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ナマケモノ物語 其の拾 「青天の霹靂。的中した嫌な予感」

前回から1ヶ月半。其の玖の続きを、こんなにも早く記すことになるとは・・・。

前回は、お引越しした立川店で行方不明となり、怪我をしてしまい、元いた印西店に戻ったネールくんでした。
その後、怪我は順調に良くなり、1ヶ月くらいで傷跡も目立たなくなり、ほとんど良くなりました。

実は、今年の7月頃に、大阪にMoff animal cafeがオープンするという話を聞いていました。印西店には、ナマケモノが4頭いて、其の中でも古参のフォフォくんは、テレビにも出演していたり、抱っこ体験もできる唯一のナマケモノなので、手放すことはないと聞いていました。

抱っこ体験中のフォフォくん

だから、立川店がオープンした際には、次に慣れているネールくんが行くことになったのです。

会える距離だったから、まだ良かったのですが、「猫の王様」にいた時から引越しを余儀なくされ、やっと落ち着けるばと友達ができたネールくんなので、個人的には立川でもお引越しするのは歓迎できませんでした。できれば印西にいて欲しかった。ですが、決めるのは私ではなく、株式会社Moffさんです。ネールくんを守るためにも、Youtubeで「ナマちゃんネール」を続けていました。しかし、力足らずで立川行きを止めることはできませんでした。

怪我をしたとはいえ、約2ヶ月で印西店に戻るとは思ってもいませんでしたが、友達もいて慣れ親しんだ印西店なら、ネールくんにとって一番良かったと思っていました。

拭えない嫌な予感

ネールくんが印西に戻ってきてから、2度会いに行きました。怪我は順調に回復していましたが、気になることが一つありました。印西店は、4ナマ体制になっていたとお伝えしましたが、他のふたりが、まだまだ慣らしが足りないということです。

ピレーちゃん
ブランちゃん

11月8日には、大阪に新店舗がオープンする。印西店から、ナマケモノを連れて行くのは決定事項でした。問題は、誰が行くのかです。述べた通り、フォフォくんが行かないのは確定。残るは、3ナマの内の誰かです。
ネールくんは、怪我したり出戻って2ヶ月も経っていないので、さすがにないだろうと思っていましたが、何せ他のふたりが心許ない。
極め付けとなったのは、10月頭にお邪魔した際、他店の店長になった、仲の良かった社員さんと話していた時のことです。またネールくんを連れ出さないように、釘を刺したつもりで、「ネールくんが怪我をしたり何度もお引越しして、負担が大きいので、まさか大阪には行かないですよね?」と伝えました。そこで言われたのが

「ネールも結構引越し慣れしてる感じがあって、ケロッとしてるんですよねー」

とのこと。
正直、耳を疑いました。そりゃ、一年以上暮らした元いた場所に戻るなら、ケロッとはしてるかもしれません。ですが、ネールくんが印西店に来て間もない頃。私が会いに行った時、おそらくあまり慣れてはおらず、ほとんど寝て過ごしていました。その次に行った時にはすっかり慣れていて、元気に動いて、特徴的な仕草を見せてくれたから、やっとネールくんが「猫の王様」にいたナマちゃんだったと気付けたのですから。

猫の王様時代
Moff印西店にて

立川にお引越しした時も、大体お引越ししてから1ヶ月くらいしてから様子を見に行きました。やはり、動いていない時間が長く、まだ慣れてなさそうに感じたし、動きづらそうにも見えました。

Moff立川立飛店

ナマケモノが何を考えているかはわかりませんが、動物である以上、居心地の良い場所がいいはずです。人間とも違うのですから、引越し慣れしているとも思えません。
言い方は悪いかもしれませんが、会社の都合で転勤することとなり、怪我をしたとはいえ、また戻ることになった。ただでさえあまり動かないナマケモノですから、負担はとても大きいだろうと思います。

少なくとも、動物ファーストとはいえないでしょう。新店舗オープンに合わせているということは、会社の方針が優先されているということです。まぁ、会社である以上当然のことなのでしょう。

話を戻しますが、「引越し慣れしてる」と、店長レベルの人がそう言うということは、やはりネールくんも大阪行きの候補に入っているんだろうと感じました。他の飼育員さんとも話したら、「フォフォとネールがいればいいんですけどね~」と言ってくれてはいたので、行かないよう祈るばかりでした。

