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「ため込む」から「使う」動き。新制度、賃上げ・投資促進税制はどうだろうか?【 企業投資の動向 】

日本の上場企業は2018年度に設備投資やM&A(合併・買収)に約52兆円と過去最高の資金を投じた。(記事より)
日本経済新聞の調査では企業は19年度に設備投資を約10%増やす計画だ。(記事より)

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企業の内部留保が過去最大、という記事が去年ですが、2018年3月にありました。

今回は、上場企業の企業投資が過去最大という記事。投資というと設備投資を思い浮かべますが、記事にあるようにM&Aも大規模な投資です。またキャッシュフロー分析ですと、以下の引用のように、株主への配当も含まれますので、単純に「投資=設備投資」とは異なります。

企業は株主還元も拡充した。配当支払いは11.4兆円と2%増え、自社株の取得(売却を加味したネットの額)も5.4兆円と7割増加した。(記事より)

金額のインパクトはありますが、内部留保に比べたら、「まだまだ貯蓄超過だ」という意見もあります。時系列が違うため単純比較はできませんが、過去最大の「内部留保」と同じく最大の「投資」という2つの記事。比べてみて、皆さんはどう思いましたか?

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私のお客様は中小企業ですが、設備投資の需要は確かに増えています。ただし、事業承継など、将来性がある程度はっきりしている場合に限ります(中小企業は事業承継がまず将来性の大きな関門です)。

設備投資をした理由の多くが「既存機械類の老朽化」ですが、最近多い理由が「省力化」です。

数年前まではなんとか採用しようと、いろいろな求人サービスを利用してきたけれど、もう集まらない・・。では、自動化だ!そんな流れが急速に起きています。

経済産業省の統計調査「平成30年度中小企業関係租税特別措置の効果に関する調査研究 報告書(委託先:東京商工リサーチ)」でも、以下のような結果が出ています。

他の選択肢に比べて・・という回答かもしれませんが、人手不足対策という見解が多いです。

大企業との経営上の格差も同じように人材確保となっています。

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話をタイトルに戻すと、今回の投資拡大の件は、平成30年の税制改正で創設された「賃上げ・生産性向上のための税制」の影響はどうだったのかな?と素朴な疑問が浮かびました。

中小企業は黒字の場合、雇用者の給与を増加させた場合の税額控除や、設備投資税制を結構利用していると思います。

ただ、大企業は平成30年分の改正でかなりハードルが高くなりました。・・いや、高くなったというよりは、「ハードルが増えた」という表現が適切かもしれません。(以下、経済産業省パンフレットより)

今までは「一定の要件を満たすように給与を増加させたら」税額控除ができました(一定の要件も結構複雑なのですが・・)。

平成30年からは「給与を上げて」かつ「設備投資をしないと」賃上げによる税額控除はできないよ、という規定になりました。社員への還元をしましょう、そして設備投資もしましょう。「内部留保している企業よりもヒト&モノに投資した企業を優遇しますよ作戦」です。

設備投資は国内に限り、かつ、その期の減価償却費の90%以上。先ほどの中小企業のようにいろいろ老朽化していて償却費が少なければいいですが、日々投資してきた会社にとっては、結構なハードルになるかもしれません。

人件費も働き方改革で残業代が減っていますので、基本給や手当等をアップさせても、総支給額が前年超えで、対象となる給与金額(詳細は割愛)が3%以上の増加は結構なハードルかもしれません。税制改正の前には、こんな記事もありました。

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企業の投資活動は様々な要因から行われます。税制の利用は、目的ではなく、「投資した結果、利用できる」という副次的な利用が多いと思います。

・・おそらくこの記事をみて、「税額控除はどうかな?」なんて思う経済評論家やアナリストはいないでしょう(ナンセンスなので)。単純に税理士として「大企業向けの新税制(ヒト&モノ投資要件)」の結果が気になるな。利用率が多ければ、ヒトモノ投資が活発ということで、それこそよい動向かな、と。そんなつぶやきnote です。

とはいえ、まだまだ決算情報は3月決算の法人くらいでしょうから、この利用率の情報がでるのはかなり先です。内閣府なり経済産業省なり、税制改正後の分析結果を公表すると思いますので、新しい税制1年目。どんな結果になりますかね。

#COMEMO #NIKKEI

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