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1杯のサラダボウルから学んだ仕事の価値観

価値観というものは、ある日突然、180度変わることがある。

私はPOTLUCK(ポットラック)という月額定額制テイクアウトサービスの店舗営業として働いている。営業の中でも私が担当しているのは主に既存店のフォローだが、気になるお店があれば自らアポイントを取って商談に行くこともある。現在大学3年生で、本来であればリクルートスーツを着ていなければならない時期だが、思いのほかこの仕事に熱中してしまい、気付けば私服で週5出勤していたのだった。

この日もちょうど、以前私用で行き居心地が良かった代官山のカフェに連絡を取っていた。それが「フリホーレス代官山」というカフェである。取締役の高橋さんは快く応じて下さり、数日後に会うことになった。概要を説明すると、POTLUCKのサービスを気に入っていただけて、導入の方向で進んだ。

「今度店舗でミーティングで皆にも相談しようと思うのですが、よければお越しになりますか?」
「え、いいんですか、ぜひ!」


思わぬお誘いに驚きつつ、今までにないことだったので緊張と楽しみの半々の気持ちで当日はお店に向かった。

店舗ミーティングで受けた、衝撃


店内の広いソファ席には、すでにお店のスタッフの方々が集まっていた。リラックスした雰囲気の中、高橋さんはミーティングを始めた。

「先日POTLUCKさんというサービスの説明を和田さんから紹介していただき、うちでも導入したいと思っています。今日はそれにあたって、メニューの内容や見せ方を考えていければと思います。」
すると、誰からともなく自然と議論が始まっていった。


「価格帯を考えると、サルサにチキン、ビーンズ…ロメレタは50gくらいですかね」
「ちょっと50g入れてきてもらっていい?」
「ドレッシングは容器の中に入れるのと外に入れるの、どちらでいきましょうか」
「店内でもイートインできるようにするのってどうかな?」
「忙しいオフィスワーカーの方が利用するのであれば、そのニーズは少ないと思います。」


次々と意見が飛び交う中で、私はただただ驚いていた。というのも、私が想像していた世界と全く違ったからだ。私はそれまで、飲食業界を2つの視点からしか見たことがなかった。1つは客として、もう1つは大学1年のときにチェーンのパスタ屋で働いていた際の、アルバイトとしての視点だ。当時の印象として、飲食店で中で働くことに対しては「大変」という印象が強かった。店長に関しては、誰かが休むとただでさえ出勤日数が一番多いのに大概その穴を埋めることになる。その疲れのせいなのかはわからないが、不条理なことで怒られることもよくあり、あまり良い雰囲気ではなかったのだ。

だからこそ、ミーティングに立ち会ったとき、皆が当事者意識をもってより良くしていこうという熱量に圧倒されていた。同時に、私が提案したPOTLUCKにここまで考えてくれる人がいる。自分がそれくらい影響を与える仕事をしている責任感を改めて実感し、身が引き締まる思いがした。

自分のためにやる仕事と、誰かのためにやる仕事

ミーティング終了後、寒空の中、高橋さんに見送られながら代官山駅へ向かう途中、自分の中にある思いが芽生えていた。

(このお店の良さを、みんなにも知ってほしいなぁ)

もちろん、私用で行ったときもいいお店だと思った。だから声をかけさせていただいたのである。けれど、お店の方があんなに一生懸命にお店のことを考えているところを目にすると、その思いは何倍にもなったのだった。

その時気付いた。初めて「誰かのために」動きたいと思ったのだった。

「なんでそんなに頑張って働いてるの?」
「社畜かよw」
大学の友達からよくこう言われる。
思えば、夏の3dayインターンの面接でもこんなことを聞かれた。
「あなたがその仕事を通じて目標としていることはなんですか?」

それらの質問に対して、私は今まで迷わず
「楽しいからです!!!」
と答えていた。全て自己成長のためだった。ずっと没頭できるものがほしくて、それを見つけられたことが嬉しくて、目標とか目的なんて一切考えていなかった。でも、私たちのサービスに本気で向き合ってくれるお店に出会って、「このお店のことをもっと知ってもらいたい」という想いが初めて芽生えた。今まで自分にしか向いていなかった仕事の目的のベクトルが、初めて自分以外の方を差した時だった。

自分の仕事は、POTLUCKというサービスの加盟店を増やすこと自体が目的なのではない。ユーザーにとってはこのサービスを通してお気に入りのお店を見つけてもらうこと。お店にとってはそんなファンを作っていくこと。お店をお客さんとの"関係作り"をすることが、1つの大きな目的である。つまるところ、POTLUCKはお店をお客さんの橋渡し的な存在なのである。であれば、今日私が感じたこの思いをお客さんに発信していくこと自体が、POTLUCKが目指す"関係づくり"に直結するのではないか。正直まだまだサービスとしては未熟で、売上としてお店に貢献できる力は本当に僅かなものかもしれない。だけど、私ができることは他にもある。実はこの記事も、そんな思いで書くことを決めたのである。

今まで加盟店を増やすこと、1店舗当たりの注文数を増やすことばかりを考えていたところから、一気に視界が開けた気がした。

全ての仕事は、誰かのためにある。

1杯のサラダボウルは、私に大切なことを教えてくれたのだった。


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