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【ジャパンクオリティ】世界に輸出されている日本の農産物

国内人口が減る中で日本の農作物の輸出志向が高まっています。
今回は、日本から輸出されている農作物ついて書きます。

先にまとめです。

日本の農産物は果物を中心に輸出がされており、主なマーケットは香港や台湾、東南アジアです。
総じて高品質というのが日本の農産物に対しての評価であり、温暖な気候のため東南アジアでは作ることができない品目はこれからさらに輸出に期待がかかります。
また、これまでは果物が中心の輸出ですが、これからは野菜の輸出にも力を入れていくようです。
ただ、輸出促進として打ち出されている対象を見ると農産物加工品も含まれ、なおかつその中にはチョコレートなど原材料が国産でないものも含まれているのでニュースによる「輸出拡大」を鵜呑みにしてはいけないようです。

食品全体の輸出額は2021年に1兆円を突破

農林水産物・食品の年間輸出額の推移 農林水産省より

2021年、日本の農林水産物・食品の年間輸出額が初めて1兆円を突破しました。
その要因としてはコロナ禍で落ち込んでいた消費需要の回復や、円安などがあります。
政府は「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」を掲げ、令和4年末時点で29品目の輸出重点品目を設定し、それらを中心に積極的に輸出促進を目指していくことで2025年には2兆円、2030年には5兆円を目指す方針です。

酒などの加工食品が多い

2021年の農林水産物・食品の年間輸出額の品目別内訳 農林水産省より

しかし内訳を見ると、アルコール飲料や調味料、お菓子などの加工食品が全体の4割を占めることが分かります。
原料の大半が輸入農産物である食品や、どう考えても日本の農産物加工品とは言い難いチョコレートなども含まれています。

2021年の農林水産物・食品の年間輸出額の国・地域別内訳 農林水産省より

輸出相手国はアジアが中心で、これまで香港が最大の輸出相手国でしたが、2021年に初めて中国が1位となりました。

加工食品の方が利益率は高いと思うので加工食品が上位に来ることは当たり前のこと(むしろ農産物の一次産品の方が上位だと問題)だと思いますが、国産原材料の加工食品が少なそうなので、そこは問題ありなのかなと思います。

農産物は全体の3割ほど

上記の表から農産物のみ抜粋したもの

農産物は全体の3割ほどで、畜産品(特に牛肉)が引っ張っています。
それぞれの品目については後述します。

農産物の輸出

左は農産物の内訳、右はその中でも「野菜・青果等」の内訳(2021)

2021年の農産物輸出の内訳はこのようになっています。
以下、青果を中心にそれぞれの品目について輸出額順に簡単に見ていきます。

りんご(輸出重点品目)

りんごの主な輸出先と輸出量(2021)

日本の青果物で一番輸出されているのはりんごです。
確かに東南アジアでも「ふじ」という品種のりんごはよく見るので、現地でも広く栽培されているのが分かります。
世界で最も食べられているりんごとも言われている「ふじ」を開発した日本のりんごですが、平均気温が14度を上回る地域では栽培が難しいとされているため2015年に輸出解禁となったベトナムなど日本よりも平均気温の高い東南アジアはマーケットとして非常に有望です。

主な輸出先である台湾は2002年にWTOへ加盟し輸入自由化を受け入れたことで国内でのりんご栽培は以前の8分の1ほどまでに減り、輸入頼みとなってしまいました。
台湾のりんご輸入先としては3位の日本のりんごは大きく、色や形も良いということで他国から輸入されるりんごの2倍ほどの金額で取引されているようです。

ぶどう(輸出重点品目)

ぶどうの主な輸出先と輸出量(2021)

日本の青果物で二番目に輸出されているのはぶどうです。
輸出の9割は台湾、香港向けです。

日本でも大人気のシャインマスカットは海外でも評価が高いようです。
甘さやタネが入っていないことだけでなく、脱粒(房から粒が落ちること)が少ないことや日持ちがすることも輸出に向いている点です。
最近では「日本」という国名もそうですが、「長野県」などの産地名がブランドとして認知されてきているようです。

またシャインマスカットの中国流出は記憶に新しいニュースかもしれませんが、台湾メディアの試算では中国流出により、日本は毎年約100億円の損失を被っているようです。

いちご(輸出重点品目)

いちごの主な輸出先と輸出量(2021)

輸出額第3位はいちごです。
こちらもメインの輸出先は香港と台湾です。

日本では約300種類のいちごが品種登録されており、世界のいちごの品目数の半分以上を占めるとも言われるほどです。
いちごはとてもデリケートなので輸出に際しては包装などにも人一倍気を配る必要があります。

長芋

長芋の主な輸出先と輸出量(2021)

長芋が輸出されているというのは少し意外かもしれません。
主な輸出先は台湾、アメリカ、シンガポールです。

そもそも野菜自体の輸出が日本では少ないのですが、長芋に関しては、薬膳料理に使われたり、青汁などミックスジュースの原料となるなど健康志向の高いアジア人を中心に消費が拡がっており、日本の長芋の肉質のきめ細かさなどが評価されているようです。(アメリカでも主な消費者はアジア系住民のようです)

