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父の定年退職に思う「時間ができた時」に動けるわけではないということ

3月で、実父・義父、2人の父が定年退職した。

うちの父は、再雇用からの65歳定年。
義父は、60歳で再就職せずひとまず家に。

2人の父にはそれぞれ、退職後にやりたいことがあった。

私の父は元ミュージシャンで、26歳までオーディションを受け続け、一度、プロとしてのチャンスを掴みかけたものの、食っていくに至らず、その後就職した会社で定年まで勤めあげた。
在職中も宅録やバンド活動を細々と続けていて
今でも、ギター・歌の腕前はプロそのものだ。
定年したら、会える距離に住んでいる旧友とバンドを結成して
自宅でのギター教室もやってみたいと言っていた。

義父は元バンカーで、ものすごく社交的で、毎日飲み歩いていて、北海道中に友達がいるような人だ。
在職中に、退職後のキャリアを見越して、マッサージの資格を取るためにスクールに通っていた。退職したらキャンピングカーを買って、全道に出張マッサージに行くと言っていた。


その2人が、5月になってどうしているか。
たぶん、何ひとつ進んでいない。

サボっているわけじゃない。

進めない理由が、いくらでもありすぎるのだ。


老親のお世話に、家じまいに

義父のお母さん…「ばあちゃん」は80代で、まだ健在だ。
大きな病気はないが、年々体力が落ちていて
いつ体調が悪化してもおかしくない。
一人暮らしは危ないと、昨年施設に入所した。

田舎には、ばあちゃんの家が残っている。
在職中から何度も通い、家の不用品を片付けたり
ばあちゃんを病院に連れて行ったり。
家は売りに出す予定だそうだが、そのためにやるべきことや手続きはまだ山ほど残っているようだ。

ばあちゃんの体調不良や、片付けのための実家通いが頻繁に続いたこともあり、義父はまだマッサージの資格を取れていない。
もう1年以上スクール自体に行けていないようだ。

まぁ、、行こうと思えば、飲みに行く時間を削って行けたとは思うんだけど…
今も、いける気がするんだけど…

お義母さん曰く
「なんでもハマってはすぐ辞めちゃうの!!今回もきっとそうよ」
「私は、仕事辞めてほしくなかったんだけどね」

とのことだ。

妻の介護に、家事に

私の父は言わずもがな。。
妻…母を半年前に亡くしたばかりだ。
この3年間は、自分のことなんて後回しだったと思う。
最後の半年は、ほとんど1人で介護をしていて
倒れなかったのが不思議なくらいだ。

それでも、母からの手紙には

「お父さんには、音楽があるから大丈夫。好きな音楽がきっと助けてくれるから、続けてね。今までできなかった自分のことをしてね」

と書かれていた。
父は、そんな言葉を支えに生きている。

今の父がどうしているかというと
庭仕事と、家事に追われる毎日だ。

リモートワークの弟と同居しているのだけど
弟から「お父さんこれからは家にいるから、家事を担当してくれ」と
9割がたの家事を押し付け任されたらしい…
(マジで色々言いたくなったが、私が介入するとロクなことがないので…)

「教室やろうと思ってテキストも用意してたんだよ。でも、リモートで家にいる弟の許可がないと家に人を呼べないし。
バンドも、友達が体調悪くてなかなか…。
何より、俺も新しいギターを買ったら、なんか満足して「いいかな」って思っちゃったんだよね」

とのことだった。

昔の私だったら、がっかりしてた


もう少し若い、血気さかんで、自分と他者を切り分けることができない私だったなら、父親たちを見て

「どうしてやらないんだろう!?」
「何か手伝えることはないかな!?」

とヤキモキしていたかもしれない。

特に、自分の父については、父のこの先が心配な気持ちから

「きっと、音楽を頑張ったら幸せだよ」

という私の価値観で
「え、やってみなよ」とか「こうしてみたら」とか「このままでいいの!?お母さんがああ言ってたのに」とか、色々おせっかいを焼いていたかもしれない。
そして、やりすぎて喧嘩になって、拒否されて
「お父さんのことを思って言ったのに!」と、ショックを受けるところまでがセット。

