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1杯のラーメンから考える「価格」の難しさ

こんにちは。自由主義研究所の藤丸です。

4ヶ月前に書いた「経済とは人間の行為だ」という記事が100すきを突破しました‼読んでくださった皆様、ありがとうございます😊
未読の方、ぜひ読んでいただけると嬉しいです ↓

今回は「価格」の話です。

個々の商品の価格(値段、料金)は、売り手が最終的に決定しています。

例えばあなたが商店街の八百屋の店主だったら、リンゴをいくらで売ろうかを決定する時、どのようなことを考えるでしょうか?

リンゴ、いくらで売ろうかな~?

・リンゴの仕入れ値
・リンゴの出来(大きさ・甘さ・鮮度など)
・自分の店の経営状態
・店のブランドイメージ(高級ブランドのイメージにしたいか、キズありでも安くて美味しいものの店にしたいかなど)
・ライバル店ではいくらで売っているか
・買いたい人がどのくらいいるか・・・

などを考えて、最終的に決定すると思います。


そして、一般には、買いたい人が多いと商品の価格は高くなります。
特に商品の数が限られている場合、買いたい人すべてが買えるわけではありません。
極端な例では、「競り(セリ)」の場合、一番高額で入札した人だけが買うことができます。

売り手側は「良い商品だから欲しい人がたくさんいるはずだ。価格を高額にしても売れるはずだ」と思えば、高額の価格で売りに出すと思います。

皆(多くの人)がほしがると、価格は上がるのです。

これは一番シンプルな「需要曲線・供給曲線」も示しています。

需要曲線・供給曲線


でも、皆(多くの人)が欲しがらなくても、売り手があえて高い価格に設定することもあります。

例えば「高級会員制クラブ」は、提供する商品・サービスが良いことで料金が高いとも言えますが、価格を高額にすることで「質の悪い客を締め出す」効果が大きいと思います。
お金持ちにも質の悪い人はいますが、少なくともひやかし等の客は減ります。
有名人のファンクラブでも、ある程度高額な会費に設定することによって、アンチを排除できます。


価格が低い場合(とくに無料の場合)は、多くの人に認知してもらい試してもらえる利点がある一方、アンチなど嫌がらせ目的の人も集まってしまいます。


このように「あえて、皆(多くの人)に買ってもらいたくない。特定の客(対象者)を選びたい」場合にも、価格設定は利用できます。


また、皆が欲しがり高価格でも売れそうな場合でも、あえて安い値段で販売することもあります。
少しでも多くの人にその商品を買ってもらいたい場合や、
ブランドイメージ(安いのにモノがよい)を作りたい場合、
利益を減らしてでもお試し商品を多くの人に買ってもらい、目的である自社の他の商品を買ってもらいたい場合などです。


こう考えることもできると思います。
価格により、売り手は「メッセージ」を発することができる。
買い手側もそのメッセージを受け取り、店側の意図を理解できる。

※この自由主義研究所のnoteも一部を有料にしていますが、これは、
「無料の記事より価値が高いから、有料でも読んでくれるだろう」というよりも、「このテーマについて特に興味のない人は、別に読まなくてもいいと思います」という意味で有料にしている場合があります。
ある人にとって価値があるものでも、他の人にとってはまったく価値がないものもありますよね。まさに「主観的価値」です。


そして、客が商品を買うことで、店側は「答え」を知ることができます。
どういう層の人が、関心があるのか、意外と売れた数が多い・少ない…等。その「答え(買い手からのメッセージ)」によって、売り手は次の戦略を考えることができます。


商売の形は多種多様です。
少数のお金持ち相手に、販売数は少なくていいから1件あたりの利益が大きい商品を売る、というやり方もあるし、
安価ファッション店や牛丼屋・100円均一のように、多くの人に買ってもらうかわりに1つあたりの利益は少ない(薄利多売)という商売のやり方もあります。

世の中の景気状況によって、どのやり方の商売が増えるかは変動はしますが、好況・不況のいずれの場合にも、様々な商売のやり方が存在します。


すごく価格が安くて、こんなの利益あるのかな?と思うような商品も、意外と大量に売れることでトータルの利益が大きかったり、
一つあたりの利益を大きく取りすぎて、価格が高すぎて予想よりも数が売れなかったり…。

商売が難しいところです。

「価格を上げれば儲けが増える」なんて、そんな単純なら、こんなに簡単な経営はありません。



また、「価格が高い商品は利益が大きい」とも言えません。
利益は、売値からコストを引かないといけません。
代表的なコストには、原材料費や人件費があります。
(他にも店舗の運営費や税金などもかかりますが、複雑になるので、一旦おいておきます)

コストと価格の兼ね合いで、利益が変わります。
「価格を上げれば、利益が増える」「価格を上げなければ利益は増えない」
これらはどちらもおかしい話です。
コストによって、利益は変動します。


