国税滞納額の公表。消費増税後の注意点は?【 税務・経営の話 】
8/7に国税庁HPにて、【 平成 30 年度租税滞納状況について 】が公開されました。
♦ 新規発生滞納額、1位は消費税
■ 消費税納税の仕組み
消費税は間接税です。・・なんて書き出しから始めると、中学生の「社会科」の授業のようですが、少し説明させてください。
負担する人も納める人も同じ所得税等とは違い、「負担する人」は【消費者(お客さん)】、「納める人」は【 事業者(お店)】という関係です。
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すごく簡単な例を出します。もし、税込324,000円で仕入れたものを、税込1,080,000円で売却した場合、消費税の納税額はいくらになるでしょうか?
消費税と本体価格を分解して考えると・・
① 税抜100万円の売上(消費税80,000円)
② 税抜 30万円の仕入(消費税24,000円)
お店は、売上時こう考えます。
店主 「よし、100万円獲得したぞ!あ、あと8万円を預かったな」
お店にとって消費税は、本体のように売上や仕入ではなく、【 預かったお金(80,000円)】と【 預けたお金(24,000円)】という位置づけになります。
お店は、預かったお金と預けているお金を決算で清算します。もし上記取引だけなら、80,000円-24,000円=56,000円が、納税額となります。納税とは言え、間接税なので「負担」するのではなく、あくまで「預かったものを国に渡す役割」です。
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■ なぜ滞納が多いのか?
ここまでの説明だと「預かっているものを返すだけなのになぜ滞納が多いの?」という疑問が生じるかもしれません。
先程の店主は、
店主 「よし、100万円獲得したぞ!あ、あと8万円を預かったな」
と言いましたが、まあ、実際、日頃からこのような意識で商売をする人は少ないです。
店主「よし、108万円獲得したぞ!」
こういった意識のほうが一般的でしょう。
すると、何が起きるか。営業活動を続けていると「いくら消費税を預かっているか」分からなくなります。通帳を見ても預金残高が分かっても、預かった消費税の残高は当然分かりません。そんな中で、機械が壊れた、営業不振、借入金を返さなくては・・と資金が必要になったら?とりあえず何とか預金があるから、凌げたぞ。決算を迎える。預かった消費税を納めてください。え?お金なんてないですよ・・。こんな流れが想定されます。
先程の例は100万円レベルのお話だったので、精算する消費税が10万未満でしたが、これが1000万円レベルなら?売上1億レベルなら?
・・滞納が増えそうですよね。
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年1回納付では、危険性も高いため、年2回に分けて納付したり、納税額が大きくなれば年12回納める中間申告・納付という制度もあります。(詳細は割愛します)
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♦ 消費税10%で気を付けたいこと(事業者向け)
■ 納税額の予測
先程の例で、もし消費税10%ならどうなるか。
① 税抜100万円の売上(消費税10万円)
② 税抜 30万円の売上(消費税3万円)
10万円-3万円=7万円ですから、8%時の56,000円よりも増えます。よって、日頃から「どのくらい消費税を預かっているか」を知り、対策をしておかないと、より滞納リスクがあがります。
ちなみに消費税が8%になった時も滞納が増えました。
私は、お客様との定期的な打ち合わせ時に、現時点で仮決算に基づく「消費税の試算額」を提示しています。また、消費税納税のための積立策等も提案しています。
滞納を避けるためというよりも、経営分析や資金繰り分析のために必要なので行っていますが、私もお客様もその「予測行為」をしておくことで、安心感が得られます。
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■ 飲食店は特に注意!
そして、私が今、何度も何度も「消費税気をつけましょうね!」とアドバイスし続けているお客様がいます。「飲食業」のお客様です。
なぜか。
消費税軽減税率の導入で、一番、儲かった気がしてしまう業種
だからです。
軽減税率の説明はもう大丈夫かと思いますが、基本、飲食料品(アルコール等は除く)と新聞が8%の軽減税率対象で、外食は10%です。
先程の例に当てはめると・・
① 税抜100万円の売上(外食なので10%:10万円)
② 税抜 30万円の食材費(軽減税率8%:24,000円)
(まあ、アルコールや日用品類等、消費税10%の経費もたくさんありますが、分かりやすいように全部8%と仮定しました。)
100,000円-24,000円=76,000円
どうでしょう。10%分で預かり、8%で預けている構図なら、預かり額が今までにないくらい増えます。ただ預かりですから、決算後納付が待っています。
店主「ん~、そんなお客さんが増えた気もしないけど、今期は資金繰りが余裕だな~」
なんて、会話が来年出てきたら、危ないですね・・。「余裕」ではなく「たくさんの預かり」があるだけです。
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♦ あとがき
日経の記事より引用。
過去の引き上げの際は翌年度の消費税の新規滞納額が増えており、国税庁は計画的な納税の準備を事業者に呼び掛けている。
業績悪化や経営危機となれば、また別の大きな問題ですが、そうではなく、計画的に分析すれば、防げる部分は、それも「経営」の1つです。
消費者が思う以上に、事業者にとって2%の上昇、大きいですよね。滞納を防ぐため、というよりも、新たな経営計画、目標を実行するために、日頃の「数字」の理解も深めていくこと。ますます重要ですね!
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※ 今回は、免税制度や簡易課税制度については触れていません。事業者それぞれの状況によって、適用される制度は異なりますので、ご注意下さい。
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