見出し画像

日本のゲーム産業はなぜ育ち、西欧で育たなかったのか ──Ubisoftとアサシンクリードの「真実」補論

本稿は先日投稿した「Ubisoftとアサシンクリードの〈真実〉」の補論である。既に議論としては語り尽くしたが、そのうえで、西欧ゲーム産業がどうして育たなかったのか、という補足をしたい。


まず、既に記事の中でも述べた通り、コンソールゲーム市場は主に日本・欧州・北米の三地域が中心である。しかしながら、三地域のうち日本と欧州は少々特殊な事情がある。

その特殊な事情とは、まず日本は供給側が強い市場だということ。つまりゲーム企業に対してユーザーの購買力が弱すぎる。

既に前回の記事で書いた通り、世界のコンソールゲーム市場のうち、日本の市場割合は1割に満たない。よって日本市場をほとんどドミナントしている任天堂でさえ、日本市場の売上は全体の2割程度。逆に日本市場で存在感のない『エルデンリング』は、(公式の発表から推測すると)日本の売上がせいぜい3~5%と考えられる。なおSteamのユーザーに対する日本語話者の割合は、2~3%である。

したがって日本のゲーム企業は「輸出」をしなければ生きていけぬ。実は欧州・北米のゲーム企業と比べて、圧倒的に不利な状況で生きているのだ。

対して欧州は「需要側が強すぎる」。世界では北米に次ぐ2番目の市場を持つ。しかも北米に比べると圧倒的にゲーム企業の資本が乏しく、つまりライバルが少ない。そのためUbisoftのような欧州ゲーム企業は、本来大変に「有利」だったはず。しかし実情は、記事で解説した通りUbisoftを除く欧州ゲーム企業がほとんどおらず、そのUbisoftですらEAやT2K、任天堂といった日米に押されている。

ではなぜ、欧州ゲーム産業は欧州ゲーム市場に対してこれほど弱いのか。この点を今回は考えたい。

───────────────
本稿は先日投稿した「Ubisoftとアサシンクリードの〈真実〉」の、メセナプラン向けの補論となる。具体的には以下のような内容だ。

・ゲーム産業が育つ最大の要因とは何か?
・日本のゲーム産業はなぜ育ったのか?
・欧州、特に西欧ゲーム産業はなぜ育たなかったのか?日本と異なる条件の違い
・Ubisoft最大の発明とカナダ
・西欧ゲーム産業vs東欧ゲーム産業(北欧ゲーム産業)

記事は既に投稿した2万字の記事の中で語り尽くしているが、より踏み込んだ内容として、既に記事を読んでいただいた方には楽しんでいただけるのではないかと思うので、興味があれば購読いただければ幸いだ。(メセナプランでは積極的にゲームゼミの活動を支援していただく方々に向けて月1回の限定記事を更新している)
───────────────

ここから先は

8,869字

メセナプラン

¥1,980 / 月
人数制限あり
このメンバーシップの詳細

「スキ」を押すと私の推しゲームがランダムで出ます。シェアやマガジン購読も日々ありがとうございます。おかげでゲームを遊んで蒙古タンメンが食べられます。