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「あのとき冬の子どもたち」の読書感想文

峯澤典子著「あのとき冬の子どもたち」を読みました。
限られた字数でかつて通ったカフェについて、そのカフェの壁に掛けられた猪の絵、その場の会話、そして、現在も変わらぬあの時に似た風景。それらの場面が大きく転回していきます。しかし、それぞれの場面はしっかりとした糸で繋がっているのでひとつの映像を見ているような感覚があります。
詩を読みながら神奈川県の山間部で剥がされた猪の毛皮の天日干しを思い出しました。それぞれの言葉がしっかりと映像を届けてくれるからこそ自分の記憶と繋がっていくのでしょう。
麻酔が切れて、手術したあとの腹部の傷に慣れるまでの時間、生まれたばかりの赤ん坊を見に行った場面。そんな無関係に思える事柄をつなげた文章を読んだあとに感じる。現実からは浮き上がっている、幻想と云えるほど遠くはない。手を伸ばせば届きそう距離感が非常に気持ちよかったです。
詩の世界と呼ばれる森は確かにそこにあります。しかし、坂道と曲がりくねった道に阻まれて入り口にすら辿り着けない。詩の世界は際限なく拡がっているのでしょう。その入り口をようやく見つけられたと思います。マイルス・デイビスの「カインド・オブ・ブルー」で部屋の空気が変化したのを感じて、ジャズに親しむようなものですかね。個人の感想です。
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