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楽天が「FA獲得」をするのは本当に「目先の優勝のため、育成を放棄している」のか?

こんにちは。今回は「楽天のFA獲得は目先の優勝しか見ておらず、育成放棄をしているのか」について考察したので書いていきたいと思います。

楽天は近年、FA補強などの大型補強を次々敢行しており、特に石井GMになってから傾向が顕著となっております。

FA獲得の際の石井一久GMと西武から移籍した浅村栄斗

これは一体なぜなのか?歴史と戦力の背景から探っていきたいと思います。

石井GMの考え方は「FA補強は若手育成のための猶予」

早速答えのような話ですが、石井一久は過去のインタビューでこう答えています。

>-補強に関する考えは。
 「外国人選手やFA(フリーエージェント)選手の獲得は一度の優勝をしたいからではなく、強いチームの土台をつくる猶予を得るためという考えだ。
1軍の戦力が安定しないと入れ替えが頻繁になり、2軍で腰を据えた育成ができない。将来を担う卵を2軍でぐつぐつと煮込む中で、崩れやすい半熟のまま1軍に上げたくはない。それでは強いチームにならない」

【河北新報】<楽天>好機に強い打者必要/石井GMに聞く再生の鍵
2018年10月03日

そうです、楽天はあくまでもFA補強は「若手育成のために、一軍で戦ってくれる存在」を獲得していたのです。

同じような発言は高津監督もしています。

有望株をじっくり育てていくという考え方は、僕がアメリカでプレーしていた時に学んだものでもある。
 アメリカでは球団の将来を背負って立つ人材を獲得したら、「プロテクト」といって、マイナーでじっくり育成する方法を採る。それもメジャーのすぐ下のトリプルAではなく、ダブルAでプレーさせることも珍しくない。
 僕がアメリカでプレしていた時期に、サンフランシスコ・ジャイアンツのマイナーにバスター・ポージーという捕手がいた。この捕手がとにかく打つ。2009年のシーズンなどはマイナーで3割以上をマークし、「どうしてこんなすごいバッターをメジャーに上げないんだろう?」と不思議に思っていた。
 聞いたところによると、ポージーはジャイアンツにとって大切な選手だから、育成に必要な時間をマイナーで過ごしてから出ないと、メジャーには上げないのだという。
 このアイデアを聞いて、なるほどと思った。アメリカーの球団では決して目先の一勝を追い求めて若い選手を昇格することはせず、大きく育ててから引っ張り上げるのだな、と。

二軍監督の仕事~育てるためなら負けてもいい~ (光文社新書)
高津臣吾

実際の2018年の楽天のスタメンがこちら

日本プロ野球RCAA&PitchingRunまとめblog

はい。この時点で既に「怪我がちで、まともに一軍にフルで出られない選手」が茂木、今江、藤田、嶋、ペゲーロとスタメンを多く占めていることがわかります。こうした場合に出てくるのが当時20歳のオコエや堀内であったり、19歳の藤平、18歳の西巻だったりしたわけですね。やはりですが、経験不足で身体ができていないまま一軍に上がってしまった若手はその後も伸び悩んでいる傾向にあります。

こうなった背景には「星野ドラフトのずさんさ」もありますが、やはり「楽天が創設間も無くしてできた球団」と言うのも背景にあるでしょう。

2018年の西武と比較すればよくわかると思います。
西武のスタメンの当時の主軸は秋山、浅村、山川、森といったメンツで、それぞれ2010年、2008年、2013年に指名されていますが、その時の西武はいずれもAクラスに入っています。その当時からいた選手には中島、中村、栗山といった楽天創設以前の選手や、片岡、栗山、涌井、岸といった楽天創設直後にはパイプや即戦力投手を確保しなければいけない状態で指名ができない選手が主力として戦っていました。

一方楽天の2008〜2013年を他球団を戦力外同然になった選手で戦っていた時期がまだまだ長かった時代なので、そこでドラフトに行く選手も即戦力重視になってきます。例えば草野大輔なんかで考えればわかるのですが、楽天の初期を戦った生え抜きですが、即戦力性を重視し30歳でプロ入りしてるで、2007年の指名ながら、2012年と早い段階で引退してしまっています。
釜田や森雄大などのそのあたりで高校生ドラフトを仕掛けた結果が2014年〜2018年の空洞の多い戦力の時代というわけです。