願いは届かず…

10月中に、どうなるかを確認しようと、いつMoffに行くかを検討していました。そんな中、気になるツイートがありました。

「よもさく大阪行っちゃうの!?」

というものでした。さくらとよもぎは、赤ちゃんの時から印西にいた、カピバラです。とても人懐っこくて、私も大好きなカピバラで、「ナマちゃんネール」でも、取り上げて配信しています。

さくらとよもぎが大阪に行くということは、おそらくナマケモノも誰が行くのか決まっているのではないかと感じました。それから、真相が明らかになるまで、長くはありませんでした。
15日の夜。ツイートを見ていたら、こんなツイートが流れてきました。

言葉を失いました。ネールくんに会えるのは、もう翌日しかない。嫌な予感はありましたが、怪我や度重なる引越しをしていたので、ネールくんを大切に思ってくれているなら、大事をとってくれるのではないかと。そんな淡い期待をしていましたが、もろくも崩れました。そして、ネールくんを2年以上追い続けている私にとって、ネールくんの体調や負担を蔑ろにしているような決定に、怒りさえ覚えました。
印西店のツイートをリツイートしましたが、「いいねはしません。でも、お知らせはします。明日会いに行きます」とだけ記載しました。ツイッターでのナマ好き仲間たちと、少しやり取りをしましたが、感情が揺さぶられていた私は、「これはいただけない」「許せません」と返すしかありませんでした。

ツイートを見たのはもう日を跨ぐくらいの時間だったので、すぐに寝る準備をしましたが、大きなショックと感情が揺れていたことで、中々寝付けませんでした。

ネールくんに会いに、印西店へ

思い起こせば、立川店に行くと決まった時も、印西でネールくんに最後に会えたのは、お引越しの前日でした。印西店への道中、ネールくんがいなくなってしまう寂しさと、お引越しの負担への心配や、怒りなど、複雑な感情でした。少しでも長くネールくんと一緒に居たいと、いつもより早めに着きました。着くなり、仲の良いスタッフさんから、「ネール、今日が最後なんです」「来てくれると思ってました」と声をかけてくれました。

ネールくんは寝ていましたが、相方のフォフォくんは何度も脱走しては捕まって戻され、また脱走を繰り返していました。その姿を見ていたら、複雑な感情よりも会えて嬉しい気持ちが勝り、少しずつ気分は晴れてきました。
脱走を繰り返すフォフォくんは、最近お気に入りの場所に行くなど、初めての姿を見せてくれました。ネールくんも、今まで見たことのない、天井上を移動する姿を見せてくれたりしました。

色んな感情がありましたが、目の前にいるネールくんは、ただ可愛く、愛おしい。ネールくんを撮影していると、じーっとこちらを見てくれることが多く、目が合っていると、とても嬉しく思います。きっと、私のことをわかってくれてるんじゃないかなとも感じます。

閉店間際

飼育員さんに、「ネールくんはいつ大阪へ向かうんですか?」と尋ねたところ、「今日の夕方には行ってしまう予定なんですよ」と。まじか。下手したら閉店前には連れ去られてしまう!?せめて、閉店まではいるように願っていました。

飼育員さん達も、ネールくんとの別れを惜しんでくれて、最後までキュウリやリンゴをあげていました。ネールくんも、いつも以上にファンサービスをしていて、引越しすることを知らずに来た方とも、間近で写真撮影をしていました。
また、この日はYoutubeで動画を配信していましたが、ネールくん転勤の知らせを聞いて、「今印西に向かっています」とコメントをしてくださった方と、一緒にネールくんを最後の時間を過ごしました。他にも、冒頭で紹介したツイート主ともお会いすることができ、色々と話をしました。

この日初めて、ネットで繋がっている、ナマ活仲間ともお会いすることができ、交流することができました。ネールくんのナマ柄が伺えますね。

閉店が近づく中、相方のフォフォくんは離れたお気に入りの場所で寝ていました。そこで私は飼育員さんに、「最後に、ネールくんとフォフォくん、ふたりで過ごしてもらうことはできますか?」とお願いしました。快く対応してくれて、寝ていたフォフォくんも起きてきてくれて、仲良く過ごしてくれました。

