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【感想】『誰も語らなかったジブリを語ろう 増補版』を読んで、ジブリ作品の奥深さを感じました。

本記事は「note×東京ニュース通信社(TV Bros.)」の合同企画「#読書の秋2021」の課題図書『誰も語らなかったジブリを語ろう 増補版』(押井守【著】)の読書感想文です。過去に趣味で撮影した写真を交えて読書感想文を書いてみました。本企画の詳細は下記に記載されています。

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よくよく考えてみると、ジブリ作品は全て鑑賞済みであることに気がついた。各作品のシーンに思いを馳せると、鑑賞した当時の自分自身の心情も重なって、30代後半の私はとても懐かしい気持ちになる。「もののけ姫」は初日に映画館で観るために朝早くから並んだ。「もののけ姫」の影響を受けて屋久島を旅行したり、「紅の豚」の影響を受けてイタリアを旅行したり、「千と千尋の神隠し」の影響を受けて台湾の九份を旅行したりした。私の人生の中でジブリはとても思い出深い作品群である。そんなジブリ作品を押井守氏(著者)があらゆるバイアスを無視して語ったのが本書である。なお、私がエンジニアという職を志すきっかけの一つを与えてくれたのが、押井氏の監督作品である長編アニメ「機動警察パトレイバ―」や「攻殻機動隊」や「スカイ・クロラ」などである。私の人生に色々と影響を頂いている押井氏がスタジオジブリをどう語るのか、とても興味津々で本書を読んでみることにした。

本書は三部構成で、第一部は対談形式(押井守氏×渡辺麻紀氏)、第二部は特別鼎談(石川光久氏×高橋望氏×押井守氏)、第三部は往復書簡(鈴木敏夫氏×押井守氏)となっている。押井氏の愛情溢れる辛辣な意見が詰まった本書を読むことで、スタジオジブリが日本の映画業界に与えた影響の大きさを知ることができた。また、宮崎駿氏と鈴木敏夫氏と押井守氏との絶妙な関係性がおもしろいと感じるとともに、こういった切磋琢磨できる関係性を羨ましく思った。時代を創りあげてきた彼らが何を考えて仕事をしてきたのかを垣間見ることができ、ジブリ作品の奥深さをより一層感じることができた。それと同時に、ジブリ作品は時代と才能が組み合わさった奇跡の作品なんだと思い至った。さらに、本書は押井氏の映画製作にかける想いも知ることができ、私としては読み応えが十分にあった。

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「一般の観客レベルにまでアニメーションの市場を広げたというのがジブリの最大の功績」と押井氏は評していた。押井氏の知人が「ジブリは絵本」と言っていたとのことであったが、この表現には私も納得した。絵本は子供だけでなく大人にとってもかけがえのない本である。絵本には「読者にとって基本的で大切なこと」を思い出させてくれるという役割があると思う。子供たちにも安心して見せることができるのが、ジブリ作品のひとつの魅力であると思う。また、ジブリ作品には印象深いシーンが多く、まるで美術館で「絵」を鑑賞しているような気分にさせてくれる。さらに、料理を食べるシーンはとても美味しそうである。「天空の城ラピュタ」でパズーとシータが食べたあの美味しそうなパンは食欲をそそられた。私達の世代では「パズーとシータが食べたあのパン」で話が通じることもあり、ジブリは食文化にも多大な影響を及ぼしていたんだと気づかされた。

一方で、押井氏はジブリ作品のストーリー性には苦言を呈している部分が多かった。”アニメーター”としての宮崎駿氏の想いが多いに影響しているとのことであった。そして、その状況を改善するために鈴木敏夫氏が暗躍(?)した様子を語る押井氏の語りぶりは、どこか楽しそうに感じてしまった。宮崎駿氏と鈴木敏夫氏を本書のように愛のある批判で語れるのは、信頼関係のある押井氏だけであろうと思った。「根底ではお互いを尊敬しているから批判もできる」という素晴らしい関係性を本書から感じることができた。歴史に残る仕事をやり遂げている人達の想いの一端にふれることができ、大変勉強になった。

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第二部の特別鼎談では、製作に関する苦労を窺い知ることができた。作品を一般観客として観るだけでは知ることができない世界の話だったので、興味深かった。仕事人としての信頼関係が根底にあるからこそ、素晴らしい作品達が生み出されているのだと感じた。お互いの仕事に対して、互いに意見をぶつけて議論し合い、前進している様子を読み取ることができた。

第三部の往復書簡は、鈴木氏と押井氏の文章構成の巧みさに思わずうなった。日本語の表現の奥深さを感じることができた。生きる伝説の二人が本書のように書簡で意見を言い合う様子はなんだか胸が熱くなった。また、若い頃の楽しかった思い出は、何歳になっても宝物なんだと改めて思った。今後ともお二人の活躍から目が離せないと思った。

最後に、著者である押井守氏に感謝致します。歴史に残る仕事をしている人達の軌跡を丁寧に語られた本書に出会えて良かったです。また、本書を出版して頂いた編集者の方々に感謝致します。本書を読み終えて、ジブリ作品の奥深さを知ることができ、またジブリ作品を違った角度から鑑賞してみようと思いました。ありがとうございました。

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(登山をしていると、トトロが出てこないかとついつい想像してしまいます。偉大なジブリ作品たちに感謝です。)

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