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「子宮頸がんワクチンにガの幼虫細胞が入っている」は誤り【ファクトチェック】

「子宮頸がんワクチンにガの幼虫細胞が入っている」という言説が拡散しましたが、誤りです。子宮頸がんワクチンの一つであるサーバリックスには、製造過程で蛾(ガ)の一種のイラクサギンウワバの幼虫細胞を使いますが、精製する過程で取り除くため、蛾の幼虫細胞は入っていません。


検証対象

「子宮頸がんワクチンに蛾の幼虫細胞が入っている」というコメントとともに、ワクチンの添付文書とみられる画像を添付した言説が拡散した。このポストは、2023年9月21日時点で4600回以上のいいねと、2100回以上のリポストを獲得している。

検証過程

厚生労働省によると日本で受けることができる子宮頸がんワクチンは、2価ワクチン(サーバリックス)、4価ワクチン(ガーダシル)、9価ワクチン(シルガード9)の3種類である。2価ワクチン(サーバリックス)の使用解説書に「組換え沈降2価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン(イラクサギンウワバ細胞由来)」との記載がある。

ここに記されている「イラクサギンウワバ」とは、日本をはじめアジア、ヨーロッパ、アフリカなどに広く生息している蛾(ガ)の一種だ。

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、サーバリックスを製造しているGSK(グラクソ・スミスクライン 以下GSK)社に取材した。

GSKは「サーバリックスにはガの幼虫細胞は一切入っていない」と説明した。製造過程でイラクサギンウワバ幼虫細胞を使うが、製造過程で精製・除去されるという。詳細な説明は以下の通りだ。

「サーバリックスの抗原であるVLPは、遺伝子組換えの技術によってバキュロウイルス系の発現系を用いて生成されます。バキュロウイルスは単独では増殖できないので、何かの細胞に感染させる必要があります。バキュロウイルスはヒトには感染せず、一部の昆虫細胞だけに感染するウイルスで、様々な基礎研究の結果、イラクサギンウワバの幼虫細胞がバキュロウイルスと相性が良く効率的に増殖できることが分かり、この細胞を用いています。バキュロウイルスとイラクサギンウワバの幼虫細胞を用いた発現系は既に確立された方法であり、安全性についても問題ないことが確認されています。なお、サーバリックスの製造段階でバキュロウイルスとイラクサギンウワバ幼虫細胞を用いていますが、製品になる前の製造過程で精製・除去されます」

サーバリックスに関して使用中止に至るような問題事例は「報告されていない」という。

子宮頸がんワクチン以外にも活用
産経新聞は「ガの幼虫でインフルワクチン!?2カ月でできる驚異の虫ワクチン」(2016年10月26日)の記事で、遺伝子組み換えのバキュロウイルスを幼虫の細胞に感染させて増やす方法でインフルエンザワクチンを精製しているとも紹介している。

朝日新聞の記事「コロナワクチン、鍵は『ガの幼虫細胞』阪大で開発進む」(2016年10月26日)も、ガの幼虫の卵巣由来の細胞を利用して新型コロナワクチンを精製する事例を紹介している。

判定

「子宮頸がんワクチンにガの幼虫細胞が入っている」は誤り。バキュロウイルスとイラクサギンウワバ幼虫細胞を使う2価ワクチンの製造法は既に確立されており、安全性に問題はないうえに、製造過程で精製・除去されている。

検証:堀祐理
編集:藤森かもめ、宮本聖二、野上英文、古田大輔


検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

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