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ピアノ未経験のデザイナー、Duolingoで人生初の"音学"体験

ずっと音楽を始めたいと思っていた。

GoodpatchでUXデザイナーをしてます「じゃけ」こと山根圭太です。
私、思うんです。人類は2種類に分けられると。楽譜が読める人と読めない人──ピアノを習っていた人とそうで無い人に。

確かに音楽の授業で習いました。五線譜を下から順に指で数えれば「ミ、ソ、シ、レ...」で読んでいけることを。でも不自由です。まるで、駒の動かし方をいちいち確認しながら将棋をやるような、楽しめるレベルの手前でつまづいてしまっている状況です。ほんとは音を奏でたいのに、音と全く紐づかない線上の黒点の位置を数えて、これまた音と紐づいているようないないような音階(ドレミファ...)に置き換えて。音を出すまでのハードルが高すぎる...。

み・そ・し・る…で覚えませんでしたか?

知っています。もう音階が振られた楽譜があることも。でもそういうことじゃ無いんです。ピアノを習っているかどうかで、五線譜を見て脳内で音が流れる人と、実際に音を聞くまで分からない人に分けられてしまっていて、後者の人は音楽を演奏することに大きなハードルを感じていると思うのです(異論は大いに認めます)。

そんなピアノ未経験勢、待望のサービスが始まった!

そんなときに僕が出会ったのが「デュオリンゴミュージック」。正確には語学学習アプリ「Duolingo(デュオリンゴ)」の音楽のコースで、昨年11月ごろにスタートしたばかり。

実はこのDuolingo、世界でもっともダウンロードされている無料語学学習アプリで、リリースから10年たった今もApple Design Awards2023で「Delight and Fun」を獲得するほど、魅力的な体験を更新し続けているんです。Duolingoを提供する会社のデザイン担当VPは、その体験の秘訣を「Duolingoの秘密、それは私たちが教育関係の会社ではないということです。私たちは楽しさとモチベーションを提供する会社です」と説明していて、何を隠そう私も語学学習アプリとして半年ほどお世話になっているのです。

話は脱線してしまいましたが、語学学習アプリとして磨かれたduolingoの良さがぎゅっと詰まった音楽コースの魅力を、今回は自由に主観的に語っていこうと思います。

魅力① ドレミの「ド」だけなら僕にも弾ける

この音楽コースが(他の言語も同様に)すごいのは、難しさを全く感じないことだと思うのです。見出しの通り、このコースは「ド」を鳴らすことから始まります。

こちらが最初の画面。そう、「ド」は一番左の鍵盤です。それくらいなら僕でも分かる。押してみる。「ド♪」と音が鳴る。早速一問クリア。次は連続して「ド」を4回鳴らすだけ。次は「レ」の鍵盤を弾く...こんな超ハードルの低い問題を数個クリアしただけで、レッスンが完了して褒めてもらえる!

最初のレッスンで出てきたのは「ド」と「レ」のみ。しばらくは「ド」と「レ」だけのレッスンが続きます。「なんだ出来るじゃん♪」気づいたらそんな気持ちになっていました。数日続けていると「ミ」が登場します。「ド」と「レ」のみのレッスンに飽きてきたころだった僕は「ミ」の登場を大歓迎。少し高まった難易度に、胸も高鳴ります。

※冗談ではなく、実際にこうなりました。

難易度の階段が、「難しい」と感じるレベルよりも遥かに低く設定されていて、階段ではなくスロープのようなイメージ。もはや平らな道なのでは?と錯覚したころにちょっとしたステップアップポイントが用意されていると嬉しくなるものです。

難しさのハードルを感じさせない設計(イメージ)

この、難しさを感じさせずに出来ることが少しずつ増えていく体験が、Duolingo musicの秀逸な体験設計の一つだと感じています。(ちなみに初めて登場する概念は、先ほどの画像もしかり、ほぼ答えが書いてある問題として登場するので、容易にクリアしつつ知識として吸収できるように設計されているようです)

