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僕と彼と最初の出会い

いつからだろうか、好きになったのは。
何て恋愛ドラマの冒頭シーンみたいな事は言わない。
はっきりと覚えている。彼を好きになった時の事。


僕の生徒時代は、暗くはないが、決して明るくはない。
それなりに友達もいたし、頭も良かった方だし、運動もできた。
けど、どこか違和感を感じていた。
もちろん、親友と呼べる人はできたが、
ほんの少しの違和感、
皆と同じ空間で遊んでいる筈なのに、
自分だけ手を繋げないまま輪っかの外にいるような感覚。
皆とドッジボールをしている筈なのに、
一向に狙われず、透明になってしまったんじゃないかと
錯覚してしまうような違和感。


そんな自分に、ここに居てもいいんだと、居場所をくれたのが、彼だった。


高校2年、夏、体育祭。
背丈と格好がやけに目立つ自分は、応援団に推薦された。
部活も委員会も忙しいので・と、
やりたくない理由をこじ付けのように述べて断る。
そんな折に彼から、一緒にやろうと言ってくれた。
どんな気持ちで声を掛けてくれたかは分からない。
けど、ひょんなことから、一緒に応援団に入る事になった。

同じ授業を受けて、昼休みと部活後は応援の練習をして、
一緒に過ごす事が多くなった。
惚れ惚れする顔に、少し低めの声、
特に香水も付けてないのに、どこか落ち着く匂い。
だんだんと彼を意識するようになる。


なんで理系なの?
そんな彼の問いに、生物が好きで将来は医療系に携わりたいからと答える。
え、俺も生物好きだから理系にした。でも将来は食品開発かな。
なんて、他愛もない話をした。

そうしていくうちに、打ち解けあえるようになった。
元々彼の周りには、人が集まっていた。
そんな彼と一緒に過ごすようになってから、
自分も輪の中に入れたように気がした。

彼は凄いなと、尊敬した。
尊敬して、ずっと一緒に居たいと思うようになった。
移動時間も、体操着に着替える時も、下校の時もだ。


なんて事だ。


ふとある日、そんな自分の行動に気付いてしまって、
まるで寄生虫じゃないか・と、自分に嫌悪感を覚えた。


気付いたその日から、彼から遠さがるようになった。
遠さがるほど、苦しくなった。
すれ違う旅に、愛想笑いをする自分が、苦しくなった。
ああ、きっと、尊敬ではなく、好きだったんだな。


そう気付いてから、ますます遠さがるようになった。
同性を好きになるって、どういう事だ。
同性って好きになっていいんだっけか。
こんな事をぐるぐる四六時中考えるようになった。


それでも変わらず話しかけてくる彼。
好きでも寄生虫でも、どうでもよくなった。
こんな優しい彼を汚してはいけない。
こんなにも純粋で無垢な彼に、手は出せないと思った。
だから僕も、話かける。
何もなかったように。


ハリネズミのジレンマのように
彼を思う気持ちが、彼を傷つけてしまうなら、
この気持ちは押しとどめよう。
きっとそれが、僕にできる精一杯の愛情表現だから。
















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