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【ハマスとイスラエル~米国シンクタンクの違い】ヘリテージ財団「米国はガザの早期停戦に反対すべき」

こんにちは。自由主義研究所の藤丸です。

今回も引き続き、「ハマスとイスラエル」について、
米国のシンクタンクが現時点でどのような考えをしているか、レポートを紹介しようと思います。

※このレポートの見解について、自由主義研究所や藤丸が賛同しているというわけではありません。


今回は、米国の保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」のHPに掲載されているレポートを紹介します。
ヘリテージ財団は、米国共和党の政策決定に大きな影響力をもっている有数のシンクタンクです。

紹介するのはMario Loyola氏の
「The U.S. Must Oppose a Premature Cease-Fire in Gaza」
「米国はガザの早期停戦に反対すべき」(2023年10月16日掲載)です。
(この記事は「ナショナル・レビュー」に掲載されたものとのこと)。

全文は以下から読めます。

※前回紹介したケイトー研究所とミーゼス研究所の掲載記事も合わせて御覧ください。↓


以下の太字と(※)はすべて筆者(藤丸)です。

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「米国はガザの早期停戦に反対すべき」


ジョー・バイデン大統領は、
「我々はイスラエルとともにある。そして、イスラエルが自国民を保護し、自国を防衛し、この攻撃に対応するために必要なものを確保できるようにする」と、イスラエルへの強力な支持表明をした。

しかし、イスラエル国民は以前にもアメリカの大統領からこのような発言を聞いた。その時は、その数週間後には作戦を終了し、早すぎる停戦に同意するようにというアメリカの圧力に失望させられた。

バイデン大統領と議会が言うべきことは、
「米国はイスラエルがハマスに完全勝利するために必要なすべての時間、資源、外交的援護を確保する」ということだ。

言い換えれば、米国はいかなる国連安保理の停戦決議にも拒否権を行使し、イスラエルの条件以外ではいかなる第三者の停戦調停も無視するということだ。
米国はイスラエルに、停戦条件を「無条件降伏」にするように促すべきだ。
ハマスが始めた戦争を、ハマスを生かしたままで終わるべきではない。


米国とイスラエルが思い出すべきは、第二次世界大戦がどのように始まり、どのように終わったかということだ。
第二次世界大戦の開戦時、米国と同盟国は、枢軸国に対する「完全勝利」を約束した。彼らは、「枢軸国が無条件降伏に基づいて武器を捨てるまで」戦い続けることを誓った。
ドイツ人は、連合軍がドイツに侵攻したときにその意味を知ることになる。
連合軍遠征軍最高司令部の布告第1号で、ドワイト・アイゼンハワー将軍は、ナチズムを「抹殺」し、ドイツ軍国主義を「根絶」することを誓った。
「占領地にいるすべての者は、軍政のすべての制定と命令に、疑問の余地なく即座に従う」と彼は宣言した。
「連合軍への抵抗は無慈悲に排除される」。

占領軍によって占領された地域では、ドイツ人は爆撃で破壊された都市の瓦礫の中を砲弾の衝撃を受けながら彷徨った。
ドイツ人は、完全に打ちひしがれ、完全に敗北し、いつか世界が自分たちの言いようのない犯罪を許してくれることを願っていた。
それこそが、ハマスとその多くのパレスチナ人支持者が今直面すべき運命なのだ。


文明世界はイスラエルへの全面的な支援を惜しんではならない。
ハマスが標的としたのはイスラエル人だけではない。
アメリカを含む多くの国の市民が、ここ数日、拷問され、残酷に殺され、人質に取られている。
イスラエルがハマスの存在を容認できる時代は終わった。
ホロコースト以来の凶悪な攻撃をユダヤ人に加えたハマスには、ナチスと同じ運命が待っている。

そして、ハマスやその他の誰かが停戦を提案するとき、イスラエルとアメリカは、1862年のフォート・ドネルソンの戦いにおけるユリシーズ・S・グラント将軍の毅然とした言葉を思い起こすべきだ:「無条件即時降伏以外のいかなる条件も受け入れることはできない」(※)

