ブロークン事件ファイル
事件ファイル①
・わたしは2022年10月◯日14時ごろ、自宅にてごはんを温めようと、玄米をよそった茶碗に蓋をかぶせてレンジに入れました。その際、ごはんと一緒におかずも庫内に入れて加熱ボタンを押しました。
ターンテーブルがまわり、庫内のおかずが動き茶碗の上の蓋がずれ、茶碗が横に倒れました。が、その状態でもレンジは加熱をつづけました。「チン!」となったときには、自分の横着さを責めました。なぜなら、レンジの蓋を開ければ、茶碗がほかほかのごはんもろともこちらに落ちてくる体勢になっていたからです。
覚悟を決めてレンジの蓋を開けました……。結果、ほかほかのごはんを撒き散らし、茶碗はガチャリと割れてしまいました。わたしは、なんだかひどい罰を受けたような気持ちになり、泣きながらごはんと茶碗の破片を拾い集めました。
当時の心理状態について、お話します。
・事件当時、遅めの昼食をとろうとしており、至って素面の状態でした。ただ、季節の変わり目に心がざわつく傾向があり、10月に入り、すこし気分が塞いでいたのを覚えています。
・茶碗は、祖母のやえばあが置いていったものであり、毎日使っているものでしたから、割れてしまいそれはそれはショックでした。
事件ファイル②
・わたしは2023年8月◯日21時ごろ、梅干しを入れた器を冷蔵庫に移そうと、蓋物(ふたもの)を持ち自宅のリビングを移動していました。その際、蓋は器にただ載っかっていただけとは考えず、ぐんぐんと歩きました。器の上の蓋は、そのスピードに耐えかねて、自ら落下していきました。
パッシャーン! といい音(今思えば)を上げて、蓋は真っ二つに割れました。
このときも、わたしはとっても哀しくなりました。虚しい気持ちで割れた蓋を回収したことを覚えています。
こちらの器について、お話します。
・この蓋物も、祖母やえばあの残していってくれたものでした。やえばあは、魚のモチーフのものが好きですので、「らしい」デザインの器です。
・うちでは「やえばあの民藝」と言い、目利きのやえばあが選んだ器を譲り受けています。一人暮らしを始めた当初から、やえばあからお下がりの器が来るのをいつも楽しみにしていました。
事件解決に向けて
わたしは「逆転できる」と知っていました。このかなしみや不甲斐なさは、いつか必ず癒える、と。
そう思って、涙をぬぐい、破片たちをそっと包み、押入れの奥に眠らせてきました。
そうして待つともなく待っていた、2月25日。
ついに、参加できることとなったのです! 金継ぎ教室に。
教えてくださる先生は言います。
「金継ぎとは修復ではなく、新しく作り出すことに近い」
それはもう、夢中でした。
え、もう3時間? あっという間でした。先生もていねいで、少々乱暴なわたしのやり方もやさしく受け入れてくださいました。
お茶碗と蓋が新たな姿となって、無事に帰宅しました。
以来、ず〜っと眺めています。
あのときに「いつかの金継ぎ」を信じたわたし、えらい……!
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