でも、今の私は色々経験してきて

「本人が追い詰められたり、本当に必要と思わない限り、周りが何をしても動くものではない」

「本人の気持ちがついてくる前に色々と介入したり、世話を焼いたりすることは、その人の人生を奪ってしまう」

ということを知っているので

「やらないのかなぁ」
「元気なうちに、やったらいいなぁ」
「やる!って言い出したら、手伝おう」
「でも、やらなくたっていいんだよなぁ」

と思っている。

それと同時に

「いざやりたい、と思った時に、体がついていかなくなりませんように」

とも、思っている。

社畜の気持ちは、わからない

お義父さんは、新卒から。
父だって、20代の時から。
同じ会社で定年まで勤め上げたのだ。
当然、副業もしていない。
何か外で勉強をしてきたわけでもない。

勤め人をたったの7年しか経験しておらず
すぐに外の世界に飛び出して起業した私には
2人の気持ちも、どんな世界が見えているかもわからない。

義父は、外の情報を取り入れるのが好きだったので
今も、旧友と動画編集などに取り組んだり
創業の制度や補助金に詳しかったりする。
若い人にモノを頼むことに抵抗もないし
無駄なプライドも持っていないので
やる、と決めたら、人脈でやれちゃうかもしれない。
よっぽど計画的にやらないと、趣味の延長かなぁとは思うけど…

うちの父はというと、めちゃくちゃ頭がカタイ。
世間とズレているから、自由で柔軟そうに見えて
SNSとか、起業とかには全く縁がない。
私の意見には否定から入る。
私が「お父さん、ギターのTikTokやってみる?撮ってあげるよ」
と言ったときの拒否反応と言ったらすごかった笑
世間とズレていて飲み会嫌いゆえに、友達も少ない。

そう、2人とも、真面目なんだ。

人付き合いを大切に
家族を、家事を優先して
その余った時間で自分のやりたいことって、なかなかできない。

好きなことをやり続ける、お金を稼ぐ

それには、未来のために自分を優先する勇気と
新しいこと、他者の話を受け入れられる柔軟な心
そして、体力がいる。

でもきっと2人は、そういう力が残っていないし
発想がない。

だから今こそ頑張れ中年、なんて私には言えない…言わない


自分は今、プライドや自分のやり方を捨てて学び直す必要を感じて
学びも、動くことも途切れないようにしているし

今の自分の頑張りが、家族の未来にもつながってくると思うから
自分のことを優先させてもらうし

いつまでも、人の話をちゃんと受け入れられる自分でありたいなと思う。

でも
たとえば中年の人たちに
定年してこうならないように頑張れとか
まして、定年した人たちに
「そのままじゃダメだよ」とか言えない。
ってか、言わない。

それは、その人の人生はその人にしかわからないというのもあるけど

自分よりずっとずっと人生経験豊富で、仕事できる人がほとんどだ。
でも、「俺将来のために積み上げてます」という感じの人でさえ
50代以上の人って、頭カタいし変わるのに時間かかるなぁ、最悪変わらないかも、と思うから。

あとは、前半でも言ったとおり
どんなに言っても、受け入れる体制じゃない人には届かないから。

「響きました!」とレスポンスをくれるのは
私よりずっとずっと頑張っているおじさまたちだ(^◇^;)

だから、私は私の人生を頑張る。
自分もきっとどんどん頭がカタくなる
カタくなってから自分に何か言ってくれる人なんていない、と自覚しながら
抗ってみる。


そして、じーじたちが

「やってみようと思うんだ、手伝ってくれないか」

と声をかけてくれた時には
動画でも、チラシでも作ってあげる準備はできているよ。

だからね、うまくいくとかいかないとかいいんだ
元気なうちに、声かけてよね。

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