見出し画像

日々の断片 4/17

4月17日

晴天。昨晩の雨に洗われた澄んだ空気。
午前中、自転車を漕いで駅の方まで。
方々で選挙活動中の候補者の車、拡声器の声。

先日のいわきclub SONICでのライブの際に立ち寄った
阿武隈書房でもとめた古書
『蜜蜂・余生』中勘助(岩波文庫)

冒頭ちょうど今と同じ時期、
昭和17年(1942年)4月11日の記述から始まるので
その偶然性にちょっとだけ気持ち高まりつつ
内容は中氏の亡くなった姉を偲ぶもの
感傷的な気分からは逃れられず。

昭和17年4月16日には
「かたづけているうちに雨がざーざーふってきました。(中略)
 今夜は雨の音が淋しいです。」

81年前の4月16日夜は、日本の某所にて
やはり同じように雨が空気を洗い流していた模様。

そして今日は待合室で、同じく中勘助の随筆集より
「氷を割る」

こちらは「蜜蜂」で書かれている姉の、
その二年前の闘病記、なもんでどうしたってセンチメンタル不可避。
同時に、当時の生活の様子や風習、道徳観なんかも垣間見えて興味深くもある。

「六月一日
 朝。(中略)氷のかけをたべさせてるところだった。(中略)
 六分は覚醒、四分は夢うつつらしい。(中略)
 今度はかけらの小さなのを入れる。(中略)
 私たちの交渉は今や一匙の氷にちぢまってしまった。」

ただただ静かに、時間が過ぎていく。

中勘助氏の文章は、なんだか透き通っていて
空気の流れる音を感じるような、イヤ脳内の血流の音かな
ずっと止まない、耳鳴りみたいな。

物語の締めくくりに出てくる、一節が印象的。

「人びとはさして道徳を必要としない場合には甚だ道徳的だが
 真に道徳を必要とする場合にはかえってそれを放棄する」

家までまた自転車を漕いで帰る。
晴天。風が強い、お昼前。
何台かまた選挙カーとすれ違う。
声が大きい。

帰ってチャーハンを作って食べる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?