炒めてラーメンに入れていた。かぶの葉っぱは、ほぼそうやって消費していたのである。  あるときおばさんが謀反気を起こし、炒めて佃煮様にしたらどうかと試した。そのときは、醤油、ゴマ油、みりんで味をつけたという。味が決まらないので、階下からSOSがかかった。「へいへい」。  私は階下に降り、まず、「不作分」の味見をし、少々のオイスターソース、ナンプラー、極々微量の

          シェアハウス・ロック0515

          シェアハウス・ロック0514

          ロゴ84  私は、コンピュータ関係書籍、雑誌の編集を長いことやっていた。この仕事を始めたのは30代に入るちょっと前だ。このころ、コンピュータ関連は極端な人手不足で、「学歴問わず」「前科問わず」「人間であればOK」みたいなところがあった。で、そういう仕事だったら私でも就けたわけである。  MIT教授のシーモア・パパートが開発したロゴというコンピュータ言語があった。この話もいずれゆっくりしたいのだが、今回は「初めて買ったレコード」シリーズなので、先を急ぐ。  表題のロゴ84は、

          シェアハウス・ロック0514

          シェアハウス・ロック0513

          3枚目はレイ・チャールズ  3枚目に買ったレコードはレイ・チャールズの『ジョージア・オン・マイ・マインド』。この歌も、ラジオで知った。このころは、テレビはもう我が家にあったはずだが、ラジオばっかり聞いていた。テレビは、音楽もほとんど歌謡曲か、洋物でも日本人の歌手によるものだったので、どうしても聞くのはラジオになる。 『ビルボードトップ20』とか、今週のベスト10とか、そういった番組で『ジョージア・オン・マイ・マインド』を知ったのである。そういうつくりの番組であるから、ティン

          シェアハウス・ロック0513

          シェアハウス・ロック0512

          2枚目はサム・クック  四谷のライブバー461(夫)とは、音楽の話をよくする。そもそも461は、エリック・クラプトンのアルバム『461 Ocean Boulevard』から付けたものである。ご本人に確かめてはいないが、これは確かめるまでもない。  なんでこんなマクラを振ったかと言えば、初めて買ったレコードの話を461(夫)としていて、「2枚目はサム・クック」と言ったら、「1枚目はわかるが、2枚目はヘン」と返ってきたからだ。  でも、本当はヘンでもなんでもない。当時のラジオの

          シェアハウス・ロック0512

          シェアハウス・ロック0511

          ハリー・ベラフォンテ1960年in Japanを発見  前述のカーネギーホール・コンサートは、1959年のことである。その翌年、ハリー・ベラフォンテが来日した。  1960年の日本公演は2日間だったはずで、その公演を見た三島由紀夫は、ベラフォンテを「褐色のアポロ」と言っている。さすがうまいこと言うもんだね。新聞に掲載されたコンサート評中の言葉なのだろうが、私は、当然リアルタイムで読んでいるわけではなく、中村とうようさんの、ベラフォンテのレコードのライナーノーツのどれかで知っ

          シェアハウス・ロック0511

          シェアハウス・ロック2404下旬投稿分

          世界0421 「世界」は、福澤諭吉が明治2年刊の『西洋事情』において、worldの訳語として用いたのを嚆矢とする。ウソウソ、口から出まかせです。でも、本当にそうだったとしても、それは単なるマグレ当たりだ。  世界は明治以降の言葉と思われるかもしれないが、実は江戸時代から使われている。私は、渡辺保さんの『東洲斎写楽』でそのことを知った。  話がちょっと横道にそれるが、あるキーワードが本のタイトルにあると、私は必ず読むようにしている。「写楽」も、そのキーワードのひとつである。

          シェアハウス・ロック2404下旬投稿分

          シェアハウス・ロック2404中旬投稿分

          明治時代の言語の断層0411  近代日本語は明治期にそのおおかたが整えられたと思う。だが、その明治期内でも、相当の変遷がある。それを知ったのも、自己流でコツコツ勉強をした過程で、である。  福澤諭吉は明治2年刊の『西洋事情』に、  譬へば訳書中に往々自由(liberty)通義(right)の字を用ひたること多しと雖ども と記している。ここで、rightを「通義」としている。  だが『学問のすゝめ』第二編(明治6年)には、  地頭と百姓とは有様を異にすれどもその権理を異

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          【Live】忙しい週の後半0401  忙しいときは、忙しいことが重なる。これはどういうことなのだろう。  先週前半は本当に忙しかった。後半も、金曜日はライブを聴きに行き、土曜日は飲み会である。なにもない週(こっちのほうが、実は多い)は本当になにもない。散歩に出るくらいしか外出しない週すらあるくらいだ。  金曜日は、モリさんというピアニストのソロライブだった。  ここから先は、私の言っていることのわかる人はたぶん相当少ないに違いない。もし、「わかった」と言う人がいたら申し出て

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          シェアハウス・ロック2403下旬投稿分

          絶対と相対のあわいに0321  伊藤亜紗さんは、子どものころにピアノを習っていたという。今回のお話は、その関連である。  たぶん「体感」という語/概念を導きたかったのだろう、伊藤さんは楽譜に書かれる速度指定に触れている。  速度指定には、2種類ある。  ひとつは、♩⁼60などという表記で、これは「絶対速度」と言える。1分間に四分音符が60個という意味である。もうひとつは、アンダンテ、アレグロなどという「相対速度」指定である。いずれも譜面の一番先に書かれる。  余談だが、私が

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          シェアハウス・ロック2403中旬投稿分

          改めて『ぼけと利他』(伊藤亜紗/村瀬孝生)0311 『ぼけと利他』を読みながら、この本のわかりにくさを解決するヒントになるかもしれないと思った箇所には付箋をつけた。16箇所に付箋がついた。こんなに付箋をつけた本は初めてだ。  つまり、今回から、中身に入るわけである。  言い忘れるところだった。以下、数字は付箋をつけた番号で、よって数字そのものには特に意味はない。それに続く文章は『ぼけと利他』から抜き出したもの、最後のカッコ内はその文章を書いた人のお名前である。   1 介助

          シェアハウス・ロック2403中旬投稿分