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発達障害ワークハックのようなもの

私は発達障害(ADHD・ASD併発)で障害者手帳を持っているが、現在一般企業でクローズ就労をしている。職種はデザイナーだ。
クローズ就労し始めてから1年3ヶ月、今の会社に転職してから3ヶ月のなかで、「これやって良かったな」と感じるものが確立してきたので、備忘録として書いておく。


1. 苦手なこと、困りごとを上司や周囲に伝える

オープン就労では必ず行うことだが、クローズでもこれは絶対にやるべきだと感じた。健常者でも人によって得意不得意・好調不調は当然あり、皆それとなく周囲に伝えてフォローし合いながら仕事をしているからだ。
「あ、メモするんでちょっと待ってください」「優先順位わかんなくなっちゃったんで一緒に整理してもらえますか」みたいに軽いノリで言えば良い。
また、私は口頭で物事を伝える際に文章がすぐスラスラと出てこず、脳内で整理しながらじゃないとうまく話せないので、ひとつひとつ物を置くような身振りで「いま整理しながら話してます」と示しながら話すようにしている。(これは理解・許容してくれるかは上司によるかもしれない)

2. 全部メモする

これはすごく大事。なぜなら我々発達障害(特にADHD)は聞いただけの情報や見ただけの情報は高確率ですぐ忘れるからだ。
情報だけでなく、タスクを中断する前にやっていたこと、後でやろうと思っていたことも絶対に忘れるからメモしておこう。
備忘録として機能するのはもちろんのこと、作業中や休み時間などに「そういえばあの話ってどんな内容だっけ?」と気になったときも、メモを見返せばすぐ解決するので、そういう時間の短縮にもなる。メモの引っ張り出しやすさは特性によると思うが、私は「その話は何月何日頃にした」みたいな覚え方なので、「7月第3週メモ」みたいなタイトルでまとめている。

3. タスクの自己管理を徹底的にする

タスク管理ができなくて困る・困られることは多々あれど、タスク管理をしすぎて困る・困られることはそうそう無い。むしろ我々発達障害の段取りや優先順位付けの苦手さ・物忘れの多さを補うためには多少過剰にするくらいでちょうど良い。
ここでオススメしたいのは、数日〜数ヶ月単位の大タスクを管理するだけでなく、その補完として1日単位のタスク管理表も作っておくことだ。これは備忘録としての機能と、大タスクの進捗管理の補完としての機能の2つを担うものだ。
たとえば上司から「あの仕事どうなってる?」と聞かれたとき、同じ進捗状況でも「作業中です、オンスケです」と「昨日枠は作ったんであと流し込めば良くて、さっき原稿もらいました。本日18時までに出せると思います」ではどちらが好印象か?後者だろう。この「この日この時間で枠だけ作った」「原稿もらったら流し込む」を記録できる形式が良い。

4. 迷ったりわからなかったりしたらすぐ上司に聞く

あんまり何でもかんでも聞くともちろん上司の仕事の邪魔になるが、基本的には「悩むくらいなら聞いたほうが早い」ことが多い。自分でやろうと悩んでいて、アイデアが出ず上司に聞いたら他の人に任せるべき事だったことも割とある。
「邪魔にならない程度の質問頻度って結局どのくらい?」というのは永遠の命題だが、その有用な対応策は「質問の具体性を高くし、短く答えられるようにする」だ。具体性を高くする手段としてとっつきやすいのは、自分の考えや仮説をまとめて伝えたり、たたき台を作って見せたりすることだろう。
Slackなどチャットツールを使っている会社なら、チャットのほうが上司のタイミングで返信しやすいし、聞く側も文章でまとめられる。チャットで聞くときでも、自分の考えなりたたき台なりは添えるのが吉だ。