(※)フォート・ドネルソンの戦い

南北戦争初期の1862年2月12日から16日に、西部戦線テネシー州西部で行われた戦い。北軍によるこの砦の占領によって、カンバーランド川は南部への進入経路として開かれ、ユリシーズ・グラント准将は少将に昇進すると共に、それまで目立たずほとんど実績のない者であったのが、「無条件降伏」のグラントと渾名されるようになった。


ガザの惨状が明らかになるにつれ、停戦を求める声は、イスラエルが "不釣り合いな武力 "を行使しているとの非難とともに上がってくる。
自衛のために行使される武力は、侵略者が行使した武力のレベルに「比例」していなければならないという誤解が一般的だ。
しかし、それはとんでもないルールである。第二次世界大戦のように、誰かが始めた戦争で決定的な勝利を収めることは、本質的に違法となるからだ。
国際法では、比例性は軍事目的によって決まる。
ジュネーブ条約第1議定書によれば、戦闘員は得られる「具体的かつ直接的な軍事的利益」との関係で、過大な民間人の犠牲を避けなければならない。軍事目的が合法的であれば、その目的を達成するために「必要かつ比例的」な武力も合法的である。


先週の恐ろしい攻撃の後、「ハマスの完全な破壊がなければ、血に飢えた断固とした殺人鬼(ハマス)に囲まれたイスラエルが生き残れるだろうか?」とイスラエル国民が疑念を抱くようになる、とイスラエルが結論づけるのは正当なことだ。
イスラエルは、そのような疑念を放置しておくことはできない。

第二次世界大戦の開戦時に連合国が行ったように、イスラエルには「ハマスの無条件降伏か完全破壊」を求めるあらゆる権利がある。
イスラエルには、避けられる民間人の犠牲を避ける義務がある。
しかし、パレスチナ人の生命を無差別に無視して戦っているのは、イスラエルではなくハマスだ。
ハマスは何年もかけて、学校の中や病院の隣から、イスラエルに無差別ミサイル攻撃を仕掛けてきた。これは、イスラエルの民間人に対する戦争犯罪であり、イスラエル自身に対する戦争犯罪でもある。

ハマスがパレスチナの女性や子どもたちをプロパガンダの材料として扱うのは、彼らが死んだときがもっとも価値があり、イスラエル人の人権への関心を弱点に変えることを狙っているからだ。
この卑劣な戦略はこれまで功を奏してきたが、単なるプロパガンダのトリックにすぎず、世界はもはや容認すべきではない。
ハマスが「人間の盾」を使ったために避けられなくなった民間人の犠牲は、すべてハマスに帰する戦争犯罪である。


1945年のナチス・ドイツの完全破壊のように、ハマスの完全破壊は、短期的には罪のない市民に大きな苦しみをもたらすかもしれないが、長期的には唯一の希望なのだ。
確かに、ハマスの壊滅は、ガザの再占領などイスラエルが対処したくないことを伴うだろう。しかし、それはイスラエル次第である。
一方、繰り返しになるが、米国は数年前に言うべきだったことを明確に言うべきだ。「イスラエルの敵が始めた戦争では、イスラエルが完全勝利を収めるために必要な時間、資源、外交的援護をすべて与える」と。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

いかがでしたでしょうか?
今回のヘリテージ財団のレポートは、個人的には、極端で怖いなと思う部分がありました。ハマスが第二次世界大戦のアメリカの敵国(ドイツが名指しされていますが、日本もですよね)に例えられているのもありますが…。
皆さんはどう思われますでしょうか?


自由主義系といわれるケイトー研究所やミーゼス研究所と、保守系といわれるヘリテージ財団では、外交安全保障分野ではかなり論調が違うことがよくわかると思います。
米国内でも様々な立場や意見があることを知ることは重要です。
今後も注目していきたいと思います。

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