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モノの色いろいろ 

|| グリーンを巡って③
ふだん何げなく使っている色名ですが、色の名前として使われる色名の背景を探っていくと、おもいがけない面白い発見に出会うことができます。色名は、あるモノの名前が、その色名として呼ばれるようになったものであり、その色名のもとになったモノが持つ様々な、自然、文化、歴史などの背景を抱えています。ある色名の由来をたどっていくと、その色名が持つ意外な背景に出会うこともあります。このコーナーでは、そうした色名の背景が持つ様々な面白いエピソードをご紹介いたします。
|| ライムは果物のほか、ハーブの菩提樹 (ぼだいじゅ)の花や石灰岩の意味も

柑橘類(かんきつるい)の果実のライムは、その鮮やかなイエローグリーンが色名にも使われます。けれども、英語のライムlimeで呼ばれる色名には、鮮やかなイエローグリーンだけではなく、淡いイエローグリーンに使われる場合もあります。
この色はどう見ても、果物のライムとはほど遠い色です。これは、実は英語のライムlimeは、同じスペリングで、菩提樹(ぼだいじゅ)にも使われるからです。樹木の一種、ぼだいじゅはその花を乾燥させてハーブに用いられます。ハーブとしてのぼだいじゅは、日本では英語のライムよりも、ドイツ語のリンデンlindenで呼ばれることの方が多いようです。上の色コマに示したリンデンブリューテとは、ドイツ語でぼだいじゅの花という意味です。
英語のライムの色名は、果実のライムではなく、このハーブとしてのリンデン(ぼだいじゅ)の花の色を指す場合もありますので、その場合は淡いイエローグリーンを指す色名になるわけです。
さらにまぎわらしいことには、英語のライムlimeには同じスペリングで、もう一つ石灰岩という意味もあります。上の色コマに示したライムストーンは、その石灰岩にみられる鈍い黄緑色を指しています。このように、英語の色名のライムは、全く同じ色名が、柑橘類の果実、樹木の花のハーブ、鉱物の石という全く異なる3種類の物の色に対応されていることになります。

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