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企業版ふるさと納税 寄付額の9割軽減へ(政府検討)【 税制の話題 】


♦ 記事の概要

■ 企業版ふるさと納税の現況

企業版ふるさと納税を募っているのは都道府県と市町村を合わせて406で、全自治体の23%にとどまる。寄付額も個人版に比べ見劣りする。企業版は18年度に34億円(速報値)と16年度の開始当初より4倍以上増えたが、個人版の5127億円と大きく離れている。

個人版のふるさと納税に対して、1割に満たない寄付総額です。この状況を改善させるために、以下の検討に入ったとのことです。

■ 政府の検討

政府は地方自治体に寄付した企業の税負担を軽くする「企業版ふるさと納税」を拡充する。税負担を軽減する割合を現在の約6割から、約9割に広げたうえで、2019年度までの時限措置を24年度まで5年間延長する方向で調整する。「個人版」に比べ伸び悩む企業の寄付をテコ入れし、地方創生への資金の流れを促す。

♦ なぜ伸び悩んでいたのか?

■ 個人版と大きな違い

個人版も企業版も趣旨には大きな相違がありません。

(個人版:ポータルサイトより)

(企業版:内閣府地方創生推進事務局H29リーフレットより)

納税者は、地方創生に参加できる制度。自治体は、アピールすることで、活性化できる制度。理念は共通しています。

ただ、大きく違う点は・・

① 返礼品の有無
② 税負担の軽減割合

です(まあ、その他に、企業版の場合には最低10万円~とか、管轄も個人版は総務省、企業版は内閣府の地方創生推進事務局であったり・・と、相違点はたくさんあるのですが、メインは上記2つ)。


■ 企業版は原則「返礼品無し」

経済的な見返りは禁止されているため、お土産はつきません。そもそも、個人版のふるさと納税は、過剰な返礼品問題が勃発し、ふるさと「納税」というよりも、ふるさと「節税ショッピング」化している面がありました。寄附するほうも、別に悪いことをしているわけではありません。そんな利用方法をスタンダードになっているという事です。

私見ですが、企業版ももちろん伸び悩んでいますが、個人版が制度趣旨に対して、伸びすぎているという印象があります。(個人版のふるさと納税も返礼品原則禁止となれば、とんでもない下落率となるでしょう。)

■ 税負担の軽減割合

こちらも個人版だと、各納税者の収入・所得金額に応じて、一定金額まで実質2000円の税負担で寄附できます。住まいの自治体以外に寄付することで2000円負担は出ますが、返礼品をもらえるなら・・というメカニズムです。

企業版は、一定の計算に基づき、寄付額の6割までの税負担が軽減されます。結局、納税先を企業も選べるのですが、4割は負担として残ります。(この負担割合を、今回変えていこうという話です。)

♦ なぜ、企業はふるさと納税をするのか?

ここまで書くと、個人版のふるさと納税をしている人からすれば、「なぜ企業はふるさと納税するの?」となるかもしれません。

■ 社会貢献

上記はポータルサイトより。やはり、CSR活動(企業価値を高める社会貢献活動)でしょう。

例えば、寄附への取り組みに対し、大臣表彰制度もあります。

SDGsに取り組む企業にとっても、各目標を達成するために、自社努力だけではかなわない領域がある場合、「ふるさと納税」という手段があります。

(例えば、長野県では、「信州大学航空機システム共同研究講座における学生支援計画 」という事業がSDGsとふるさと納税のマッチング事業として紹介されています)

■ 経営者のふるさと、企業のふるさと

都会にある企業でも、その源泉が地方にあるケースもあります。これはあくまで私の推測ですが、そういった企業は、社会貢献と恩返しの精神でこの制度を活用しているかもしれません。

♦ 今後について

内閣府が提出する20年度の税制改正要望に盛り込み、年末に向けた与党の税制改正議論などで詳細を詰める。(記事より)

税負担の軽減割合が大きく変わる検討をしていますので、利用する企業は増えるでしょう。ただ、あくまで社会貢献活動の一環です。

個人版ふるさと納税とは、利用方法が大きく違います(・・趣旨は同じはずですが)。

企業は、社会貢献が求められます。それは社内の人財を育成する事、良い商品を提供する事、税金を納める事。本業においても達成していくものですが、そこに今は、SDGsへの取り組みや地方創生なども求められるようになってきています。

環境問題や貧困の問題、地方経済の問題。すべて重要ですが、ただ、まず最初は本業や社内のヒト。働き方改革なんて言葉を毎日聞いているような気がしますが、順番は、まず働く人にとって「魅力的な企業」になり、「魅力的な企業」が「魅力的な取り組み」をする。そんな形で活用が今よりも活発化すればいいな、と思います。

#COMEMO #NIKKEI

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