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【オッペンハイマー】35mm上映の感想

視力2.0の私の正直な感想です。

▼結論:

109シネマズプレミアム新宿の35mm上映を観覧しましたが、結論から言うと、映画オッペンハイマーに関しては、私にはあまり良くなかったです。

▼詳しい感想:

あくまで私個人の感想ですが、35mm上映はアナログ特有の温かみや揺らぎなど《味わい》こそあれど、オリジナルフィルムを8KデジタルスキャンしたIMAXレーザー(4K上映)の方が美麗で観やすいと感じました。

私は両目とも視力が2.0あるのですが、視力が高い人は日本のアナログ上映は不向きかもしれないと考えます。

現在、日本でオッペンハイマーの35mm上映が観覧できるのは、東京都の109シネマズプレミアム新宿のみとなっています。そちらの劇場には注意書きも掲示されていました。

35mmフィルム上映につきまして
こちらの上映回は35mmフィルム映写機での上映となります。
フィルム上映の特性上、フィルムの状態により音声が飛んだり、ノイズが入る場合もございます。また、映像につきましても傷や埃、画像の揺らぎなどが発生いたします。
フィルムの劣化が激しい場合など、途中で上映をとめて調整をする可能性もございます。

上記のような現象も含めて、現在では大変貴重となりました35mmフィルム上映の醍醐味を何卒ご理解いただき、存分にお楽しみいただけますと幸いでございます。
109シネマズプレミアム新宿

しかしそういう問題じゃなくて、全体的にピンボケしているように見えたんですよね。…もしかしたら当該劇場の上映機材の調整不備(技術不足)かもしれません。こんな不満はメルボルンで観たIMAX(70mmアナログ上映)ではほとんど感じませんでしたので。

いや、もしかしたら、そもそも35mmはあのくらい滲んで見えるのが普通なのかもしれません。

これまでに35mm上映を日本国内(別の劇場)で何回か観覧したことがあります。20年前は地元の映画館でよく観ましたし、最近でも立川シネマシティでは時々企画されます。それらでもそんなに細かい所までよく見えたという経験や記憶はあまり無いのですが、あくまで旧作だからそこまで意識して撮影してないだけで、オッペンハイマーは2023年の映画なのでもう少しクリアな映像になっていると期待してしまいました。(苦笑)

※立川シネマシティは不定期に旧作の35mm上映があるのでオススメです!

しかし、今回新宿で観たオッペンハイマーは、他の国内の35mm上映と比較しても、キズや汚れが酷いと感じました。

フィルムの物理的な汚れ問題はIMAXメルボルンでも起きていましたが、そちらはごく最初だけで、フィルムが清潔になるまでに掛かる時間が新宿は明らかに長かったです。体感だとメルボルンは1分未満、新宿は7〜8分でした。

フィルムを映写機にかける時など物理的に作業する都合から、端っこはどうしても汚れやすいのだろうとは思います。それにしても新宿は汚れが多い時間帯が異常に長いと感じました。

そして清潔になった後でも、新宿では汚れが目立ちました。IMAX方式と35mmスタンダードではフィルムサイズが10倍くらい違うことを考慮しても、新宿のフィルムは汚れが多かったと思います。

フィルム状態の悪化することはある…って言われましても、まだ公開から2週間の新作ですよ?痛むの早すぎませんかね?

▼品質劣化の原因を考察:

なぜ新宿ではあんなに上映品質が悪かったのか。

109シネマズプレミアム新宿は【フィルムの管理方法/映写技術が不適切である】のか、もしくは当該作品は【海外で使い倒した中古の35mmフィルムに日本語字幕を焼いたから最初から状態が悪い】のか、のどちらかが原因だと推測できます。

そして、おそらく後者である可能性が高い気がします。

ビターズエンドが2024年3月の日本公開のために、米国ユニバーサル社なり米国シンコピー社(ノーラン夫妻の映画制作会社)に新たに35mmプリントを作成させたとは考えにくいからです。

海外では2023年6月からオッペンハイマーは上映されていました。たぶんアメリカで使い倒された中古フィルムを安価に仕入れて、日本の会社で字幕を焼き付けたのでしょう。

▼それでもアナログ上映を推薦したい:

なおフィルムに傷や汚れがあっても、体感的な解像度が低くても、アナログ上映には色彩や質感などたしかにアナログでしか味わえない魅力はあります。1940〜50年代を中心に描いた伝記映画なので、アナログの質感はよくマッチしています。映画の映写方法まで強い興味や拘りがある人には推薦したいと思います。

本作には天才オッペンハイマーだけに見えている量子世界のモデルが特撮で描かれているのですが、これが完全にアナログ撮影というクレイジーな作りになっています。つまりデジタルで作られたCGよりも遥かに多い情報量がアナログ35mmには含まれるポテンシャルがあります。

左上がIMAX70mm(メルボルン)
左下が35mm(新宿)
なおグラサン池袋は右上のIMAX with LASERです。

35mmフィルム版についてノーランは、「私たちは、オリジナル・ネガの粒状感や質感、アナログ的な色彩を35mmに凝縮した非常に効果的な35mm版を制作しました。それは、観客の皆さんに観ていただける素晴らしい上映フォーマットです」とコメント。「35mmプリントを上映し、観客にアナログ体験を提供できる場所がまだ世界にあることに、私はとても興奮しています。なぜなら、映像の奥行きや色の表現が重要だからです。それは、観客がもっと没入感のある体験をすることを可能にし、映画の世界にもっと入り込むことができるのです」と語っている。

『オッペンハイマー』35mmフィルム版の国内上映が決定 - IGN Japan (2024.03.11)

私は昨年11月に豪州メルボルンでIMAX70mmを観てきたキチガイですが、今年4月にグラシネ池袋の4KレーザーIMAXで再度観覧したら、画面の情報量は少なからず失われており、質感が有意に異なると感じました。

日本ではパキッとした4Kデジタルと、ほんのり柔らかで深みのある35mmアナログ。

まあ、(体感的な)解像度だけが《画質》ではない、ということですかね。

《画質》にこだわる諸氏にはぜひ35mm上映を検討していただければと思います。

オーストラリアまで『オッペンハイマー』を観てきた話

余談ですが、文字が20年前によく見たフォントで懐かしい気分になりました。そういうアナログ字幕の味わいがあるのもまた、35mm上映の特徴かもしれません。

(了)

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