見出し画像

まずは「報告書」を読んでみることから【 老後2,000万円問題 】

一昨日、昨日と、お客様との打合せで、必ずこの話題がでました。そして、「先生はどう思う?」と質問を受けます。

この問題への見解は、既に多くの学者、コメンテーター、有識者等が述べています。私はまず、お客さんに「報告書は読みましたか?」と聞きます。

【 報告書のページ 】

この話題に興味があるけれど、まだ報告書そのものは読んでいないという人は、訂正後のものですが、ぜひ読んだ方が良いです。蓮舫さんが10分で読める・・的な発言もしていましたので(・・ちゃんと読むにはもう少しかかるとは思います)。

今回の報告書のタイトルは、金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書
「高齢社会における資産形成・管理」であり、提言する趣旨を以下のように述べています。 

高齢社会のあるべき金融サービスとは何か、2018 年7月に金融庁が公表した「高齢社会における金融サービスのあり方(中間的なとりまとめ)」を踏まえて、個々人及び金融サービス提供者双方の観点から、2018 年9月から、計 12 回議論を行い、その議論の内容を報告書として今回提言する・・

概要してこんな参考資料を公表しています。

人口動態(少子高齢化)、認知症の増加、退職金の減少傾向を踏まえ、個々人が若いころから積極的な資産運用(投資や積立)やライフプランを考えていかなければいけない。金融サービス提供者がしっかりサポートしていく環境を整えましょう。こういった趣旨の報告書です。

ちなみに、今話題の2000万円足りない場合のモデルケースがこちら。(金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第21回)議事次第より)

衣住食の経費もかかるし、旅行に行ったり、その他いろいろ経費もかかるので、ざっと毎月5.5万円足りないので、貯金を崩していますというモデルです。

私は税理士ですが、数年前にファイナンシャル・プランナーの資格を取得しました。ファイナンシャルプランナー(AFP)になるには、試験の合格と認定研修を受けて「ファイナンスプラン(提案書)」を作成します。この提案書は、一般的な家族構成のモデルが例題として与えられ、その家族が老後安心して生活できる資産運用や管理の提案書を作成するものです。私は、当時、以下のような提案書を作成しました。

なぜ、こんな話をするかというと、資産運用の業界側としては、老後、年金だけでは安心して生活できないことを大前提に、どのように資産を運用・管理していくかを最大のテーマにしているということです。私のモデルプランも、定年後毎年旅行に行きたいとか、子供の結婚資金を出してあげたいとかの要望がある例題だったため、定年後もアルバイトを何歳までしてもらう等、なんとか余命までお金が残るプランを作成しました(試験用なので、結構数字合わせな部分もありますが)。

2000万円という数字が一人歩きしていますが、家族構成によっては当然それ以上にもなります。逆に必ずそれだけ必要かと言えば、それも違います。繰り返しになりますが、あくまで、この報告書は、「足りない金額の検証」ではなく、「足りなくなる前提で、どう運用・管理していくか」なのです(むしろそれが金融サービス提案者の仕事ですからね)。

実際、とある社長に見せたところ、「なんか、保険のセールス資料みたいだね」と言われました。

---

健康保険・社会保険を我々は納めていますので、しっかり年金給付を受けたいという気持ちは分かります。ただ、年金制度自体の問題は、今回の報告書とは別の問題で、その制度を議論するには現在、公表が遅れている「財政検証」を見る必要があります

私は、与党、野党どちらを応援するというような政治的なコメントはしませんが、もし選挙前にこの「財政検証」が公表されず、議論が行えないようであれば非常に残念です。

今、与党が火消しに走り、野党が詐欺だ!嘘つきだ!と言っている構図があります。本意は分かりませんが、非常に選挙優先な議論に感じます。年金制度は維持できますとは言え、維持するためにマクロ経済スライドを行いますし、給付水準は減るでしょう。何十年も前から、年金だけでは困難であり、個々、将来のライフプランを考えていこうという流れであるのに、いざ、こういったインパクトある数字が出ると、「議論」ではなく「選挙のネタ」となってしまう。

選挙のネタとなり、活発な議論がされるのであれば、理想ですが。

私は、税理士として、小学生~高校生を対象とした租税教室にも力を注いでいます。特に、毎年高校を中心に課外授業をしています。そこで言います。政治離れ・政治不信が進めば、政治家はより国民目線ではなく選挙目線になる。政治不信の原因は政治家かもしれないが、結果、私たち国民が苦しむ。将来の世代が苦しむ。だから、自分たちでよく学び、興味を持ち、選挙にいこう、と。

---

ひとまず、私は「財政検証」が5年前とくらべ、どう動いたのかを注視したいと思います。

#COMEMO #NIKKEI

お読みいただき、ありがとうございました。 FB:https://www.facebook.com/takayoshi.iwashita ㏋:https://ibc-tax.com/