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気ままビジネス分析 #1 韓国ドラマ制作会社 スタジオドラゴン(前編)

最近、私がもっとも時間を割いていることの一つが韓国ドラマ。
もう見始めたら止まらない。次から次へと面白い作品が配信リリースされてきりがない。
完全に沼落ちしてしまっているということで、せっかくなのでその勢いに任せ、なぜこんな面白いドラマを量産できるのか、韓国ドラマビジネスについて分析してみました。
韓国ドラマやコンテンツ制作ビジネスに興味がある方はぜひ読んでみてください。

書きたい内容が多く、長くなり過ぎたので2部構成にしています。
前編では現在の韓国ドラマ市場についてとスタジオドラゴンの概要・歴史について、後編ではスタジオドラゴンが良質な作品を生み出せる理由と今後の韓国ドラマビジネスについて紹介する予定です。

韓国ドラマの今

まずは韓国ドラマが今どれほどの勢いがあるのかを簡単にご紹介します。

世界の韓流ファン数

ご存じの通り昨今のK-POPブームの勢いもあり韓流コンテンツ輸出額は2021年時点で124億ドル越。世界の韓流ファン数は約1億5660万人もいるそう。
現在、ファン数の増加率が最も大きいのが米州で、約2888万人と前年のほぼ2倍となっており、そのうち米国のファンが半分以上を占めているそうです。また、アフリカ・中東のファン数も前年比92%増で全世界的に韓流ブームが起きていることが分かります。

Netflix、Disney+など大手プラットフォーマーが韓国ドラマに続々巨額投資

2023年4月Netflixは、今後4年間でドラマ、映画、リアリティショー、ドキュメンタリーなどの韓国コンテンツ制作に2.5億ドル(約3000億円)を投資する計画を発表。Disney+も具体的な投資額は明らかにしていないものの「どの程度をアジア太平洋地域に配分するのかは公開できないが、韓国ドラマに大規模で投資している」と明かしており、大手プラットフォーマーが韓国ドラマへの投資額を拡大していることが分かります。
Netflix CEO サランドス氏によると、Netflixユーザーの約5分の3が韓国コンテンツを見たことがあり、韓国コンテンツの視聴時間は4年間で6倍に伸びているそうで、そりゃ韓国コンテンツに投資するよなと。

韓国国内のドラマ事情、地上波TV局が消えた・・

韓国コンテンツが世界的に注目される中、国内でのドラマ制作も大きな転換点を迎えています。
これまで地上波TV局であるKBS2、SBS、MBCが韓国ドラマ界を引っ張ってきたのですが、今や配信にいち早く対応したケーブルTV局の勢いが増し、「ドラマはケーブルの時代」とまで言われています。
2023年4月に行われた韓国のゴールデングローブ賞と呼ばれる『百想(ぺクサン)芸術大賞』。百想芸術大賞は、年に一回行われる韓国のエンターテイメントを大衆人気だけなく芸術性も含め総合的に評価・表彰する授賞式だが、その今年のノミネート作品に地上波TV局のドラマはゼロ
地上波TV局は広告収入の減少に伴い高い制作費のドラマが作れなく、また表現の制限が多く自由な作品作りができないため内容が薄い作品となりやすく視聴者離れが進んでおり、地上波TV局ではドラマ編成枠を削減するといった事態になっているそうです。

<百想芸術大賞ノミネート作品(作品賞)>
私の解放日誌:JTBC
ザ・グローリー~輝かしき復讐~【大賞】:Netflixオリジナル
私たちのブルース:tvN
ウヨンウ弁護士は、天才肌:ENAチャンネル
シスターズ:tvN

百想芸術大賞ノミネート作品(作品賞)

ちなみに、今年の百想芸術大賞の作品賞ノミネート作品は全てNetflix配信となっており、改めてNetflixの目利き力はすごいなと実感しますね。


ヒット作連発企業 スタジオドラゴンとは

百想芸術大賞ノミネート作品(作品賞)のうち3作「ザ・グローリー~輝かしき復讐~」「私たちのブルース」「シスターズ」を手がけ、韓国ドラマ制作の先頭を走り今最も注目を集めているのが制作会社スタジオドラゴン。今回はスタジオドラゴンの凄さ秘密を解き明かしていきます。

スタジオドラゴンの何が凄い?