ジュースの原料となるような長芋は規格外でも問題ないためそれが輸出のハードルを下げているようで、日本の農作物が加工用として輸出されているのは意外です。

桃(輸出重点品目)

桃の主な輸出先と輸出量(2021)

桃も日本を代表する果物の1つだと思いますが、あの柔らかさと甘さは外国産にはないものがあります。
ただ、それが輸出の際はネックとなるポイントで輸送の難しさはいちごなどと同様、青果でもトップクラスです。

甘薯(さつまいも)(輸出重点品目)

甘薯の主な輸出先と輸出量(2021)

さつまいもに関してはタイのシェアも高く、アジアで焼き芋が人気になっているということで日本の甘くてホクホク、ねっとりなさつまいもが人気を集めているようです。

さつまいもは世界的にも多くの国で栽培されていますが、やはり、日本のさつまいものスイーツのような美味しさは世界的にも高く評価されているようです。

メロン

メロンの主な輸出先と輸出量(2020)

メロンは日本の高級青果物の代表の1つです。
2021年11月8日からアメリカへの輸出が解禁となったようで、これまで中心のアジア以外にも輸出先が増えることが期待されています。

梨の主な輸出先と輸出量(2021)

梨も贈答用として香港や台湾で人気があり、日本の梨を元に開発された品種も現地では栽培されているようです。

柑橘(輸出重点品目)

柑橘の主な輸出先と輸出量(2021)

みかんに代表される柑橘は円安や巣ごもり消費の影響を受けて2021年の輸出額は過去最高を記録しました。

余談ですが、日本で温州みかんを周年で食べられるように、近年ではペルー産の温州みかんが春ごろ日本に逆輸入されています。(春というのは意外にも国産の果実が減る時期で、この時期は輸入の果物が増えます)

青果以外の農産物


  • 海外の日本食レストランを中心に輸出が順調に拡大しています。

  • 牛肉
    和牛ブランドの認知度が上がっており、アメリカやアジアで輸出が進んでいます。カンボジアに関しては中国に再輸出されている可能性が高いと言われています。(BSE以降、中国は20年間ほど日本から牛肉の輸入を禁止していたのでその間はカンボジア経由で輸入がされていたとされています)

  • 豚肉
    豚肉の輸出もアジアの一部のみに限られています。

  • 鶏肉
    日本から鶏肉の輸出が可能なのはアジアの一部とEUのみとなっています。

  • 鶏卵
    生食に適した鶏卵ということで香港などへ輸出されています。

  • 牛乳・乳製品
    育児用調製粉乳などの品質の高さが認められ、ベトナム、香港、台湾などへ輸出されています。

  • 切り花
    高品質という評価を受けてはいますが、生産コストが他国より高く、輸出量は伸び悩んでいます。
    ラナンキュラス、グロリオサ、ダリア、トルコキキョウ、スイートピーが人気なようです。

  • お茶
    日本食だけでなく飲み物やお菓子のフレーバーを通した日本茶や抹茶の認知拡大に伴い、輸出も拡大しています。

政府による今後の戦略

農水省は2025年に2兆円、2030年に5兆円の目標を達成するため、「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」を2020年11月に取りまとめました。

1. 日本の強みを最大限に活かす品目別の具体的目標を設定

  1. 輸出重点品目として27品目の決定と目標設定

  2. ターゲットとなる地域とそこへのアプローチ方法の明確化

  3. 各品目団体の連携を促進

まずは何をどこにどれくらい輸出するのかという目標を設定します。

2. マーケットインの発想で輸出にチャレンジする農林水産事業者を後押し

  1. 農業法人に対する投資の円滑化

  2. 輸出産地の育成

  3. 効率的な物流の構築

上記の目標をもとに、対象品目を生産する産地の支援を行います。

3. 省庁の垣根を超え政府一体として輸出の障害を克服

  1. 輸出先への規制緩和・撤廃について協議

  2. 輸出先の輸入農産物への基準と日本の農産物のギャップを把握し技術向上や施設の改善を実施

  3. 種苗などの知的財産権を守る施策を検討

対象品目が円滑に輸出され、なおかつ無用なトラブルを生まないように交易や権利など海外とのやり取りを支援します。

最後に

今回は、日本の農産物の輸出についてまとめました。

日本の農産物は果物を中心に輸出がされており、主なマーケットは香港や台湾、東南アジアです。
総じて高品質というのが日本の農産物に対しての評価であり、温暖な気候のため東南アジアでは作ることができない品目はこれからさらに輸出に期待がかかります。
また、これまでは果物が中心の輸出ですが、これからは野菜の輸出にも力を入れていくようです。
ただ、輸出促進として打ち出されている対象を見ると農産物加工品も含まれ、なおかつその中にはチョコレートなど原材料が国産でないものも含まれているのでニュースによる「輸出拡大」を鵜呑みにしてはいけないようです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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