5. 主語・修飾語を言う

これは特にADHDの特性かもしれないが、私は伝えたい気持ちが逸って主語を抜かしてしまい、相手を困惑させることが少なくない。
そのため、多少過剰気味になってでも意識的に主語を言うようにしたほうが良い。主語が抜けていて困ることは多々あれど、主語が足りていて困ることはそうそう無い。修飾語も同様だ。
たとえば、「あ、そういえば返信来たんで返しておきました」とついつい言ってしまいがちなところを「あ、そういえば、○○について△△さんに確認していた件で、返信来たんで返しておきました」と言う。すると、聞く側も「○○についての話ね」と心構えができるし、内容を把握しやすい。

6. 発言することをあらかじめ書き出しておく

特性上、話がとっ散らかりやすかったり何を言いたいか忘れてしまったりする人(私など)は絶対やったほうが良い。MTGや業務連絡で話がとっ散らかったり横道に逸れて戻らなかったりするとイライラされるし、注意されることもある。現職入社当初、これをやらずに話が逸れてると指摘されて平謝りするのを2〜3回やった。
文章形式だとメモ書きとしてノイズが多い(文法、文脈などが気になってしまう)ため、箇条書きを推奨する。

7. 会社の制度をフル活用する

現職はフレックスタイム制である。フレックスタイム制というのは「1ヶ月くらいの単位で勤務時間が指定の時間に足りてれば良い」という制度だ。低気圧だのPMSだので月に2回くらいはフルタイム勤務がつらくなる私の場合、体調が悪くなったらコアタイム終了即退勤する代わりに元気なときは毎日30分程度残業することで帳尻を合わせている。
あと有給休暇が初年度なのに月1で使っても数日余る日数付与されているのでガンガン休んでいる。前述のコアタイム即退勤も合わせると週休2.5日くらいかもしれない。

8. 「作業だけが仕事ではない」と考える

これは自分で考えたことじゃなくて上司から言われてハッとしたことだが、作業要員として雇われるバイトや派遣ならまだしも、正社員の場合は手を動かすだけが仕事ではない。仕事に関連する記事を読んだり、手を止めて考えたり、調べ物をしたり、チャットを確認したりも立派な仕事だ。
また、これは拡大解釈になるが、デザイナーやエンジニアなど頭脳を酷使する疲れやすい職種の場合、気分転換の散歩や15分〜30分程度の仮眠も仕事に入れて良いと思っている。仕事の能率に大きく影響するからだ。

9. オン・オフのメリハリをつける

リモートワークや裁量労働制だとオン・オフの切り替えが難しくなるが、そこを強い気持ちでもって切り替えることで心の健康を保とう。
我々疲れやすい人間は疲れない・疲れを癒やす行為をなるべくしていたいのに、ワーカーホリックな成功者が唱える「一日中仕事のことを考えろ」なんて疲れの極地みたいなことをしていては一生疲れが取れない。仕事をしている8〜9時間以外は意識的に仕事のことを考えないように過ごし、仕事の疲れを癒やすことに専念すべきだ。もちろん、就業時間中にはちゃんと仕事に頭を使っているのが前提である。

おわりに

以上の9つが、発達障害者の私が1年3ヶ月(特に直近3ヶ月)で得たワークハックだ。他にもある気がするが、一旦思い出せる範囲のみ書いた。

ADHDの悩みのタネであるミス対策について書いていないと思われそうだ(し、自分でも思った)が、ミスというのは大抵焦りや疲れから生まれるものなので、ここに書いた工夫によって落ち着いて仕事できていればミスも減るのだ。当然ゼロにはならないので、そこはダブルチェックなり一晩寝かすなり迅速に対応するなりで補うほか無い。

全項目に共通して言えるいちばん大事なことは、「健常者も得意不得意や体調/メンタルの波はあるし、工夫して生きてる」ということである。我々発達障害者はどうしても健常者を量産型スーパーマンのように思いがちだが、実際は我々ほど波や凹凸が大きくないだけなのだ。上に書いたような工夫を1mmもしないで仕事ができているスーパー健常者はごく一部だろう。
そして、健常者は我々が思っているほど仕事をパーフェクトにこなしていない。普通にミスをするし、タスクを忘れるし、MTGのメモを取ってなくて叱られる。だから、我々もミスや段取りを過剰に恐れる必要は無いのだ。

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