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人生の分かれ道はどこ?ーチョイスポイント(ACT実践編⑧)

前回までは、
「アクセプタンス」(受け容れること)という
ACTにおける感情へ対処するプロセスを
説明しました。

前回の記事では、「不安」という感情に対して、
「抵抗スイッチ」というメタファー(たとえ)
を使った考え方を紹介いたしました。


さて、今回は感情から少し離れて
もう少し全体的な視点に戻ります。

この記事では、
ACTにおいて比較的近年導入された
「チョイスポイント」という考え方を
ご紹介します。

私が一連の記事でご紹介している
ACTは、認知行動療法という
心理療法の流れから生まれたものです。

認知とは、ざっくり言うと
思考、考え方のことです。
(一般的な思考よりは広い意味合いです)

行動というのは、
そのまま外に現れる行動のことです。

こうした思考(認知)と行動は、
切り離せません。

少し歪んでしまった認知が、
有効じゃない行動につながります。

しかし、
認知が歪んでいなくても、
行動が習慣になっていて
思ったような行動ができないこともあります。

これまでの記事でともに学んだ、
脱フュージョンやアクセプタンスは
どちらかというと認知の問題です。

嫌な考えにとらわれてしまったり
(フュージョンの状態)
感情に振り回されてしまったりする。
(体験の回避の状態)

それらを、
エクササイズという体験的な手法で、
捉え直してみるようなものでしたね。

今回の記事は、
もう少し行動寄りの内容です。

つまり、

もし、あなたが今

「変えたいと思っているけど、
 いつもの行動をとってしまう」

「やめなきゃと思っているけれど
 どうしてもやってしまう」

そのように行動の面で
苦しさを感じているのなら、
この記事がお役に立てるかもしれません。


なぜやめたい行動をやってしまうのか

まずこの問題には、背景とする理論により
いろんな説明のしかたがある、
ということは心に留めておいてください。

その上で、ACT流の説明をいたします。

私たちは、
「やめたい」と思っている行動を
ついついやってしまうこと
がありますね。

それは、
「缶コーヒーを買ってしまう」
という様な軽微なものから
「アルコールがやめられない」
という依存に関わるものまで。

はたまた、
「ついつい子どもを強く怒ってしまう」
とか
「上司を前にするとうまく意見が言えない」
という人間関係に影響するものもあります。

では、
その行動が「よい」か「悪い」か
は何で決まっているのでしょうか?

ACTでは、
それは「文脈」で決まります。

「文脈」というと
ピンとこないかもしれませんね。

簡単に言うと
「その行動の前に起こったこと」
→行動
→「その行動の後に起こったこと」

の流れのことです。

例えば先ほどの
「つい缶コーヒーを買ってしまう」
という場合を考えてみましょう。

「缶コーヒーを買う」という行動の前には、
実はいつも「コンビニへ寄る」という状況が
あったとします。

そして、
「缶コーヒーを買う」という行動の後には、
いつも「まただ、無駄遣いだ」という気持ちが
あったとします。

そうすると

「コンビニへ寄る」という状況
→「缶コーヒーを買う」
→「まただ、無駄遣いだ」という気持ち

という文脈が見えてきます。

例えば気持ちが
「よしスッキリ今日も頑張るぞ!」
となっているなら、きっと問題はないのです。

「まただ、無駄遣いだ」と
後悔しているということは、
この行動はその人にとって有効な行動じゃない。

そこまでわかったら、
「コンビニへ寄る」時に注意して、
缶コーヒー売り場へ寄らない様にするとか
コンビニへ寄らず弁当にするとかの
対応ができます。

このように、
行動は文脈によって決まり、
その文脈を分析してみることで、
より有効な行動に変えていく

というのが、
基本的なスタンスです。

チョイスポイントとは何か

さて、本題です。

先ほどからの話で、
ついついやってしまうこと
が出てきています。

このついついやってしまうことは、
実はその行動によって良い面
もあります。

というか、
良い面もあるから、
「やってしまう」のです。

先ほどの缶コーヒーの例で言えば
無駄使いなんだけど、
やっぱり飲むとおいしいとか
飲むとスッキリするとか

そうした良い面はあるのです。

でも、そうした良い面を考えても
今はやめたい行動となっている。

もっとより良い行動を取りたい、
そう思っている状態だと
少し苦しくなりますね。

今回紹介するチョイスポイントは、
そんな行動の問題に
特に利用できるモデルとなっています。

「なんだそんなものか」
と思うくらいシンプルです!

でも、シンプルだからこそ強力で、
ACTの第一人者のラス・ハリスさんが
好んで使用しているものなのです。


それでは、ここから少し
実際に話しているように
チョイスポイントを解説してみます。


ここで、ちょっとした
絵を描きながらお話ししても
いいですか?

これから、あなたの行動を
変えていくうえで、
効果的な案内図のようなものです。

私もあなたも、
地球上にいるすべての人は
生きている限り何かをしています。

食べたり、飲んだり、歩いたり、
話したり、踊ったり、寝たり、、と
常に何かをしています。

ただぼーっとしているのでも、
「ぼーっとしている」をしています。

そして、私たちがすることの中には、
人生をより良い方向に進むのを
助けてくれるような行動があります。

そういう行動を
「進(すすむ)ムーブ」
と呼ぶことにしましょう。

進ムーブは、
あなたが人生でもっと増やしたいとか、
始めたいと思っている行動
のことです。

なので、進ムーブをしている時は、
自分が人生をよりよくするよう
行動できているとき、

「こうありたい」と思う自分のように
振る舞えているとき、

とも言えます。

充実した気持ちで
時間を過ごすことができます。

進むムーブの矢印が向かう先には、
あなたが人生で大切にしたいこと、
実現したい価値やありたい自分があります。
私は、そうしたものをテツガクと呼んでいます。

しかし、
問題なのは、私たちの行動は
こうした進むムーブだけではない
ということです。

まったく逆の行動もとります。
つまり、本当に望んでいる人生から
遠ざかるような行動のことです。

これを
「逸(それる)ムーブ」
と呼ぶことにしましょう。

逸ムーブをしているときは、
長期的に自分の人生をよくしない
行動をとっていたり、

「こうありたい」と思う自分のように
振る舞うことができていない
ときです。

なので、基本的に逸ムーブは、
あなたが人生で減らしたいとか
なくしたいと思う行動
です。

これは、私たちの誰しもに
当てはまると思いませんか?

