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映画『エゴイスト』をやっと配信で見たけど、慌ただしかった

小説「エゴイスト」を先に読んでいた話

こちらの記事にまとめてある。ありがたいことに公式まとめにも掲載いただいたせいか、ビュー数もスキ数も、しかも暖かいコメントまでもいただいている。今日はやっとU-NEXTの配信が始まったので、それを見た話。映画館に行くのが億劫な性格なので配信まで待ってしまった。

鈴木亮平さんが頑張ってオカマを演じている悲しさ

さて、映画を見始めて最初に思ったのがコレ。鈴木亮平さんがオカマを演じている感。ご本人がインタビューでも話していたが、当事者じゃない人がそれを演じる是非に葛藤されていたと。冒頭から肩で風を切って歩き、ドリアンさん演じるゲイグループで会話するアレを演じていることに胸が痛くなった。っていうか、ドリアンさんも瞳孔開いて大声で喋ってるのも、なんか無理してませんか…?って感じでちょっと引いた。隣で穏やかに喋るお友達のが自然体に見えた。まあ、ゲイグループって大体あんな感じで、場を回していく人とそれを聞いて笑っている人と。作者の高山真さんの本当の姿は知る由もないけど、鈴木亮平さんのあの演技が実は近いのだろうか。
鈴木亮平さんはとても素敵だし、出演作も相当見ていて自分には大好き俳優さん。でも、これは「何とかオカマっぽくしよう」というのが見え隠れてしてしまい、むしろ普段の生活でゲイを隠そうと生きている姿の演出かもなと思うほどだった。阿川佐和子が倒れて駆け寄るときは東京MERみたいだったし、表情や仕草の節々から醸し出されるカラっとしたノンケ感(ゲイはもっとジメっとしているというかウェットというか)、ちあきなおみを歌うシーンを見ても、鈴木亮平さんってやっぱりノンケなんだなと思うと、こういう役柄を演じてくれてありがとうと思うと同時に、カムアウトできるような世の中じゃない、当事者がゲイを演じられない悲しみが込み上げてくる。

中村親子(宮沢氷魚さん、阿川佐和子さん)の怪演

反して、宮沢氷魚さんはノンケに限りなく近いゲイ、というかそんなことよりも生活が苦しくて生きるのに必死な感じがにじみ出た演技で圧倒された。ウリ専のシーンなども違和感がなさすぎてびっくりした。映画を見た後にホテルに行くゲイが多いと聞いたが、わかる気がする。観客に対する美しさと性的な問いかけがすごい。そして、阿川佐和子さん。生命力、生活力の無い、弱い母親役が異様にあっている。ノーメイクでもちゃんと映えている。こんな人、絶対ああいうアパートに住んでる。金もないのに謎の拘りがあるようなおばさん。中村親子への感情移入は映画も小説も差がなく、嗚咽してしまった。

色々な葛藤が演出側にもあったのかと思わされる

映画を見てから小説を読んだ友人が最初に言ったのが「雑誌の編集ってそんなに儲かるか?」だった。小説を読んでいてさほどそれは気にならなかったけど、映画を見て納得した。メゾネットタイプのマンションの最上階の部屋に住み、ブランド服が並ぶあの姿は「サラリーマンですから」で済まされない。確かにゲイには妙に金を持っている人がいて、あのような生活も嘘ではないけれど、ちょっと誇張しすぎに見えた。実家が太いわけでもなし。その実家もなぜか千葉に変更されていたし、豚一号なる同級生は普通の田舎のサラリーマンだったし(小説はもっと汚らしく表現されていた)、伊勢丹で手巻き寿司のセットを買うシーンも小料理屋のお土産に変わっていた。2時間という尺の中でどうにか詰め込まざるを得ないし、バランスを考慮するとしょうがないのだろうけども、もっと浩輔の感情のセンシティブな受容を表現してほしかった。なので最後の病室のシーンまで慌ただしく終わってしまったなという印象。カメラの振り向け方も忙しかったり、接写が多かったりと酔う人が多いというのもわかる。まあ、演出も好みもあるだろうから、ここら辺にしておく。

でも、これが世の中に出されたことが、社会の変化の一歩だ

これも鈴木亮平さんのインタビューで「想像するよりキツイ」と言ってくれたけれど、隠して隠れて生きているゲイ達がほとんどのこの世の中。映画を見る大多数は異性愛者であるが、同性愛者ってこう生きているんだね、ということを知るきっかけになっていることは間違いない。以前の記事で、ゲイや人の生き方を問う作品であることを強く申し上げたが、これがまた社会の変化の一歩になってくれたと確信している。活動家を含め色々なノイズが世の中にあるが、1人のゲイとして思うこと。ゲイであることに不安を感じずに生きられる世の中であってほしい。映画『エゴイスト』、ありがとう。

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