そして、ここで忘れてはいけないポイントがもう一つ。レッスンの一番最初から、「ド♪」と音を奏でる体験ができている点です。知識を貯めて→理解して→それから演奏に移る。のではなく、最初の1タップ目から演奏を開始できています。このnoteの冒頭で書いた、音階を数えながら翻訳する体験と比べると天と地の差。「音を奏でたい。」という音楽を学ぶ原点にあるそのピュアな欲求を、最初から叶えてくれるところもduolingoの体験のミソだと思うのです。これはもちろんモチベーション観点でも重要ですし、レッスンを続けるうちに、この音階ならこの音が鳴るかも?と音と音階の紐付きが脳内で構築されていく効果もあるように感じます。



さて、そろそろお気づきの方も多いと思います。そう。言語の壁。
現在duolingo musicは英語とスペイン語でしかまだ学べないのです。(日本語でもリリースされる可能性はありそうです

魅力② 他言語でも無問題(モウマンタイ)!UIがイケてるから解っちゃう

とんだ見出しの使い方をしてしまいましたが、そういうことなんです。
もう気分はパズルゲーム。何をすればいいかは文字を読まなくても一目瞭然、鍵盤と音、音階と楽譜、楽譜と音など、基本的にはそれらを組み合わせるだけです。

例えばこの画面、楽譜上に [?] と書かれた枠があり、下に音符などが描かれたカードが並んでいます。これを見た私たちは「この[?]の枠に、適したカードを入れればいいのかな?」と、文字を読むより先に感じとっているはずです。
このように、「その画面で何ができそうか」が一目瞭然なので、説明がなくても操作できるんです。そして実際に操作してみると...軽快な正解音とビジュアルによって正解できたことが直感的に分かり、同時に潜在的に操作方法が正しかったことも刷り込まれていくのです。

この、あなたが何かを見たときに思い浮かぶ「○○するのかな?」という気持ちは”アフォーダンス”と呼ばれ、かの有名なD.A.ノーマンも著者『誰のためのデザイン?』の中で、道具やコンピュータによるシステムの設計などは、それが何を「アフォード」しているのかを明確にデザインすべきであると提案しています。

Duolingo musicはこの”アフォーダンス”がうまく設計されているので、言語すら読めなくても操作のレイヤーで迷うことはほぼありません。だからこそ、ノイズなしに音と音階、鍵盤の紐づきに集中して取り組めるという訳です。

ただし、「ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ」が「C, D, E, F, G, A, B」になっている部分はどうしようもありません。そこはそういうものだなと自分に言い聞かせて、頭の中で読み替えています。

魅力③ 2日坊主の僕でも続くワケ

すぐ始められて、迷わず操作でき、スムーズにレベルアップできることは分かりました(とさせてください)。でも、どうせすぐにアプリを開かなくなるのでは?-----その気持ち、とっっっっても分かります。

最後の推しポイントは、日々続けられる仕組みです。先述したように、僕はDuolingoの語学学習も日々継続しているのですが、これは奇跡的なことです。僕は基本的にいろんなことに好奇心を持ってしまう人間なのですが、その多くは3日坊主と言わず、1, 2日で継続が終了してしまいます。

ここから先はDuolingo musicというより、Duolingo全体の続けられる仕組みの話です。両手で数え切れないくらいの仕組みが散りばめられているのですが、読者の皆様も読み疲れてきた頃(僕も書き疲れてきた頃)だと思うので、今回は僕に効いている続けられる仕組みベスト3に絞ってその魅力を伝えようと思います。

続けられる仕組み⑴:すぐに褒めてくれる、だから学習が楽しくなる。

誰でも褒めてもらえると嬉しい気持ちになるものです。このアプリ、思った以上にすぐ、たくさん褒めてくれます 笑。

  • 短いレッスンを達成したら褒められる
     一回のレッスンは2,3分ほど。それが終わっただけで褒めてくれるんです。もちろん全問正解ならそれを祝ってくれるし、そうでなくてもレッスンを達成したこと自体を褒めてくれます。

