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「これ、やらなくても良かったな」の方がいい

引っ越しを間近に控えた夜、心にじわじわと不安が広がるのを感じていた。

神奈川県の辻堂に越して来たときには、味わっていない不安。辻堂はそれなりに都会で、昼も夜も道には誰かしらが歩いていて、街灯もあって、割と頻繁にコンビニもあるような場所だった。だから「都市よりもちょっと自然がある場所」に、ふらりと行くような感覚だったのだ。

しかしこれから「そうではない場所」に行くのだと思うと、楽しみな反面、本当に大丈夫なのだろうかと思った。

はじめての地方移住。行く先は静岡県の伊豆高原。

海も山も森もある。自然が豊か。ゆえに生活も行動も考え方も、これまでの都市に対応した思考から、がらりと変える必要がある。

引っ越し準備のために訪れた、伊豆高原の夜。街灯はほとんど無く、誰ともすれ違わない。星達が煌めく夜空を見上げると、心細さがちくりとわたしの弱いところを刺した。

新しい道を選ぶときは、いつだって不安だ。

先の見えない恐怖と、自ら安定を打破して不安定をつくり出す違和感に、「大丈夫なのだろうか」と毎度思う。

それでも新しい楽しさは「やったことがないこと」の中に隠れていて。

新しい楽しさを味わえるかどうかは、やってみないと、わからない。やってみて「大正解だったな」と思うこともあれば、「やっぱりやらなきゃ良かった」と思うことだってある。

わたしは自分の人生の物語をなるべく楽しく味わい深いものにしたいので、「やってみたい」と思ったことは、できる限りチャレンジしていきたい。

とはいえ「チャレンジしたい」と思っているからといって、不安を感じないわけではない。怖いし、心細いし、逃げ出したい。自分で始めたことなのに、変だなあとは思う。

そういうときに思い出すことにしているのは、「やらないで後悔するの嫌だよね」ということ。ずっと挑戦せずに、未練を持ちながら、仕方なく生きるのなんて嫌だ。だったら、とりあえずやってみて「これ違ったね」「やらなくても良かったね」と思うほうがいい。

致命的なこと以外は、たいてい取り返しがつくのだ。勉強代を払ったと思えば、だいたいのことは後戻りできる。

今回の地方移住だって、そう。合わなければ、戻ったらいい。やってみたからこそわかることを、知るための挑戦なのだから。だいじょうぶ、大丈夫。

きっとどうにかなるし、それでもどうにもならなかったら、また選び直せばいいよ。

新しい工房にて

そんなこんなで、静岡県伊豆高原での暮らしが始まった。

新しい家、新しい工房、お店になる予定の場所、何もかもが新鮮。

越してきてしまったので多少は腹がくくれたのか、不安はちいさくなった。少しずつ場所に馴染んできたからなのかもしれない(わたしは激しく場所見知りをするのだ)。

今は楽しみの方が大きくて、これからの生活にわくわくしている。今後はどうだかわからないけれど、とりあえず今、楽しみが大きくなってくれて良かったなと、ほっとしてる。

さて、これからどうなっていくのか。心の動きを観察しながら、新しい楽しさを発見していけたらいいな。


おわり


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