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好きなザック・スナイダー監督作品ランキング(2021夏)

ザック・スナイダーの監督作品でベスト10を決めて順位をつけなさい

もしそんな命令がきたら、それは回答が難しい。

というか、決められない!

迷うな セクシーなの キュートなの どっちが好きなの
ナンバーワンにならなくてもいい もともと特別なオンリーワン

それぞれに、それぞれの良さがあるからね。

だから時と気分によって順位なんて変わるでしょ。

だけど、今日は無理してつけるね。
(つけるんかいー。笑)

ほら、今週の金曜に新作が配信されるので、一度整理しておかないと?

ランキング発表

1位:マン・オブ・スティール
2位:ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット
3位:バットマンVSスーパーマン:ジャスティスの夜明け(UE)
4位:エンジェル・ウォーズ(ディレクターズカット)
5位:ウォッチメン(ディレクターズカット)
6位:ガフールの伝説
7位:ドーン・オブ・ザ・デッド
8位:300
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ランク圏外(失格):ジョスティス・リーグ

1位から6位まで僅差。6位と7位の間に『SNOW STEAM IRON』が入る。『300』は一度観たときにあまりピンと来なかっただけなので再視聴したら順位が上がる可能性はある。残りの作品はよく理解できている方だと思う。

基本的に「どの作品も画面が美しいのは大前提」で、「そこから何がプラスアルファされているか」で順位を決めた。

マン・オブ・スティール三部作

この3作品は、気持ちでは全部1位にしたいんだけど。笑

バランスのMoS、深みのBvS、感情に響くZSJL。という感じ。

映画という120分の枠で無理ない情報量で綺麗にまとまっているのはやはりMoSなのよ。まだ有名すぎないヘンリー・カヴィルの存在感も良い。そこにアカデミー賞ノミネート常連のエイミー・アダムスの姉御感がいかにも田舎者のクラークに対しての都会のロイスという感じ。そしてハンス・ジマーの音楽が良い。打楽器を数十人集めて録音してるからダイナミクスがとんでもないことになってるんだけど、私はドラム演奏もするので打楽器に死ぬほどこだわってるMoSが一番グッとくるのよ。話もシンプルで分かりやすいし。そして子供時代の描き方が丁寧でジンとくる。

BvSは暗くて重たい設定にどこまでも真摯で、それゆえに圧倒的な深みを湛えている。世界観に潜り込みたいならBvSが一番応えてくれる。これを達成できたのは、本当はフランク・ミラーのグラフィック・ノベル『ダークナイト・リターンズ』を撮りたかったのであろうザックの欲求と熱意を、極限まで詰め込んだからだ。ただし本作に込められた作者の意図を最大限に読み取るためには、183分のアルティメットエディション(UE)で見つつ日本語字幕では不足する情報を自分から取りに行かないと意味が分かりにくい部分が多数あるので、敷居の高い作品にはなっている。

JLSCは感情に溢れた1本だ。作品の中に4人の新キャラクターを紹介しつつスーパーマンの復活を描くという無理難題に、214分という超長尺で応えようとしたザック。しかしながら興行的な成果に焦ったワーナーブラザースはザックを更迭して、MCUから招聘したウェドン監督に作り直しをさせる。しかしファンはこの変更を受け入れなかった。世界中のファンが一つのハッシュタグで集結(unite the league)し、何年にもわたる粘り強い活動で、ついにWBを動かし、ザックが本来持っていたビジョンの公開を勝ち取る。この背景がすでにメタレベルでとてつもない感動を呼ぶし、発表されたスナイダーカットは4時間に収めたのも驚異的な分量のストーリーと感情のやり取りが詰まっていた。なお撮影監督がラリー・フォンからファビアン・ワグナーに変わっているため画作りが若干マイルドなテイストに変わっている。

エンジェル・ウォーズ(Director's Cut)

スナイダー監督作品の中で、最も不当に低評価されている作品だと考えて間違いないだろう。文学的な手法を取っているため真意を汲み取るのが難しくなっているだけでなく、メイクと衣装と舞台設定がかなりキワドイ線まで踏み込んだものになっているので、誤解を受けやすい作品になっている。

この映画の舞台は1950〜60年代。主人公の十代の少女が、心ない養父に更生施設にブチ込まれて、当時流行していたアイスピックロボトミー手術を受けるまでの数日間に主人公が受けた仕打ちや出来事を、主人公が妄想で変換した世界の語り口で進行する。そして、これらの前提条件は、誰かの説明台詞やナレーションで解説されることは一切なく、さらにラストカットが現実なのか妄想なのかどちらとも取れるような終わり方をする。

このため、物語の構造や奥深さをキャッチできなかった観客には「少女たちがスチームパンクなコスプレをして娼館で働いているようにしか見えない」という、かなりクセが強めのハードルを抱えてしまうことになる。

しかし実際の映画には「少女がカラダを売っている」場面は一つも存在しない。むしろ、その逆である。精神外科の手術のためアイスピックを眼窩に刺される場面で主人公が妄想の世界ではセックスに置き換えていたり、主人公は現実世界で手術前に用務員から性的虐待を受けていたことを示唆するシーンはあるが、どちらも「少女が受けた酷い仕打ち」であり、決して女性蔑視の文脈や表現ではない。

この作品については後日、改めて解説記事を書こうと思う。

ウォッチメン(Director's Cut)

