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食べる機能を考える食育

今回は歯科の「食育」について投稿したいと思います。
皆様、食育と聞いてどのようなことを思い浮かべますでしょうか?
多くの方は、栄養のバランスなどを考えて何を食べさせようかなど食品の質やバランスなどを思い浮かべるのではないでしょうか。もちろん栄養のバランスなど食材についてもとても大切なことです。それと同様に大切になるのが「食べる機能」です。
食べる機能は赤ちゃんの頃からの成長とともに備わっていくものです。赤ちゃんの時はおっぱいに吸いつく食事(授乳)で、この能力は産まれた時点で既に備わっているもので原始反射と言います。口はおっぱいに吸い付いたままの状態(口は開いた状態)で母乳を口から喉へと流し込んでいきます。
一方、少し成長して離乳食を食べるには流し込むのではなく、食べ物を口に入れると口を閉じて舌で食べ物を喉へ送り込んでから飲み込むという食事に変化します。このように母乳から離乳食への変化は小さな子供にとっては食事をする機能の大きな変化となるので、離乳食が始まるとともに食事をとおして「食べる能力」を段階的に身に付けていくようになります。この食べる能力を上手に身に付けられていないと「偏食」、「食事に時間が掛かる」、「むら食い」、「遊び食い」などといった問題につながることがあります。
では、子供の成長に応じてどのような食事を心掛ければよいかについてご紹介します。
離乳食を食べさせ始めても「べぇー」と吐き出されてしまうことはないでしょうか。それはもしかしたら離乳食の開始が少し早かったのかもしれません。もう一度ミルクなどに戻して、少し時間の経過を待ってから離乳食を再開してみてはいかがでしょうか。離乳食などの開始時期は月齢で紹介されていることが多いですが、個人差もあり少し成長が遅いこともあります。なので月齢はおおまかな目安と考えて赤ちゃんのお口の状態で確認してみるようにしてください。
離乳初期(概ね5,6カ月以降)になると離乳食を始める時期に差し掛かります。おっぱいを吸っていた赤ちゃんにとって離乳食は劇的な変化で、美味しいはずの離乳食でもべぇーと舌で押し出してしまうことがあります。食事をしないと心配になりますが、この時期はまだおっぱいをしっかり飲んでいれば栄養の心配はないそうです。
まずは離乳食を始める時期をよく見極めるようにしてみてください。スプーンでちょんちょんと下唇をつついた時に舌で押し出したり、口にスプーンを入れさせてくれなかったりするような時は「離乳食はまだ早いですよ」というサインです。2週間ほど離乳食を休んでからもう一度スプーンでちょんちょんを試して、口を開けてくれる時期を待ってみましょう。また、この時期は唇の感覚が発達し離乳食を下唇で巻き込んで取り込む力が備わってきます。大人の食事姿を見ながら一緒に口を動かし始める時期でもあるので、できる限り一緒に食事をすることを心掛けてみましょう。
離乳中期(概ね7,8カ月以降)になると下の前歯2本が生えてきて上唇も動くようになり併せて舌の動きも活発になってきます。下唇を巻き込むと歯に当たって痛いので離乳初期とはさらに食べ方が変わってきます。舌を上あごに付けられるようになり、豆腐のような柔らかくても形のあるものをあごに押し付けてつぶせるようになります。唇が左右にキュッキュッと引っ張られていれば食べ物を押しつぶしているサインになります。
形のないペースト状のものから形のある軟らかいものを食べられるようになってきても、もぐもぐと噛んで食べているわけではありません。つぶせないような硬いものをあげるとべぇーとされてしまいます。食べる機能は徐々に養われていくものなので、子供の成長に合わせることを心掛けましょう。
また、こぼさないようにスプーンを口の奥まで入れたり、上唇にペーストを擦りつけるようにして食べさせたりすると唇や舌の動きを自分で学ぶということに対して受け身になってしまいます。「食べる機能」と「食べる意欲」を育むために食事の効率が多少悪くても子供のペースに合わせることを心掛けましょう。
離乳後期(概ね9ヶ月以降)になるといよいよ下顎をモグモグ動かす「噛む」動きが始まります。ただし、まだ奥歯は生えていないので本当の「噛む」能力ではないので、ここでも焦らずにお願いします。この時期は口に続いて手も活発に動かせるようになり手づかみで食べたりするようになります。自分で食べ物を口に運べるようになりますが、一度に食べられる分量までは分からず、詰め込めるだけ詰め込んで吐き出すこともあります。これも適切な一口を学ぶための行動だそうです。ただし、喉に詰まらせるおそれがありますので、必ず見守りをお願いします。
離乳完了期(概ね1歳、1歳半以降)になると奥歯も生え始め噛む能力が一層上達します。この時期は離乳後期に適切な1口の量を学んでいるので自分で口に入れられる分量を噛み切って食べ始めるようになります。舌の機能、口の機能、手の機能とそれぞれが成長して自分で適量ずつ食べるという劇的な成長を見せてくれる一方、何でも「自分で!」という自己主張も始まる時期です。食べやすいからと一口サイズに切ったものばかりあげていると噛み切る練習ができず、またよく噛まずに飲み込む癖が付きやすくなってしまいます。うまく噛み切れないお子様には軽く手を添えて適量を噛み切る練習をしてみてください。
お子様は大人と一緒に食事をすることで、大人の食べ方を見よう見まねでも覚えていきます。離乳食は栄養バランスも大切ですが、お子様の様々な機能の成長の一翼を担うものでもあります。手を掛け過ぎず、見守りながらお子様の成長を感じていってみてはいかがでしょうか。
最後に、こんな時は歯科受診をした方がよい事例をご紹介します。
奥歯を噛んでも前歯が噛み合わず開いたままの「開咬(かいこう)」のお子様。生後2ヶ月くらいから指しゃぶりが始まります。離乳後期(概ね9ヶ月から1歳半くらいまで)の頃は口と手の発達のためにも大切なことなので自由にやらせてあげてください。ただし、4歳過ぎても指しゃぶりが続くようだと顎の成長を妨げて前歯が噛み合わないようになってしまうことがあります。3歳頃から指しゃぶりを止めるように少しずつ注意していきましょう。
むし歯の多発。子供のむし歯は全体的には減少傾向にありますが、たまに5、6歳でも乳歯のほとんどがむし歯になっているお子様がいらっしゃいます。離乳食完了期を過ぎても夜の授乳を続けると上の前歯からむし歯ができ始めて、段々と他の歯にも虫歯が拡がっていってしまうことがあります。
舌小帯が短く舌が動きづらい。舌小帯が短いと舌の動きが少し動きづらくおっぱいの吸いつきが弱いことがありますが、赤ちゃんの体重の増加に問題がなければ無理に舌小帯を切る必要はありません。ただ、学齢期近くなっても滑舌や食事に影響している場合はその後の体の成長や学校生活に影響することもありますので、小児歯科に相談して舌小帯を切ってもらうようにしましょう。
お口ポカンの癖がある(口呼吸)。お口ポカン(口呼吸)が続くと唇が閉じないので唇に押さえつけられない前歯と上あごが前に出てきて出っ歯になってしまいます。歯や顎は、唇、舌、頬の筋肉によって馬蹄形にバランスよく成長していきます。まだ骨格が柔らかい小学校低学年のうちに唇の筋力を上げて筋力のバランスを改善することで歯並びに良い影響が生じます。
上記のような諸症状が見られるお子様は早めに歯科受診するようにしましょう。いずみ中山歯科でもお子様の歯科検診を行っていますので、お気軽にご相談ください。

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