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摩訶不思議なスペイン語と日本語ー地球の反対側でユニバーサルデザイン探究者は見た!②

ウルグアイの公用語はスペイン語です。初回の「南米ウルグアイ人と日本人に関する仮説」も書きましたが、私はウルグアイに行く数か月前までスペイン語を勉強したことはなく、スペイン語を使う国に行ったこともありませんでした。
日本人の私から見たスペイン語と、ウルグアイ人から見た日本語。今回は、お互いよく知らない言葉に接して感じた驚きや発見について書きます。


スペイン語の威力に圧倒される

スペイン語を公用語とする国はスペイン・中南米諸国など20か国以上、スペイン語を使う人の数は世界で2番目とも3番目とも言われています。スペイン語人口が多いことは前から知っていましたが、ウルグアイ生活でそれを痛感しました。
例えば、私が働いていた観光省のオフィスの本棚には、ウルグアイだけでなく、スペインや他の中南米のスペイン語圏の国々のガイドブックやマニュアルがずらりと並んでいました。そう、当たり前なんですが、ウルグアイ人はウルグアイ以外の国の資料も、母語のスペイン語で読めるんです!資料だけでなく、マスコミやネットの情報も!この棚を見てそのことに気づいたときは、軽い衝撃を受けました。

もうひとつの例は、スペイン語圏の国の人々が集まる大きな会議に参加したときのこと。国や地域によってスペイン語の表現や発音の違いはありますが、言葉が通じないわけではありません。日本人からみれば方言くらいの差です。会議中も休憩中も参加者はみな、スペイン語で難なくコミュニケーションをとっています。通訳も翻訳も介さずに外国の情報が簡単に手に入り、外国人と交流できる彼らを、心からうらやましく思いました。

もっとも、スペイン語圏だけで多くの情報が手に入るためか、それ以外の国の情報はウルグアイにはあまり入ってきておらず、反対にウルグアイなどスペイン語圏の国の情報がそれ以外の国に出ることも少ないように感じました。だからこそウルグアイ滞在中は、少しでも日本のことをウルグアイ人に知ってもらえるよう努めていました。また今こうして、微力ながらもウルグアイの情報を日本で発信しています。

国際会議の舞台に立てられた参加国の旗。米国以外はみなスペイン語の国。

違う言葉でも会話が成立?!

スペイン語は他のヨーロッパの言語と似た特徴もあります。専門的な話は省きますが、例として英語と比べてみましょう。私がウルグアイでかかわっていたアクセシブル・ツーリズムは、英語ではaccessible tourism、スペイン語ではturismo accesible。単語の順番やスペル、発音が少し違うだけです。
ウルグアイのお隣、ブラジルの言葉であるポルトガル語はもっと似ています。ウルグアイ人とブラジル人が、それぞれスペイン語とポルトガル語のままで会話しているのを見たこともあります。ポルトガル語を全く学んだことがない私ですら、ポルトガル語を見聞きすると部分的にはわかります。見知らぬ人の会話を耳にして、ずいぶん癖が強いスペイン語だなと思っていたら、ポルトガル語だったということも!
だからウルグアイ人は、ポルトガル語をはじめ、他のヨーロッパの言語を比較的簡単に習得できるようです。日本人の私がスペイン語を覚える苦労なんて、彼らにはきっとわかるまい!と心の中で思ったものです。

「ツ」が笑顔? ~絵文字のような日本語~

一方、一般のウルグアイ人にとって、日本語は未知で摩訶不思議な言語。だって、アルファベットと違い、ひらがなもカタカナも漢字も、全く読めないし書けないんですから。
そんなウルグアイ人が日本語を見たときには、しばしば思いがけない反応をしました。例えば、ウルグアイ人の同僚と一緒に、スペイン語と日本語が並べて書いてある書類を見ていたときのこと。同僚が「この書類のあちこちにある、笑顔の絵文字のようなこの記号はいったい何?」と私に聞いてきました。指さす方向を見ると、そこにはカタカナの「ツ」という文字が……。
なんと「ツ」の一画目と二画目が人間の顔の目、三画目が口のように見えると言うんです!私は、「ツツツ」という文字を頭に思い浮かべながら、笑いをこらえきれませんでした。

そのとき同僚が書いた「ツ」の文字。私には「シ」に見えましたが…。

逆に、私のスマホの画面を見たウルグアイ人が、いきなり大爆笑したこともありました。理由を聞くと、「だって全部、日本語なんだもん!」ですって。
笑われるだけならまだいいのですが、日本語の個人情報だらけのメールや書類を記念撮影されそうになって慌てたことは、一度や二度ではありません。また、書類に漢字でサインした際には、必ずと言ってよいほど感嘆の声をあげられました。日本人的には上手な字でもないので複雑な気分……。
一方、日本語を見ただけでややうんざりした表情を浮かべたウルグアイ人も中にはいました。一文字も読めないのですから、当然といえば当然です。私が日本から持参した資料には、簡単なスペイン語訳を書いて棚に置いておいたのですが、残念ながらほとんど見てもらえませんでした。

日本を訪れる外国人観光客がコロナ禍を経た後、再び増えています。その中には、日本語を知らない外国人も、もちろんたくさんいます。
彼らが日本語しかない環境に置かれたらどんな気持ちになるでしょうか?ウルグアイ人を思い出すとだいたい想像できます。謎めいた文字の国として面白がってくれればいいのですが、情報を得られなくて戸惑う人もいるかもしれません。
外国人観光客や日本に住む外国人のために、さまざまな言語やピクトグラムなどでの情報提供が進められています。外国人が残念な思いや不便な体験をしないよう、こうした動きがさらに進むことを願っています。

※この記事は、「ダイバーシティなカルチャーマガジン mazecoze研究所」の許可を得て、同サイトに掲載された記事を再編したものです。

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