イスラム暦付カレンダーと勇気
コロナ禍で生活が激変してしまった2020年。皆様はいかがお過ごしでしょうか。弊社のメインの業務である通訳・翻訳業は、国際的な人の出会いの場が仕事の舞台ですので、大きな、というより甚大な悪影響を受けました。また、それは過去形でなく、最も回復の遅い業種であるともいえ、需要の回復は今後も遅れるでしょう。Go To Interpretation なんて政策は望むべくもありませんからね。
そんな事情を知るお客様の中には、弊社が毎年発行しているこのカレンダーが今年も作成されるのだろうかと心配して下さった方もいらっしゃるようです。実際、カレンダーの編集を行う総務部では例年とは違う種類の仕事に忙殺されて、編集の開始が遅れていました。その時、届けられたのがこの写真でした。
弊社は2001年の同時多発テロ事件をきっかけに中東メディア関係の業務が急増し、特に2003年のイラク戦争以降、安定した業務をいただけるようになりました。しかし、日頃扱うニュースのほとんどは戦争やテロで、人々の苦しみ、悲しみをお伝えする毎日です。何とか、少しでもその苦しみを和らげることのために働く方法はないか？と考えていた時に、カレンダーの売り上げを寄付しては？というご提案を頂きました。
イラク戦争では、米軍が劣化ウラン弾という非人道的兵器を実験的に使用した疑いがあり、イラク南部で住民のガン発生率が非常に高まりました。その救済活動のために立ち上がっていたのがJIM-NETです。そこで弊社からお願いして、皆様から集めさせていただいた寄付金を小児ガンで苦しむ子どもの治療費に充ててもらう約束を頂きました。そんな経緯があり、最近はその寄付が届けられている先の写真を拝借して、カレンダーに載せているのです。
5歳の少女アイーシャの澄んだ眼差しに、私は惹き込まれました。聞けば小児ガンに負けずに勉強を頑張っているとのこと。そう聞いて、私は鞭打たれたように背筋が伸びる思いでした。売上の減った会社の社長業ほど陰気なものはありません。沈んだ気分が続く毎日でしたが、何とこの少女は明日の命がわからないにも拘わらず、生き生きと闘病し、勉強している！それに比べたら、幸いに家族も社員も皆健康で暮らせている我が身の何と幸せなこと。いくら頑張っても頑張り過ぎることはないなあ、と思ったのでした。
ということで、アイーシャの写真を、同じ施設で頑張る友だちと一緒に3月のページに掲載させていただきました。皆様にも前向きに生きる上での勇気を与えてくれるものと確信します。
次に思ったことは当然ながら、自分に何ができるか、ということ。このカレンダー事業は開始以来ずっと赤字です。製作費を売り上げで回収できないからですが、その赤字分はカレンダーを購入していただく皆様の篤志と共に、子どもたちの薬代になっているのですから、それでよいのです。そして今、この赤字額を数万円増やしたとしても経営には何の問題もありません。他方、大きな勇気を与えてくれたアイーシャへの御礼としては、少なすぎると言えるでしょう。
そのような思いから、今年のカレンダー代金に占める寄付金の割合を前年寄付金額比約15％増やすことにしました。弊社にとってはささやかなこと。また、カレンダーをお買い上げいただく皆様にとっても、小さなことです。しかしこれにより、皆様の思いをより多く伝えさせていただけることは間違いありません。是非、今年もご協力をお願いします。
エリコ通信社のイスラム暦付カレンダー（概要と通信販売はこちら）
イスラム暦は、ヒジュラ暦（預言者ムハンマドがメッカからメディナに移住（ヒジュラ）した年を元年とすることからこの名）とも呼ばれ、月の運行がそのままカレンダーになる太陰暦です。日本の旧暦は、閏（うるう）月を設けて暦が季節とずれないよう調整しますが、イスラム暦ではそれをしないため、毎年11日づつ暦が季節を追い越して行きます。
イスラム圏の国々では、今も断食をするラマダン月や、巡礼月のお休み（犠牲祭）のように、イスラム暦で決められる行事が生活の中心を占めています。そこで、イスラムの休日が一目でわかるこのカレンダーは、イスラム世界と仕事をする実務者をはじめ、多くの関係者の皆様からご愛用頂いています。
（来年のラマダン月は春の大型連休と重なっていますね。写真）
イスラム暦が付いていますので、もちろんイスラム教徒と思われる方からのご注文は多いです。しかし、ベースは日本の暦。卓上で予定を書き込むことができますので、今はイスラム暦とは関係のない生活をしている、という方のお役にも立っていると思います。また、このカレンダーを監修するに当たって、ひとつポリシーがあります。それは、すべての異なる文化、民族に属する人々が、お互いに違いを認め合い、尊敬し合って生きる世界を実現したいという願いです。ですから、イスラム暦のカレンダーですが、キリスト教会やヨーロッパの街並みの写真もよく登場します。
ひとりでも多くの方に愛用していただきたいと思います。ぜひお買い求め下さい。
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