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「敬愛護摩」をご存知だろうか…

敬愛護摩とは


そもそも護摩とは…


 サンスクリット語の「ホーマ」を音写した漢字で、インドにおいて火の神アグニに対 し、火を焚いて供物をその火に投入することで祈願していたのが、その起源です。それが密教儀礼 に取り入れられて、様々な神仏や曼荼羅に対して修されるようになったものが、密教における護 摩であります。
 ならば密教の護摩と、インドにおける護摩が全くのイコールなのかといえば、そこ には仏教を土台とした密教独特の考え方が加わっているので、完全に同じ物だと断じることはで きません。


修法と呼ばれる行為…


 さて、護摩の有無に関わらず、およそ修法と呼ばれる行為には、何らかの祈願がなされるのです が、大きく分けて4つの祈願内容があります。

・息災(そくさい) 災いを鎮める、病気平癒など
・増益(そうやく) 金運上昇、商売繁盛、延命など
・敬愛(けいあい) 良縁成就、衆人愛敬など
・調伏(ちょうぶく) 怨敵降伏、悪人降伏など

 この中で、敬愛は願主が他者から愛され、敬われることを願って修される法です。具体的には、 良縁成就や皆から尊敬され、愛されること、或いは特定の相手から愛情や尊敬を得ることを目的 にすることもあります。


故に…


 敬愛に限らず、どの修法にもそれに相応しい方角や色など、ありますが、敬愛についてもいくつ かポイントを申し上げておきましょう。

(ポイント1)
 まず、修法を開始するに最も適しているのは、後夜と呼ば れる時間帯、およそ未明4時頃となります。象徴される季節は秋、そして方角は西となります。西 は陽の沈む方向であり、そのためかもしれませんが、象徴となる色は赤色(しゃくじき)であり ます。敬愛専門の護摩の炉というものもあり、それは蓮華をかたどって作られています。

(ポイント2)
 また、祈願別に異なる供物で、「加持物(かじもつ)」というものがありますが、敬愛に用い る加持物は、米粉を水と赤い食紅を混ぜて練り、ごく小さく丸めて押し潰し、碁石のような形に して乾かしたものです。


敬愛修法の本尊は愛染明王なのか


 さて、敬愛修法の本尊は愛染明王なのか、といえば、実は方角が西だけあって、西方極楽浄土 の主、阿弥陀如来です。チベットの曼荼羅を見れば一目瞭然ですが、阿弥陀如来の身体の色も、 愛染明王よりは少し白みがかってはいるものの、赤系統です。



祈願内容の裏側・注意喚起


 最後に、祈願内容の裏側をお話しして、注意喚起しておきたいと思います。上に述べました4つ の祈願(四種法といいます)を2つにまとめると、息災と調伏になります。増益は息災にまとめら れるのですが、敬愛は調伏にまとめられると伝わっています。これは、祈願ごとのエネルギーの 方向性に関わることだと私は考えております。
 マイナス要素を取り除いてゼロベースに戻そうとする息災も、福徳を増やそうとする増益も、方 向性はエネルギーを与えようとする祈願です。しかし、調伏は悪を行おうとするエネルギーを 奪って正しい方向に導こうとするが、相手の性質によっては更生することが叶わず、死に至ることもあり、それゆえに呪詛と勘違いされることも多い修法であります。


調伏


 そんな調伏に、敬愛がなぜまとめられるのかといえば、敬愛もまた、相手のエネルギーを、好意を願主に向けさせる、とい う点では奪っていることにもなるので、調伏にまとめられるのではありますまいか。

 それだけに、祈願の内容、方向性には気をつけねばならないのです。
 例えば恋愛の祈願として、 相手が嫌がっているものを無理矢理願主に気持ちを向けさせようとするのでは、それは呪詛して いるのと同じです。敬愛と聞いて依頼されがちな復縁祈願も同様で、自分は何も変わろうとしな いまま、相手の気持ちを変えさせようという姿勢は、そもそもそれが別れることになった、嫌わ れることになった原因ではないか、と指摘せねばなりません。
 故に、敬愛祈願の正しいあり方は、人に愛され、敬われるような人に自分がなる、というもの です。この点を外せば、いつでも修法は呪詛と堕し、悪の道をひた走る自分に気付かないまま、 地獄へ至ることを肝に銘じていただきたいと思っております。


