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ヘビ、カマキリ、サソリ!中国武術のユニークな伝統拳について

中国武術、中国拳法、武術太極拳など日本では色々な言い方をしますが、中国で一番ポピュラーな言い方は「武術(ウーシュー)」。功夫(ゴンフー、クンフーなど地域によって発音が異なる)という言い方も基本通じます。

たまに格闘技のリングに中国武術家が参戦することもありますが、その多くは「散打」という日本でいうシュートボクシングに近い立技格闘技の選手。さらに立技やMMAの団体のルールに則って試合することになるので、その結果如何で中国武術は強い、弱いみたいな判断をするのは早計であり、そもそも中国武術はもともと棍術や槍、刀などの武器ありきで進化したものだと言われてるので、現代格闘技の試合の中で実戦度を計ること自体が少しずれた議論のような気もします。(あくまでイチ格闘技ファンの素人の考察なのでこれはこれでズレている部分もあるかとは思いますが)

そうなると、中国武術の伝統的な体術の素晴らしさは、フルコンタクトの試合よりもむしろ表演武術の世界のほうがわかりやすいというのが、私個人の考えです。

日本で中国武術が紹介されている映画は先日紹介したジェット・リー、ジャッキー・チェン、ブルース・リー、ドニー・イェン、チャウ・シンチーなどのカンフーアクションが有名ですよね。特にジェット・リーや、ドニー・イェンの映画では、飛んだり跳ねたりはありつつも、理に適った身体の動かし方や活殺法として、本質的な武術の魅力が体現されていると思います。

さらに漫画の世界でも古くは伝統武術の八極拳を描いた「拳児」や、近年では「刃牙」の烈海王などが有名でしょう。

こうした映画や漫画に一部登場する動物の動き方を真似した「象形拳」という武術ジャンルがあります。刃牙では「トリケラトプス拳」が登場しましたが、中国拳法の中にも多様性に富み、中にはぶっ飛んだ発想の象形拳が存在するので、いくつか紹介したいと思います。

蟷螂拳(カマキリ拳)

おそらく日本では一番有名な象形拳で、昆虫のカマキリの動作を模写した拳法。その起源を辿ると中国全国を武者修行していた王朗という武術家が、ついに武術の総本山ともいえる嵩山少林寺に立ち寄った際に、どうしてもある優れた僧侶に勝てず、王朗がその少林僧を打ち破るべく修行を重ねていた中でカマキリがセミを捕らえる瞬間を目撃し、これに強いインスピレーションを得て、蟷螂拳を編み出した…というファンタスティックな逸話が残されています。

蟷螂拳にも北派、何派とジャンルが色々あります?跳躍技や蹴り技など、カマキリの動きにはない動きも多いんですが、獲物を捉える際のタメの作り方や重心移動など、確かにカマキリの動作に学ぶことは多い気がします。

鷹爪拳(タカつめ拳)

日本語では「ようそうけん」と読むのが一般的。読んで字の如く、鷹の爪で引っ掻くような動作や、翼を広げて跳躍したり、木の幹に止まるような鷹の動きが特徴となつまています。表演武術の大会では、ここに武術の基本功(基礎動作)でも学ぶ旋風脚や腾空摆莲などの跳躍蹴り技をミックスした套路(型)がみられます。
これも単に鷹の動きを真似ているというよりは、武術的な発勁(一瞬でパワーを集中させる)、緩急や身体の伸び縮みなど、身体を自在に操る動作に学びが色々とあります。(たぶん)

蛇拳(ヘビ拳)

ジャッキー・チェンの映画「スネーキーモンキー 蛇拳」で知名度を博した拳法。こちらも表演武術の競技大会の伝統拳部門でよくみられる拳種で、蛇がトグロを巻くような特徴的な動作に加えて中国武術の基本歩型の扑步や歇步、腰を回転させる翻腰といった動作がしっかり入ってきます。
特に柔軟性のある女性選手のしなやかな蛇拳は見ものです。

猴拳(サル拳)

お猿さんが走り回ったり飛び跳ねたりする動きを取り入れた象形拳。頭を足の指でポリポリ掻いたり、片足を尻尾に見立ててフリフリしたりするユニークな動作も多いです。
これに棍術も合わせた猴棍(サル棍)もポピュラーで会場が盛り上がる種目。さながら西遊記の孫悟空のようです。とにかく動きが激しいので相応の身体能力とスタミナが求められます。

蛤蟆拳(カエル拳)/蠍子拳(サソリ拳)

蛤蟆拳は四足歩行でカエルが地面に突っ伏してる動作や、ピョンピョン跳ねて後ろを蹴ったり…
蠍子拳は、腕立て伏せのような体制から一本の足を振り上げてサソリの尻尾の形を作ります。

この辺りになってくるとただ体力をいたずらに浪費する動作にしか見えませんが、鍛錬用には良いのかもしれません?

この他、鴨の歩き方を模した鴨形拳など、笑ってはいけない象形拳も多数。

結構SNSでも見れるものが多いのでその目で確かめてみてください!

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