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SLAMDUNKに見る、コンテンツと語り手位置の組み合わせの重要さ

映画『THE FAST SLAMDUNK』が大ヒットしています。もちろん僕も見に行きました〜。

OPのThe Birthdayの『LOVE ROCKETS』から始まり、何の曲か分からないけどそれがチバユウスケの声だとわかった瞬間、僕のテンションは爆上がりでした。(キャラが描かれていく演出も良かったよネ)


本作は漫画の主人公・桜木花道ではなく、桜木より1つ学年が上の先輩である2年生ガード・宮城リョータがメインに据え置かれている作品でしたね。これは宮城リョータのバスケに置けるポジションと、映画というコンテンツの特色が綺麗にマッチして完成した化学反応のようなものだ!と個人的に思いましたので、ちょっと書いてみようかな〜と思いました。


宮城リョータのポジション 「ガード」とは

湘北高校のスタメンと言えば、桜木花道、流川楓、赤木剛憲、三井寿、宮城リョータの5人。

それぞれ、
宮城リョータ PG(ポイントガード)
三井寿    SG(シューティングガード)
流川楓    SF(スモールフォワード)
桜木花道 PF(パワーフォワード)
赤木剛憲 C  (センター)

というポジションが割り振られています。
漫画における主人公である桜木花道はPFであり、桜木が作中で極めたリバウンドの技術は、PFが必要とされる技術の1つなようです。(映画でもリバウンドの場面多かった) 流川楓が担うSFはエース級の選手が任されることが多く、インサイド・アウトサイド両方での得点力が必要です。赤木も三井も、それぞれ分かりやすくインサイド、アウトサイドでの役割が作品内でも描かれていましたよね。

宮城リョータはPG。このポジションは言わば司令塔であり、全体を俯瞰してゲームを動かすポジションなようです。この「俯瞰」こそ、宮城リョータと映画というコンテンツを結びつけます。つまり宮城リョータを視点人物にすることで、映し出す映像がリアルな試合の視点になり、それが自然な場面展開を容易にしています。

『THE FAST SLAMDUNK』は山王戦の中で宮城リョータ本人の過去を回想しつつ、その他のメンバー(赤木、三井)の過去も交えながら試合が展開されていく構成となっています。宮城リョータ自身の回想も、赤木と三井の回想も、宮城が試合中に各選手を見たり気にかけたりする場面から派生して展開していました。ぽっと出の回想じゃなく、試合展開と結びついていたからこそ、その瞬間に感情移入できたんだと思った。
(漫画読んでて「あ〜前のあの場面を思い出すなあ」みたいになることを、映画で瞬間的にやってる。しかもそれが超自然。凄かった。)

宮城リョータという司令塔ポジ・PGの選手に視点人物を任せることで、この回想と現在の時間軸を行き来する物語の展開を、より自然なものにできているんだな〜と感じました。


漫画、映画、小説 どれが正解か

桜木花道はいい意味で目立つ。そして知能的にキレる男ではなく、本能的に動きそれが周りを動かす主人公特性を兼ね備えたキャラクター。JUMPの主人公としては、つまり漫画の主人公としてはうってつけ。読者はあくまで全体を見る「神の視点」、三人称の視点で物語を見ていて、そのなかで桜木がどんな風に成長していくのかを眺めていく。桜木だけじゃなく他のキャラクターの思考やストーリーも簡単に暴露されるから、作品の厚みも増しやすい。

そんな漫画が原作にあるのに、映画で同じことをするのはどうか、という疑問に僕も落ち着いていました。だからこそ映画やるって聞いて不安でしたよ。

でも蓋開けてみたら、宮城リョータがメイン。これメインっていうか、宮城リョータに視点を預けたってこと。これによって主人公・桜木の存在にどれだけ周りが救われているかっていう所がより鮮明に描かれて、"桜木花道"っていう人間にさらに磨きがかかってた。宮城を使ったのは大正解だった。
漫画でできることと、映画でやるべきことを、SLAMDUNKっていう国内トップスポーツ漫画だからこそふるい分けできてたんじゃないですかね。
(トップ故の余裕ある振る舞い、みたいな。)


で、映画で三井寿を見てて思ったのは、小説にするなら視点人物は絶対に三井だなって
だって、あんなに濃いバックボーン持ってて、ナルシスト要素があるからこその、
「おう、オレは三井。諦めの悪い男。」
っていう台詞。このセリフの存在が一人称小説での展開のさせやすさを生んでいる気がする。「オレ」を多用した三井視点の語り聞きたいもん。

(もしくは小暮くんみたいな、フィールドの外にいる人物だからこそ見える部分を書いても絶対に面白い。山王戦で桜木の代わりに入った瞬間の心境も赤裸々に書ける。小暮くん好き。)


最後に、個人的にこの『THE FAST SLAMDUNK』は衝撃的な面白さだったし、文句無しにこれを一番最初のSLAMDUNKとしておすすめできる作品だなって思った。面白い漫画をただ実写映画化したり、話題になった小説をただドラマ化するよりも、こんな風に見せ方や展開のさせ方にこだわって作られた方が絶対に良い。僕はこういうのちゃんと気遣って作品を見ていきたいし、将来自分が作ろうってすーごく思いました。

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