ザックが敬愛するアラン・ムーアのグラフィック・ノベルの映画化。原作の世界観を見事に映像化しつつ、180分の「映画という枠内」に収めつつ、2009年に公開する作品として加えたアップデートを私は全面的に支持する。スーツの形状や物語の結末などザックが加えた改変について批判的な声がしばしば上がるが、原作は1987年に紙媒体でやっていたからあの形が良いのであって、何もかもを原作の通りにやれば良いという類ではないと思う。

一番顕著なのが劇中劇である『Tales of the Black Freighter(黒の船)』の扱いである。あれはコミックで読んでいるから並行に進行するのがスリリングで味わいが増すのだが、映画版では一応アニメーションで作成されたが最終的にはディレクターズカットからも除外された。後におそらく制作会社の意向でアニメを復活させたアルティメットカットが発売されたが、映画のテンポを悪くするだけで、ザックの判断が正しかったと私は確信した。

劇場公開版:163分
ディテクターズカット版:186分(実写シーン追加)★これがオススメです
アルティメットカット版:215分(実写シーン追加+黒の船)

ガフールの伝説

フルCGアニメの作品。良作。

6位なのは、この作品が悪いからではない。僅差だからね。

他の作品が良すぎるのだよ!ということだけを此処では言っておきたい。

この作品についても後日、改めて解説記事を書こう。

SNOW STEAM IRON

2017年にジャスティスリーグを降板して療養中だったザックが仲間と集まって、全編アイフォンのカメラで撮影したショートフィルム。YouTubeで無料で視聴できるので、彼のむきだしの暴力と愛憎表現が好きな方はどうぞ。台詞が一切なしでビジュアルだけで伝える彼の魅力がギュウギュウに詰められた一本。

ドーン・オブ・ザ・デッド

ザックの長編デビュー作。脚本はジェームズ・ガン。2004年公開。

1978年のジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』のリメイクである。というのもロメロ監督の同作の原題は「Dawn of the Dead」なのだ。私はこの情報を先に知ったので、ロメロ監督の作品から先に観たので、ザック版をより楽しめた側面はぶっちゃけあるかもしれない。

ちょっと脱線するが、ロメロ監督の『ゾンビ』はすごく良い映画なので教養のために観ておいた方が良い。さすが邦題がずばり「ゾンビ」に変えられているだけあって、がっしり骨太の名作であるし、現代のすべてのゾンビ映画の原点と言える内容になっているので、他のゾンビ映画が3割増しで楽しめるようになる。

ザック版はこのロメロ版をしっかり踏襲しつつ、きっちり現代版にアレンジしてきているので、観ていてとても通快な気持ちになる。多少のグロには抵抗がある人なら(ザックの作品が好きなら皆そうだと思うんだけどw)この作品は観ておいて損はしないと思う。

300

画面がクールなのは他作品と同様でめちゃんこ素晴らしいのだが、当時まだ今ほどスナイダー愛が醸成される前になんとなくで観てしまったので、この順位かな。時代背景を知らないと分かりにくい物語かなと思って、それきりにしていたので、近日中に準備して再視聴してみたいと思う。

偶然だけど、ほぼ公開が新しい順に上位にランクインしているので、それってクリエイターが常に進化して成長している証でもあるよね。なんて胸アツな展開だろう!

ジョスティス・リーグ(対象外)

「ジョス」は、誤字ではない。2017年に公開された作品のことを、途中参加したジョス・ウェドン監督の名前にかけて『JOSStice League』と呼ぶことが海外勢の間では常識になっている。同監督とWBへのさまざまな愛憎を含んだ味わい深い名前である。笑

本作品はプロジェクト初期こそザック・スナイダーとクリス・テリオの脚本で作られたが、途中からジョスによって大幅な脚本変更と追加撮影があったので「完全な別物」になってしまった。ゆえに「ザック・スナイダーの作品ではない」と見なして、ランキング対象外とする。

正直、たとえ最下位でもこのリストには加えたくないレベルで酷い作品だったので、本当はAOTDの予告編よりも低評価だと言いたいくらいだったが、同列に比較することの方がザックへの失礼に値すると考え直して、やめた。

今後は、未見の方が間違って購入することが無いことを願うだけの思いで、あえてこの記事に名前を挙げた次第である。

アーミー・オブ・ザ・デッド

さて、あと数日で新作AOTDの配信開始である。

この作品は凄いことになるだろうと予想している。なぜなら監督だけでなく脚本と撮影監督もザックだからだ。

彼が脚本を担当するのはエンジェル・ウォーズ以来となる。やや詩的な表現に傾倒しすぎたために注意深く見ていないと理解できない難しさを持ってしまった過去作に対して、10年後の今作で彼がどんな脚本を書いてくるのか。

撮影監督はある意味で監督よりもビジュアルへの貢献が大きいと言える。それはBvSまでを担当してきたラリー・フォンと、ZSJLで担当したファビアン・ワグナーの仕事を見れば明らかだ。撮っている対象や物語上の役割が同じでも、その映像にはすごく根っこの所でそれぞれのトーンが生まれる。その仕事を今作ではザック自身が担当している。すでに予告編からも少しずつ見えてきているが、実は上述の『Snow Steam Iron』も撮影監督がザックだったので、予習しておけばAOTDを観るに際して何かしらヒントとか味わうためのコツやポイントが掴めるかもね。

米国の劇場では一週間先行して公開しているらしく、今はネタバレが怖いので私はツイッターのタイムラインを見ないようにしている。

さてさて、どんな作品になるか楽しみだ。

了。


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