設立7年にして、2016年約200億円だった売上高を2022年には約700億円まで急成長させたオバケ企業。
Netflixも「投資額に比べて完成度が高いコンテンツを作る」とスタジオドラゴンを評価し、2019年約100億円でスタジオドラゴンの株を取得。2020年には、3年間で21本以上を配信するという戦略的パートナーシップを締結している。
圧倒的にクオリティの高い作品を作り、数々の名作を世に放ってきてきる。手がけた過去のヒット作を見てもらえれば、普段韓国ドラマを見なくても一度は聞いたことがある作品ばかりなのがわかるはず。
ちなみに、親会社である韓国のエンターテインメント企業CJ ENMはカンヌ国際映画祭でパルムドール賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』を手掛けています。

<過去に手掛けたヒット作>
太陽の末裔:2016年韓国国内での最高視聴率41.6%記録した超人気作、アジア4か国でリメイク
トッケビ:2017年ケーブルTV局での放映に関わらず最高視聴率20.5%(通常5%)記録した超人気作
愛の不時着:2020年Netflixで世界的ヒット
ヴィンチェンツォ:2021年Netflixで世界的ヒット
ザ・グローリー~輝かしき復讐~:2022年Netflixで世界的ヒット

あまりにヒット作だらけなので、韓ドラ好きの間では、オープニングにスタジオドラゴンのロゴが出てきたら『安心して見て大丈夫』と言われてます。

スタジオドラゴンロゴ

元食品会社!?スタジオドラゴンの歴史

韓国語で「金のスプーンを持つ(裕福な家出身の)会社」と言われるスタジオドラゴンの母体は大手財閥CJグループ。CJグループはなんと食品を手がける企業で、韓国で最もよく使われる調味料ダシダなどを販売する日本で言う味の素のような企業である。

スタジオドラゴンの母体CJ グループが手がける商品

1995年、CJグループは事業多角化の一環でスティーブンスピルバーグ監督らが立ち上げたアメリカの制作会社「ドリームワークス」に3億ドルの出資をする。その額は当時のCJグループの年間売り上げの2割に匹敵する額だった。この決断の背景には、創始者の「食品は一つの国民の文化だ。文化を広めることが、自分たちの会社をより大きくするし、文化があるからこそ人々の生活が豊かになる。」という考えがあった。
こうして、表面上は映画の配給権を得られた訳だが、CJグループが得たものはそれだけではなく、ここで映画の制作からマーケティング・販売までの全てのノウハウを得ることになる。当時、韓国では映画産業はさほど発達しておらず、世界屈指のエンタメ大国から学んだことは大きかった。

勢いに乗ったCJグループは2006年にケーブル放送局tvNを設立。当時は地上波の独占状態だった放送業界に切り込みをかける。2010年代にはtvNに追随する形でJTBCなど非地上波局が次々に誕生した。
2010年3月、CJグループはついにスタジオドラゴンの前身となるドラマ事業部を設立企画・制作、放映まで一貫生産を行える体制を確立し、次々に作品を生み出していった。彼らの作品は規制が多い地上波の作品と比べ、自由で斬新なものとなり、多く視聴者を惹きつけた。
そして、2016年5月にドラマ事業部が親会社から独立し、ついに「スタジオドラゴン」が設立された。

まさか、食品会社が源流にあるなんて驚きですよね。けど、豊富な資金力がある財閥が背後にいるからこそ取り得た戦略だったのかもしれないですね。


韓国ドラマの勢いやスタジオドラゴンについて理解していただけたでしょうか。後編ではスタジオドラゴンが良質な作品を生み出せる理由今後の韓国ドラマビジネスについて紹介したいと思います。
気になる方はぜひ続きも読んでみてください!


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