売上数が同じだと仮定してみます。価格を上げなくても、工夫してコストカットできれば利益は増えます。価格を上げなくても、コストが上がれば利益は減ります。
価格を上げても、それ以上にコストが上がれば利益は減ります。

そして、これは売上数が同じだと仮定しましたが、価格をあげれば「高くなったから買うのやめよう」と売上数が減ることはよくあります。
価格を上げることで1個あたりの利益が増えたとしても、売上数が減るとトータルの利益は減ってしまう場合も多々あります。

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具体的に、例えばラーメン店を考えてみましょう。
※例え話を飛ばして読みたい方は、次のラーメンのイラストまで飛んでください😊

ラーメン1杯500円の店。
1日で200杯売れていた。1杯あたりのコストが400円とする。

   1杯あたりの利益:500円-400円=100円
   1日の利益: 100円×200杯=20000円

■この店が、配膳を自動化するなど工夫してコストカットでき、
1杯あたりのコストを300円に抑えることができたする。
   1杯あたりの利益:500円-300円=200円。
   1日の利益:200円×200杯=40000円

■逆にこの店が、原材料の高騰でコストアップしたとする。
1杯あたりのコストが450円にあがってしまった💦
   1杯あたりの利益:500円-450円=50円。
   1日の利益:50円×200杯=10000円


→販売価格は500円で固定だとしても、このように店の利益はコストによって大きく変動します。

また、この店が1杯500円から600円に値上げした場合、どうなるでしょうか?
1杯あたりのコストは同じ400円だとします。

■1日の売上数が200杯と変わらなければ、
   1杯あたりの利益:600円-400円=200円。
   1日の利益:200円×200杯40000円
こうなれば、嬉しいですよね!
値上げしなければ、1日の利益は【100円(1杯あたりの利益)×200食=20000円】だったのですから。
どんな経営者でも値上げします。私だったら600円と言わず、800円、いや1000円にでも値上げしたいです‼


でも実際にラーメン1杯500円で売っていた店が、1杯600円に値上げした場合、客はどう思うでしょうか?

「安いわりには美味しいから通っていたけど、600円出すならもっと美味しい店があるな」と離れてしまう客もいるでしょう。
また「500円だったから月に2回通えたけど、600円なら月に1回に減らそう」と回数を減らす客もいるでしょう。

もちろん、変わらずに同じように通ってくれる客もいるでしょうが、トータルの売上数は減ることが予想されます。

■仮に売上数が1日200杯から150杯に減ったとします。
   1杯あたりの利益:600円-400円=200円。
   1日の利益:200円×150杯30000円
これでも値上げしないとき(1日の利益20000円)よりも利益が出ています。値上げして正解だったようです!

■仮に売上数が1日200杯から90杯に減ったとします。
   1杯あたりの利益:600円-400円=200円。
   1日の利益:200円×90杯18000円
この場合は値上げしたことで、かえって利益は減ってしまいました…。
値上げしなければ良かったですね💦

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現実には、コストも売上数も店側の意図に反して変動します。
店(売り手)が自分で決定できるのは価格のみです。
そして、価格をコロコロ変動させるのもリスクがあります。メニュー表を変更するのも大変ですし、客にとってもコロコロ価格が変わる店は困ります。


価格の決定は、とてもとても難しいのです。
経営のとても難しいところの一つです。
ライバル店の価格も気にしないといけないですし、それぞれ経営者が一生懸命考えています。


政府が、価格に介入するのがいかに愚かなことか。
店の経営状況も客層も店のブランドイメージもライバル店のことも何もかも知らない政府が、偉そうに価格を上げろとか上げすぎるな、とか。
「価格を皆があげないからデフレマインドから脱却しない」とか「でも便乗値上げはやめろ」とか。ふざけるなという話です。


いろんな店があっていいのです。
消費者にとっては、いろんな店があって自分で好きに選べるのが一番の理想です。
とにかく安さを売りにするラーメン屋があってもいいし、味や店内の雰囲気にこだわった高級ラーメン屋に行きたい人もいるでしょう。

自分に合うものを選べること自体が、大きな満足に繋がります。

そう考えると、政府の提供する画一的なサービスが、いかに満足度の低いものにならざるを得ないかがよくわかります。
役所で書類一つ発行するにもかなり時間が取られますよね。もっと料金がかかってもいいから短時間で受け取れたり、自宅に送ってくれたりといったサービスを望む人もいると思います。

価格が統制されていて税金が多額に投入されているという意味で、民間の運営とは言えない医療も同じです。
どうしても画一的なサービスにならざるを得ないので、消費者が自分の望むサービスを提供する病院を選びたくても、そんなものは存在しません。

政府は「多様性が大事」というくせに、個人個人が自由に選べるような多様なサービスは、政府の統制のもとには存在しないのです。

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