では話を戻しますが、楽天が人的補償のあるFA補強を最初に行ったのが2015オフの今江敏晃です。
そこからの大型補強(日本人)の主な年表はこちら

2015年 今江敏晃
2016年 岸孝之
2017年 なし
2018年 浅村栄斗
2019年 鈴木大地 涌井秀章 牧田和久
2020年 田中将大
2021年 炭谷銀仁朗 西川遥輝

そう、こう見ると何も不思議ではなく、ただ楽天は一軍で戦う戦力を最低限獲得していただけなので、当然その後すぐ優勝できる戦力などあるはずもなかったのです。

楽天のファーム育成強化計画

あまり目を向けられていない「楽天のファームの歴史」を少し振り返ってみたいと思います。
楽天のファームは石井一久が来るまで全くと言っていいほど機能していなかったと思います。少しのプロスペクトと他球団から獲得したファーム回し要員、ほぼそれだけで構成されていたと言っていいでしょう。

例えばなんですが、2017年に高校生ルーキーだった藤平は一軍の43.1イニングに加えて79.0イニングもファームで投げています。2017年にファームでそれだけイニングを食う投手はこの年おらず、高校生ルーキーでは一番投げています。つまり、藤平を漬ける投手がいないほど、ファームの層が枯渇していた証拠だとこれだけみても言えるでしょう。

参考ですが高卒ルーキーのファームイニングがハム吉田輝星が62.0回(一軍11.0回)、中日高橋宏斗が34.2回(一軍0回)ヤクルト奥川が15.2回(一軍2.0回)、佐々木朗希が0.0回(一軍
0.0回)なので、藤平の二軍79.0回一軍43.1回がいかに異常かわかるでしょう。

というわけで、石井一久が補強に取り組んだ結果、ファームがどうなったかというと、高卒ルーキーの最高イニング数を引地の29.2回に収めることに成功しました。

また、二軍に三木監督というスモールベースボールのスペシャリストが付いたのと、浅村の存在で山﨑剛も二軍に漬けることに成功。二軍で308打席立ち後の楽天準レギュラーに育つことになります。

また、この年、楽天のファーム史上初となるイースタン優勝を成し遂げます。

その後も黒川や武藤、安田や入江、小峯、内、泰といった若手をずっと二軍に漬けられており、4年間で3回の優勝もさることながら、一軍の補強選手のおかげでファームの健全運用を図ることが石井一久GMの狙い通りできるようになっています。

2019年に獲得の武藤が今年20歳で一軍で結果を出し始めたばかりですから、楽天の黄金期は「まさにこれから」であり、石井一久の常々言っている「中長期的視野に立った楽天の常勝球団化」をしている最中と言えると思います。

補強選手は「能力の高さ」より「怪我しない選手」

ここまでの説明を聞いてもらったらわかると思いますが、楽天の補強の狙いはあくまで「若手に二軍で育ってもらうこと」であり、その場合何を重視するかと言ったら「一軍稼働率の高さ」なわけです。

よって、浅村栄斗、鈴木大地、西川遥輝、炭谷銀仁朗、涌井秀章といった石井の獲得した選手はほとんど怪我をしません。

こうしたことからも、働き盛りの楽天の一軍主力に「外様」が入ってくるのは当然だと言えます。(他球団は楽天の黎明期に獲得した選手がベテランになっているので)

なので、外様だらけで勝てない、のは別に普通にあり得ることだといえ、「短期的に勝てなかったとしても」楽天の狙いはそこではないということをおわかりいただけたと思います。

まとめ

楽天の補強の狙いを書いていきましたが、まとめると

楽天のFA補強は育成放棄の真逆で、生え抜き育成強化の狙いである
外様の選手は他球団と楽天の黎明期からの戦力差を埋めるための存在である

ということを、知っていただければと思います。
読んでいただきありがとうございました。

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