一日の中で、いろんな行動をしていて
その都度、意識的あるいは無意識的に
「どっちがいいかな」と選択をしています。

調子がいいときは右の
進ムーブの行動をとりやすいですよね。

でも、
人生はなかなかそう簡単にはいきません。

何か不都合な状況だったり、
嫌な考え、嫌な気持ちが出てくる
こともあります。

問題なのは、
そういう厄介な考えや気持ちが現れたら
逸ムーブへ「釣られる」ことが

ほとんどの人にとってデフォルト設定と
なっている、
ということです。

厄介な考えや気持ちは、
私たちの心を釣り針で引っ掛けて、
より良い人生とは違う方向へと
手繰り寄せていくのです。

釣り針に引っかかった
私たちの心は、それから逃れようと
イライラしたり、不安になったりします。

その結果、
逸ムーブをとってしまいやすくなります。

こうしたことは、
どんな人でも多かれ少なかれあります。
全くないという完璧な人間はいません。

ですが、
これが頻繁に起こると問題になります。

いわゆる心理的な問題とされる
依存症や不安症、うつなども
突き詰めれば、このプロセスで起こります。

つらい考えや気持ちの釣り針に釣られて
逸ムーブを取り続けてしまうのです。

しかし、時には
かかった釣り針を自分でうまく「はずして」
より良い人生のための行動を
取れることがあります。

そうして、はずすことが
うまくできるようになると
よりよい人生のための行動ができ
人生や生活の質が上がっていきます。

なので、
困難な状況に置かれて、
厄介な考えや気持ちが現れた時に
実は選択肢があるのです。

そうした考えや気持ちに
「どう反応するか」
という選択です。

厄介な考えや気持ちに
「釣られる」行動をするか
「はずす」行動をするか。

そうした時こそ、選択の余地がある
「チョイスポイント」にいるんだ

そう思ってみるのはどうでしょうか。



どう使ったらいいの?

さて、ここまでで
チョイスポイントの概要を
書いてきました。

モデル自体はとてもシンプルですよね。
きっとあなたも、
もう何も見なくても書けるのでは!

進ムーブ、逸ムーブなんて言葉も
とても面白いネーミングですよね。

「ACTは難しい」とよく言われますが、
とてもキャッチーな側面もあると思います。

さて、じゃあ
このチョイスポイントを
どう使えばいいんでしょうか?

一つにはシンプルに、
先ほどの図を使って

自分が日頃、進ムーブをしているのか
それとも逸ムーブか
を振り返る
のもよいでしょう。

意外と、自分としては
「気晴らし」と思っていたことが、
考えてみると逸ムーブだった、

なんてこともあります。


しかし、
モデルだけでは若干使いづらいので、
私の方でワークシートにしてみました。

少し説明が必要ですね。

もし、あなたが
ついやってしまうけど
やめたい行動があるとします。

それは、ほぼほぼ逸ムーブでしょう。

まず、その行動を逸ムーブの左の
<行動>に書きます。

次に、その行動が起こる時の、
<状況><気持ち><考え>を書きます。

<気持ち><考え>は広く
イメージしたものなども含め
心の中を書いてみてください。

そしたら次は、
逸ムーブの先にある
<見返り><コスト>を書きます

この2つは、最初の話でいう
「行動した後に起こったこと」です。

その行動によって起こるよいことは
<見返り>

悪いこと、人生にとって害になることは
<コスト>

です。

モノや金銭の話よりも、
むしろ精神的な良いこと悪いこと
書きます。

ここを書いてみると
やめたい行動にもよい部分というか、
快につながることがあることがわかります。

一方で、
それによって起こるコストもわかります。
並べてありますので、
ぜひ比較して見てみてほしいです。

コストの方が大きく感じるなら、
その行動はやはりやめた方がよいでしょう。

そして最後に、
あなたが取りたい
進ムーブを記入します

書ければ、
その<見返り><コスト>まで
書いてみましょう。

そうすれば、
その行動が有効であることが
事前に自分で理解できます。

このモデルに沿って
書き出しながら自分の行動を
分析してみるのです。

もちろん、
これを書いてすぐ
行動を変えられる人もいますし

変えるのに時間がかかる人もいます。

大事なのは、
自分の行動がどうして起こるのか
<状況><考え><気持ち>に気づくこと

そして、
自分の行動の<見返り><コスト>を
冷静に分析すること。

それを書き出してみることで、
その効果は増します。

ぜひ、行動を変えたい方は
やってみてください!


おわりに

最後までお読みいただき、
ありがとうございます!

今回は、行動について
チョイスポイント」という
モデルを紹介しました!

繰り返しになりますが
このモデルは、シンプルかつ強力。

ぜひ一度使ってみてほしいと思います。

もし、ワークシートを使ってみた方が
いらっしゃったらコメントくださると
とっっっても嬉しいです!!


ACTの全体像については、
以下の記事をお読みください!

また、私の運営するジブンテツガク・プログラムでは、
ACTをベースとした心理スキル習得のための
エクササイズ
も提供しております。

プログラムの詳細はこちらをご覧ください。

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