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つくることは決めること、みんなで仕事をつくること

最近仕事でご一緒しているフリーランスのパートナーさんと、働き方や業界のなかでの身の上話をよくする。デジタル・クリエイティブの仕事はこの数年でまた大きく変わっている。

企業がデジタルマーケティングの予算比重を高め、スピーディーな対応のためDMP基盤などの整備や内部に制作部隊を持ったり、代理店やプロダクションは高くなる要求と技術に応え、人手や技術者不足にも対応すべく効率・合理的なプロセスとそれを実施できる組織体にシフトしていく、ような話を聞く。(←半分テキトーに言ってる)

自分は、というと、あまり変われていない。パートナーさんは引く手数多な状態で、しかしこの流れの中で同じ課題意識があるみたい。受託を生業とする身として、どんな問題や何が必要と感じているのか、書いておきたい。

つくる側の問題とおもしろさの所在

1にも2にも、つくる人が減っている。一つ一つの工程というより総合して、品質が落ちている。専任特化して、自己目的化した人が増えている。考えることを疎ましく思う人が増えている。などなど、つくる側の抱える問題について話していた。

フリーランスでPMしつつ制作面も理解の広い彼は「やること決まってても、何もおもしろくないじゃないですかね(笑)」と話してくれる。そして、今の仕事を「タスク化が難しい。けど複雑でおもしろい。」と言われた。

正直、痛快に感じてしまった。そうなんだよ、それ。

すぐに解かる彼はそれなりの場面を経験した人なんだと思う。お互いに難しい部分を分かちあい、共感できた。ただ、自分自身は正直なところ“おもしろい”という言葉の後ろにあるものを、忙しさのあまり見失いがちだったように感じた。それはどこにあって、どう仕事の質や成果に結びついてくるんだろう。

仕事のはじまり

仕事のはじまりにおいて、ビジネスのミッションが先にある。そして事業者として、担当として、期待値を持っている。KGIに対して事業のKPI、部署をまたぐコミュニケーションのような数値化されない動き、施策を通じたエンド顧客への貢献など、さまざまな働きが求められている。

クライアントの中でも決まってない、決められない事情がある。誰かに頼る必要がある。アウトソースもその所以。極論言うと、決められないから今の仕事がある、と思っている。

この仕事のはじまりを知らずして、作ることだけ考えてたら「要件が決まってないと作れない」となる。はじめからそれを言えたなら、その心の内は明白だ。私は、あなたは、本当に“つくる人”だろうか?

つくる人は仕事をつくる

決まってないこと、頼られることに対して、何か有効な手立てを探ることが価値につながると思う。そして、それが仕事になる。RFPが定まっていないことなんてザラにある。

自分にとって、つくる人って、ただデザインできますーって人じゃない。つくることでプロセスや成果など、提供する価値をつくれる人だと思う。ブランド価値検討からVIに訴求を足すも、キャッチコピーと広告戦略で見込層にアテンションするも、情報設計からCVを高めるも、ウェブインフラのmultiAZなど構成から可用性を高めるも、無数の選択肢がビジネスの要求に応じれる。

その選択がビジネスの成果を左右し、私たちの提供価値につながっている。つくりかたもそのひとつだけど、大上段で、何を目的に見据えるか。何を決めてどんな方法を選択するかが大事な話だと思う。

違う役割のなかで

目的に向かって、決まっていないことを決めていく。誰か決めるのか?複雑化する制作プロセスや技術のなかで、もはやディレクターだけでは決められないことは確かだと思う。メンバーそれぞれの提案をもとに、確度のあるプランを狙っていく。

「要件が決まってないと作れない」
実作業においてはもちろんそうだ。そこで、決まってないことを同じ視座から諭すのと、ただ怒り半分で聞かれるとでは、クライアントやチームメンバーに与える影響が大きく違う。同じプロジェクトチームのメンバーでも、役割によって視点、価値観、果たす成果は違ってくる。違って当たり前だと思う。時に妥協を受け容れることも必要だと思う。

同じ目的に立ち返る

だけど、やはり仕事、ないしプロジェクトの目的は同じはず。つくる過程で、善悪や敵味方で徒党を作るも、弱そうな立場にマウント取るも、決まってないと何もできないと憤るも、ムスッとするのも、どれも人の勝手。勝手だけど、プロジェクトを仕切る立場からすると、目的意識のただ一言。何を目的に仕事にしているか、メンバー個々人が立ち返る必要があると思う。

そして、今やっているどんな些細な作業も、誰の得なのかわきまえておきたい。たとえそれが全体の1%だろうと、無駄になろうと、きっと見いだせるから。そして、お互いの役割を認識しながら、質と成果、ひいては目的につながる働き、働きかけがしたいと思う。真摯かつ紳士に。そんなうまくできてないけど、それってすごいおもしろいと思うんですね。

とても抽象的な話だけど、こんな気持ちにさせてくれたパートナーさんや同僚のみなさんに感謝している。さて、今日もあくせくがんばろう。

もし、サポートいただけるほどの何かが与えられるなら、近い分野で思索にふけり、また違う何かを書いてみたいと思います。