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僕と彼とサウナ

好きという感情は皆と同じなのに、
ただただ同性を愛してしまった、恋に臆病な少年。
届く事のない、想い。
 
 

高校入学。
かの人気俳優に似ている人がいるという。
どこもかしこも、女子が大騒ぎ。
イケメンで、学力上位で、サッカー部。
僕から見ても、確かにイケメンだし、カッコいい要素満載だ。
だけど、それ以上でもそれ以下でもない。
その時はそう思った。
 
 

高校2年。
同じ理系クラスのクラスメイトになった。
誰でもない、ただのクラスメイトだった彼が、
僕にとって、大事な人になった。
 

 
顔はタイプ。だけどそれだけじゃない。
仕草も声も匂いも考え方も。全部、好きになった。
 


物心付いてから、自分が同性愛者の自覚はあった。
あったけれど、本気で同性を好きになったのは初めてだ。
戸惑った。どうしたらいいか分からなかった。
でも、気持ちを伝えてはいけない事だけは分かった。
伝えてしまったら、嫌われるかもしれない、と。
だから僕は気持ちを押し込む。
友達として隣に居れるなら、それでいいと、隣で笑いあう。
 
 


僕たちは、大学時代も、社会人になった今も、定期的に会っている。
それどころか、親友と呼び合えるくらいの仲になった。
 


 
あぁ、これでいいんだ。これで良かったんだ。
ずっとこうして隣に居れるなら、この関係だって悪くない。
 
 


そうして、長い年月をかけて、ようやく気持ちに区切りがついたところで、
彼から、一通のメッセージが届く。
「サウナに行こう。」
 
 


前回会った時に、僕がサウナにハマっていると伝えたからだろうか。
サウナに誘われてしまった。
 

僕の気持ちは複雑だ。
嬉しいけど、行きたくない。
行きたくないけど、行きたい。
複雑な気持ちに整理が付かず、
何度かリスケジュールをしたところで、
ようやく決心をしてサウナに行った。
 
 

ただの友達と思ってか、彼は堂々と服を脱ぎ捨てる。
初めて見る裸。
僕の目は釘付けだ。
高校の時より体が大きくなって、鍛えられていた。
顔は美少年で髭もないのに、体は男だ。
魅力的だった。何もかもが。
 
 

好きという気持ちは捨てた筈なのに、
やっぱり好きなんだと気づく。
狭いサウナ室に触れる肌、彼から感じる熱気、滴る汗。
全てが愛おしい。
 
 

自分のものにしてしまいたいという欲望が満ち満ちる。
 

それでも、僕たちは変わらない。
 

他愛もない話をし、いつも通りに解散する。
「また遊ぼうね。」
次の予定を決めないのは、また絶対会えるからとお互いに思っているから。
 
 

今日はありがとう・と、素っ気なく手を振る。
僕の気持ちの高ぶりを、悟られたくないから。
 
 

電車の中で、今日の写真と共に一文を送る。
素っ気ない素振りをしてしまった申し訳なさを思いながら
今度は旅行行こうね、と。


サウナの熱はとうに冷めたのに、僕の気持ちは冷めていないようだ。

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