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【ハマスとイスラエル~米国シンクタンクの違い】ミーゼス研究所「イスラエル情勢のエスカレートは米国にも破滅的な結果をもたらす」

こんにちは、自由主義研究所の藤丸です。

前回に続き、ハマスの攻撃から始まった「ハマスとイスラエルの戦争」について、アメリカのシンクタンクのレポートの紹介の2回目です。

※このレポートの見解について、自由主義研究所や藤丸が賛同しているというわけではありません。


今回は、アメリカの自由主義系シンクタンク「ミーゼス研究所」のHPに掲載されているJeremy Powell氏のレポート、
「ESCALATING THE SITUATION IN ISRAEL WILL ALSO HAVE CATASTROPHIC CONSEQUENCES FOR THE USA」(イスラエル情勢のエスカレートは米国にも破滅的な結果をもたらす)(2023年10月10日掲載)を一部省略・要約して紹介します。

自由主義系シンクタンクといっても、ケイトー研究所とミーゼス研究所の掲載レポートはかなりニュアンスが違います。

※前回紹介したケイトー研究所の掲載記事も合わせて御覧ください。↓


以下の太字と(※)はすべて筆者(藤丸)です。
ミーゼス研究所のHP ↓ に全文が載っています。全文も短いのでぜひ御覧ください。


イスラエル周辺の図(この図とレポートとは関係ありません)

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「イスラエル情勢のエスカレートは米国にも破滅的な結果をもたらす」


ハマスがイスラエル領内を攻撃し、罪のない市民を誘拐、強姦、殺害したというニュースが流れた。
すると、「ウクライナへの資金提供」に反対する共和党の運動から一転、
すべてが2003年の共和党員も民主党員もほぼ全員がイラク侵攻の承認に票を投じた日々のように、一瞬にして変わってしまった。

リベラル・進歩的介入主義のイデオロギー的、地政学的目標にとってのイスラエルの重要性、さらには福音主義者にとっての神学的重要性を考えると、ハマスがイスラエル南部に電撃侵攻したというニュースが届くと、その大合唱はさらに大きくなった。

共和党員の多くはこう言う「なぜイスラエルではなくウクライナに武器を与えるのか?」
もはや自制の原則を保持しなくなった多くの "反戦 "共和党は、民主党とどちらがより多くのイスラエル支持を示せるかを競うことにした。


神学的な観点で語ることはできないが、ハマスが行ったこと、そして現在行っていることは恐ろしいことだ。


イスラエルが戦争状態に突入しハマスだけでなくガザ全体を破壊することを誓う中、アメリカからの後方支援と軍事支援が、この地域での緊迫した戦争の引き金になるかもしれない。


イランの支援を受けたテロリスト集団ヒズボラ(※レバノンの親イラン組織)は、すでに紛争に関与している。
アブラハム和平合意(※2020年8月に締結された、アラブ首長国連邦とイスラエル国間における平和条約及び国交正常化)は崩壊しつつある。
また、サウジアラビアは現在の状況の責任をイスラエルの対パレスチナ政策に押し付けて、イスラエルを非難している。

中東周辺の図(この図とレポートとは関係ありません)



イスラエルとアラブ世界の間の深い敵対関係は、さらに悪化の一途をたどるだろう。
テルアビブ(※イスラエル最大の都市。イスラエルを指す)は、戦争犯罪に等しい手段を採用することを決定した。
特にこの地域で立ち往生している200万人のガザ人への水と電気の供給を断ち、ガザ全体を併合する準備を整えつつある。

イスラエルが目標を達成するのを助ける動きは、この地域の宗派的性質が、アメリカとイスラエルを六日間戦争(※第三次中東戦争)やヨム・キプール戦争(※第四次中東戦争)で見られたような泥沼に追い込むことになり、ワシントンDCにとって大きな災難をもたらすだろう。


アラブ政府はこれを放置することはできない。
そして最大の危険は、すでに過激化している多くのアラブ系イスラム教徒が、イスラエル消滅を望むようになるという事実である。

さらに、共同体の連帯という格言はアラブ人の思考に深く刻み込まれている。つまり、200万人のガザ人に何が起ころうとも、福音派とユダヤ人の最悪の恐怖につながりかねないということだ。

米国とサウジアラビアの緊張関係に加え、ガザの完全包囲が進行している今、OPECによる西側諸国へのボイコットが起こるかもしれない。
戦略的備蓄は底を尽き、現政権の採掘禁止と相まって大惨事となるだろう。




イスラエルとアラブ世界の関係は決して平穏ではないにせよ、大規模な戦争は双方とも望んでいない。
湾岸諸国の多くは、経済的な理由からイスラエルと非公式な関係を結んでいる。

テヘラン(※イランの首都。イランを指す)は公然とイスラエルを地図上から消し去ることを主張しているが、冷静さを保つことは重要だ。
テヘランはハマスに資金を提供しているが、ハマスは、イスラエル国防軍との戦いがガザに災いをもたらすことを熟知しているため、取引に応じようとしている。
ハマスによる罪のない人々の殺害や誘拐が卑劣なものである以上、彼らとの取引に応じ、人質を開放することは有益である。

多くのアラブ諸国は200万人もの人々が避難することを望んでいないし、ガザを占領すれば、イスラエルがイスラム教で最も神聖な場所のひとつとされるアル=アクサー・モスク(※)に何かするのではないかと恐れている。

(※)アル=アクサー・モスク

立地はイスラエルの実効支配下にあるが、管理はヨルダン宗教省がワクフとして行っている。

ハマスは、10月7日の攻撃を、イスラエルによるアル=アクサー・モスクへの冒涜に対する報復のためと表明している。過去にもイスラエルが襲撃した。


この目標を達成する最善の方法は、テルアビブ(イスラエル)に白紙委任状を与えるのではなく、一切の保証を取り除くことである。

イスラエルとこの地域を、「大規模な戦争」と「OPECのボイコット」に巻き込むことを避けることは、一手で可能だ。

また、テヘラン(イラン)とスンニ派アラブ世界を結びつける唯一のものがパレスチナである以上、テヘランの影響力は非常に誇張されている。
イランの経済はボロボロで、この地域では技術的に孤立しており、シーア派が支配するシリアとレバノンだけが同盟国であり、カタールはあらゆる方面と手を結んでいる。
しかし、ヒズボラとテヘランの外交政策に関しては、中立の範囲を超えており、ワシントンDCのテーブルから外れるべきだ。


結局のところ、問題は、部族間の戦争としか言いようのないものに、なぜDC(※ワシントンDC。米国政府)がアメリカを巻き込んだのかということだ。

DCにとって人権がそれほど重要なのであれば、ユダヤ教徒であれイスラム教徒であれ、中東の誰にも白紙委任状を渡すべきではない。
この地域の紛争を調停し、民主主義を確立するための大規模な社会工学プログラムを実施しようとするのは、決して実現可能ではなかったのだ。

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最後まで読んでくださりありがとうございました。

次回は、ヘリテージ財団HP掲載論文を紹介します。

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