いよいよその時

閉店まで、ネールくんとの時間を過ごしましたが、閉店間際には、店舗の外にはカートが運び込まれ、お引越しの準備が進んでいました。ついに閉店時間となり、退店を余儀なくされましたが、「ネールくん達をお見送りしていいですか?」とお願いしたら、快諾してくれました。ナマ活仲間の方々と一緒に、ネールくんを見送ることができました。

ナマケモノは、ネールくんとブランちゃんのふたりが大阪へ行くこととなりましたが、移動の際はケージに木を入れて、落ち着けるようにしていました。外から見守っていましたが、ケージの大きさに合わせて木を切ったり、準備をしていて、30分ほどはかかっていました。

そして、いよいよその時。ケージの中に入れられて、カートに移されるネールくん達。仕方がないとはいえ、胸が締め付けられるようでした。「何!どこに連れて行くの?」というように、あたりをキョロキョロしている姿に、涙が出そうでした。
「ネールくん達をよろしくお願いします。無事に届けてもらえるようお願いします」
と伝え、ネールくん達を乗せたカートは去っていきました。

ナマ活仲間のおかげで、正気を保てていたのかもしれませんが、また会えるとはいえ、辛いお別れでした。

私たちにとっては、とても辛いことで、毎日見ている飼育員さん達も同じかそれ以上の気持ちがあったかもしれません。それでも、結局ネールくんはお引越しすることになってしまいました。
元々、売られていたところを「猫の王様」に引き取られましたが、閉店することとなり、卸業者に引き取られました。レプタイルショーなど、展示会に何度も運ばれ、やっとMoff animal worldという居場所を見つけたネールくん。

個人的に、ネールくんを飼いたいと思ったこともありましたが、素人に飼うのは難しく、ネールくんにとって良い環境ではありません。ちゃんとプロに見てもらえて、自由に過ごす姿を見て、ここにいてくれたらと思い、ネールくんを守るためにも、「ナマちゃんネール」というYoutubeチャンネルも始めました。

私のような、ネールくんを好きなナマスキーは他にもいると思います。立川でも、「初めてナマケモノに会いましたが、ネールくんは本当に可愛いですね」と言ってくれた飼育員さんもいました。色んな人に愛されるネールくん。ですが、飼い主である会社の決定を前に、どうすることもできません。私たちがどれだけ心配しても、会社は同じようには見てくれません。
行き場のなかったナマちゃんを、ネールくんとして飼育してくれていることは、心から感謝しています。ただ、色んな経緯を知っているからこそ、ネールくんには安心してのんびり過ごして欲しいと思っています。自分に保護できるなら、そうしたいです。

最近は、保護動物カフェ「ねこのす」さんの保護活動を積極的に応援していることもあり、今まで以上に動物への思いが強くなっていることもあるのかもしれません。

動物を保護する大変さは、多少なりわかるつもりです。お金もかかるどころか、儲かりにくですし、労力も相当なものです。安易に保護しようとしたところで、動物を守れないどころか、自分自身も幸せにはなれないでしょう。無責任に飼うのは、動物を捨てている人たちと同じです。
株式会社Moffさんは新店舗を続々オープンしているので、きっと経営状態は良いのでしょう。それを否定するつもりはありません。そのおかげで守られている動物がいることも事実ですから。でも、Moffに限らずですが、動物に関わる仕事には、影にネールくん達のように振り回される動物がいて、動物ファーストではないのも事実です。

綺麗事だけで、「動物のために」というのは無責任でもあります。守れるだけのものがなければ、保護どころではありません。だからこそ私は、守れるだけのものを身につけたいと思っております。
いずれ、その発表もしたいと思っています。

ネールくんは、11/8にオープンする、Moff animal cafe ららぽーと堺店にお引越ししました。関西住まいで、今までネールくんに会えなかった方が、ネールくんに会って、その魅力を感じてもらえれば私も嬉しいです。同じように、背景にはこういうことがあったということも知ってもらいたいです。そして、ネールくんだけではないのですが、振り回されている動物を守りたいと思ってもらえる方が増えていけばいいですね。

『ナマケモノ物語』、10話まで進みましたが、まだまだ終わらないようです。ネールくんとの物語を、これからも紡いでいきます。


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