本書は、現代の若者が職場を静かに去る背景を詳細に分析した一冊です。本書では、まず「いい子症候群」と呼ばれる若者たちの特性について述べられています。彼らは、大人向けのコミュニケーションのテンプレートを持ち、感じよく振る舞いつつも本音を明かさない自己防衛的な姿勢を取っているとされています。周囲と調和しながらも内心では不満を抱えているとのことです。
1. 1on1ミーティング
企業の現場で1on1ミーティングが求められる理由が詳述されています。1on1は、経営者と現場の意見が一致する数少ない取り組みとして注目されています。適切なフィードバックが重要であり、上司は評価的要素を排除し、端的な情報のフィードバックに努めるべきと述べられています。現状では、多くの若者が本音を話さずに人間関係を保険のように守るため、1on1の本当の目的が達成されているか疑問視されています。1on1には覚悟が必要であり、長期的な視点で取り組むことが求められます。
また、現在のビジネス環境では「答えがない世界」に対応するため、上司と部下のビジョンやミッションの共有が重要です。「いい子症候群」を理解し、若者たちが主体性を持つことに対して感じている強い不安を理解することが求められます。
2. 若者たちが突然会社を辞める
若者たちが突然会社を辞める理由として、退職代行サービスを利用する若者たちの中には、後輩に対する恐怖心があると述べられています。優秀な後輩に対して自分が無能だと思われることを恐れているのです。また、「ホワイトすぎて成長できない」職場に失望し、自己成長の機会が少ない職場を「ゆるブラック」と呼び、それを理由に退職する若者もいます。
日本では、アメリカのように人の流動性が高くないため、若手の退職は企業により大きなインパクトをもたらします。これにより、メンバーシップ型雇用の中で若者が退職を選ぶことが多いとされています。
3. 上司・先輩のための「フィードバック入門」
効果的なフィードバックの原則として、具体的で迅速なフィードバックが重要と強調されています。若者たちは過度な期待や圧力を感じるフィードバックを嫌います。上司や先輩にはその点を理解した対応が求められます。具体的なフィードバックを頻度高く行うことが推奨されており、若者たちの成長をサポートするためには、上司自身も学び続ける姿勢が重要です。
以上、本書は、若者と上司・先輩世代との間の相互理解を深めるための1on1を通じたコミュニケーションにおいて、若者の主体性を尊重しながら、社内の非合理文化を見直すことに重きを置くことを勧めています。
全体として丁寧に分析され、具体的な提案が記されていますので、若者たちとのコミュニケーションに悩む上司や先輩には参考となるでしょう。