  • レッスンの途中ですら、すぐに褒める
     レッスンが完了前であっても、5問連続正解ごとに褒めてくれます。(音楽コースは一回の設問数が少ないので5問連続正解に出会わないことの方が多いですが)

  • 難問は正解できたら大きめのフィードバックが返ってくる
     こちらも語学学習においての機能ですが、難しい問題が解けた時は、ヴィジュアルと触覚フィードバックで大きめの演出があり、難しい問題が解けたことを大いに盛り上げてくれます。

そんなこんなで毎度褒めてもらえると、どんなことが起こるのか。累積的UXという概念がありますが、「次もアプリを開くと褒められるんだろう」と無意識的に感じるようになるのです。このサービスを触る=褒められるという公式が成り立つことで、潜在的に褒めてもらいたいと思っている全ての人類は、このサービスをだんだんと開きたくなっていくのです。

続けられる仕組み⑵:どうせならランキング上位に居たい、だからもう1レッスンやっちゃう。

レッスンが終わると、レッスンの種類と正解率などによって経験値がもらえます。その経験値が常にランキングとして表示されていて、毎週ランキングに応じたリーグの入れ替えが発生します。
その変動によって、「あとちょっと経験値を稼ぐと一つ上のリーグに行けそう!」とか「ちょっとこのままだと下のリーグに落ちちゃうよ」と感情が動き、もう一レッスンやっておこうかな、とか毎日続けよう。という気持ちになるわけです。

この画像はちょうど、次のリーグへの昇格ラインを超えたところ。
しかし僅差なので「もう少しやっておこうかな」と思う訳です。

続けられる仕組み⑶:ウィジェットを設定したら、もうこっちのもん

⑴, ⑵で紹介した続けられる仕組みは、アプリを開くことが前提です。そもそものアプリを開く前から継続を助けてくれるのがDuolingoのウィジェット機能です。基本的には継続日数とduoというメインキャラクターが居るだけなのですが、これが大変よくできておりまして。

朝は「レッスンしようぜ?」くらいのテンションでこっちを眺めてます(画像左上)。お昼を過ぎたあたりから「レッスンしなくてよくって?」と少し不満げになります(画像中上)。夕方にもなると「うう、レッスンしてくれないんだね、ぴえん」と泣き顔になり(画像左下)、夜が更けてくると「なんでレッスンせんのじゃ!」と怒り出します(画像中下)。

レッスン後にはケロッと機嫌が良くなる

スマートフォンを開いたホーム画面でこのキャラクターの喜怒哀楽を見ると「仕方ない、今日もやってやるか」と、タップしたくなっちゃうのです。
しかも、1レッスンでもすれば「うふふ✨」ととってもハッピーな表情になってくれるんだからチョロいもんです(画像右)。敢えて泳がせて表情を眺めるのも楽しいですが、レッスンをしなくなっては元も子もないのでほどほどに 笑。

他にもまだまだたくさんの仕組みがあります。この「続けられる仕組み」については、また機会があれば書けたらなと思います。

「もしも、ピアノが、弾け〜たならぁ」卒業へ

推しアプリへの愛が強過ぎて思わず饒舌になってしまいましたが、要は、いろんな仕掛けによって楽しく音楽を学べるサービスが出てるよ!一緒に学んでみない?というお誘いnoteでした!
まだ始めて3ヶ月程度ですが、サービス内の音階が記されていない楽譜にも、ちょっずつ指が反応し始めている気がします。

「子供の頃ピアノやってたら良かったな、音楽ができたらどんなに人生が彩るだろう」と想像するだけの日々には、そろそろおさらばです(1年に1回くらいですかね、そう思うの)。音楽に限らず、人生に彩を与えられる体験作りに思いを馳せながら、今日は筆を置くことにします。

NO MUSIC, NO LIFE!(聞く専もありだよね!)

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