愛染明王について


 身体の色は真っ赤で、六臂(手が6本)であり、形相は憤怒している仏、と言われて、少しでも 仏像に興味がおありの方でしたら、すぐに思い浮かべるのは、この愛染明王ではないでしょう か。そしてその名前に使われている文字から、愛することについてのご利益がある、と連想される 方も多いでしょうし、中には弓矢を持っていることから、西洋のキューピッドを連想して、まさに 愛の神、その矢で射抜いて相手のハートをゲットする、と妄想を膨らませる方もいらっしゃると 思います。

 少し水を差すようなことを申せば、この愛染明王の密号、つまり密教の名前は「離愛 金剛」といいます。普通に返り点を打って読んでしまうと、「愛を離れる」となり、イメージと正 反対じゃないか、と考えてしまうのではないでしょうか。

 しかしながら、愛染明王は真言宗の常 用経典である理趣経とも結びつけて語られることもあるように、煩悩、執着も大日如来が変身し た金剛薩埵の三昧として捉え、祈願の本尊としても、通常の四種法に加え、敬愛から派生した鉤 召(こうちょう)、つまり必要な人や物を呼び寄せる修法の合計5つの祈願を担当する、オールマ イティな存在として、平安時代から度々流行し、尊崇されてきた尊格です。

 像容は、日輪のように赤く、顔は憤怒していますが、怒り狂う荒くれ者のようではなく、高貴 な人の怒りのようである、という口伝があります。手は6本(六臂)で、第一の左の手には五鈷 鈴、右の手には五鈷杵、第二の左の手には弓、右の手には箭(矢)、第三の左の手には「彼」、 右の手に蓮を持って左の手の「彼」を打つ勢いでいる、というものです。

第一の手は、持ち物、形から、愛染明王が金剛薩埵の変身したものであることを表していま す。
第二の手の弓矢で射抜こうとしているのは、占星術的に悪い働きをする星です。
第三の手です が、「彼」とは修法における祈願内容のことで、実際には何か物体を持っているわけではなく、 空っぽです。それを右手に持った蓮で打とうとしているのは、祈願にまとわりついていたり、その 祈願を邪魔している煩悩などを打ち払おうとしているのです。


眷属により、2種類の修法



  さて、これらの像容は変わらないのですが、愛染明王を取り巻く眷属によって、2種類の修法が あります。

 まず、大日如来がそのまま愛染明王に変身した、金剛界曼荼羅の三十六尊を眷属とする 三十七尊の愛染、そして、大日如来が一度金剛薩埵に変身し、その後愛染明王となった金剛薩埵 の十六尊の眷属をそのまま眷属とした十七尊の愛染。

 前者三十七尊は通用の本尊として、五種法全ての祈願の本尊ですが、十七尊愛染は敬愛祈願に のみ用いる本尊です。こちらは、願主の求める相手と性ヨーガ的な一体化をする、一肘観(いっ ちゅうかん)という特殊な観想などもあり、まさに敬愛の祈願に相応しい内容の修法となってい ます。


敬愛護摩のアロマについて


令和6年3月の愛染王敬愛護摩より、護摩の供物のうち、加持物と蘇油にアロマオイルを混ぜて 炉に投入し、香りの供養にもなるよう工夫しております。この時に使用したアロマは、敬愛の象 徴である紅蓮華から、蓮華(ロータス)のアロマです。今後、祈願内容により、本尊により、様々 なアロマを工夫して使っていきたいと考えておりますので、そちらの方も楽しみに、ご参座いただければと存じます。


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神宮寺五龍院 住職 梵智惇声(ぼんちじゅんしょう)
真言宗僧侶。小学校1年の頃、仏教の魅力に目覚る。並行して、クラシック音楽家でもあり、指揮者、テノール歌手、演出家。2008年、高野山で得度、中院流、四度加行を成満。傳法灌頂受了。三寶院流憲深方・意教方、子嶋流の傳燈大阿闍梨。及び、野澤三十六流惣許可受了。真言僧侶の育成、伝授にも注力し、特に念持仏である愛染明王の修法実践、研究、伝授を主軸としている。

※神宮寺五龍院のプロフィールより抜粋




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